2002.03.11 自分との闘い
滑降で転倒したメダル候補のふたりに、本来の滑りが戻ってきた。
11日、女子スーパー大回転。クラス2番目のスタートを切った大日方邦子(LW12/2)は
3旗門目までを慎重に通過する。
「前日の男子SG(スーパー大回転)でも3旗門目までに転倒する選手が多かった。だからそこまでは抑えよう、と」。
もともとスロースターターである。出だしでフルアタックすると自分の滑りができなくなってしまう。最初の関門は余裕をもってクリアし、そこからは持ち前の攻めの姿勢へと移行した。ゴールまで思い通りのラインを描いてゆく。
滑降では気持ちを入れ込みすぎた。
「勝ちにいく気持ちのなかでクレバーで且つ自分の滑りをしなければならない。このバランスが難しくもありアルペンの魅力」と語る。どんなに優れた技術を持っていても、抑えていかなければならないポイントがある。くわえて競技に臨むときの精神状態もパフォーマンスにおおきく影響する。あらゆる要素を加味して練った戦略がなければ勝負には勝てない。大日方はこの日の試合前、日本から持ち込んだ音楽を聴き、雑念を排除した。
試合後の笑顔は、この日の滑りが納得のいくものだったことを表していた。
「思ったよりタイムは伸びなかったけど、ゴールまで下りてくるとやっぱり気持ちいいですね」と笑った。
順位こそ7位にとどまったものの、残り2種目につながる価値ある一戦だった。
青木辰子(LW10)は完走してホッとしていた。終わってみればクラス第5位。復活の手ごたえには十分な滑りだった。
ソルトレークに入る直前にカナダで行なわれたワールドカップから完走を果たしていなかった。カナダでの大回転、回転2本、そして今大会に入っても公式練習2本、滑降本番と、ここまで計6度のチャンスにことごとく失敗した。自分のタイミングとスピードに乗る以前に転んでいた。状況を打破すべく行なったのは、オフ・ザ・ゲレンデのイメージトレーニングだったという。
「車椅子に乗りながらチェアスキーの重心移動の感覚を思い返したり、腕の角度や出し方もイメージしていました」
すべては誰の手も借りずに克服した。滑降のあと陥った深い穴から自力で這い上がった。
「SGは今までメダルが獲れなかったからどうしても欲しかったんですが、今日はとにかくゴールできて満足です」
久しぶりの笑顔がそこにあった。
ふたりについて、山川監督も「よかった」と胸を撫で下ろした。
チェアスキーのメダルコンビに、ようやくエンジンがかかってきた。
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