2002.03.09 頂点しか見えない
 

勝ちにいった結果だった。
競技を終えた大日方邦子の表情に、失意の色は見られなかった。我々報道陣の質問に、
一つひとつ丁寧にこたえる。時折り、笑顔さえ見せながら。

「勝つ気満々、スタートでもイケイケで、すごく気持ちよく出ることができた」という
長野パラリンピック金メダリストの計算を狂わせたのは、前日までに降り積もった雪だった。
「ちょうど3旗門目のところが柔らかくて、スキーに力を入れたらずぶっといってしまった」
2旗門目から3旗門目の間の雪が柔らかく、チェアスキーが安定しない。コースを熟知した
アメリカチームは、そこを避けるように「ものすごく」インを突いていたという。

だが大日方は違った。インスペクションから決めていた自分の理想とするラインを確実に捉えた。
運悪くそのライン上に、行く手を阻むこの地方特有の雪が待っていたのである。

派手に転倒した。上半身を強打する。だが4旗門目まではまだ距離があった。
「自分では先に行くつもりだった」
気持ちは強かったものの板が取れてしまい、最後は諦めるしかなかった。

もう柔らかい雪の感触はわかった。コースも体に入っている。あとは転倒による体の具合と、
精神面である。が、それについて彼女は
「気分はもう切り替わっています。転んで打った胸も大丈夫。背中、股関節が痛いけど、
チームのトレーナーやドクターに診てもらい問題なかった。競技にも影響ないと思いますよ」と、
笑顔を浮かべながら話した。

予定どおり大会が進めば、11日にスーパー大回転、14日に大回転、16日に回転が行なわれる。
あとは作戦を練って、時を待つのみである。

ゴールすることが目的ではない。あくまで攻める姿勢を貫く大日方の視線の先には、
メダルを手にしている自分が確実に見えている。


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