ジャパンパラリンピック1日目
〜クラス分けのむずかしさ〜
2月15日、ジャパン・パラリンピック(ジャパラ)スキー競技大会2002が、新潟県新井市の「ARAI マウンテン&スノーパーク」で開幕した。ソルトレークパラリンピック日本代表にとって、本番に向けた最後の国内試合となる。
初日には競技はなく、クラス判定や開会式、レセプションなどが行われた。クラス判定は、大会本部(INN at ARAI 3階)の一角で、理学療法士や医者など3人が行う。
選手と先生の許可をいただいて、クラス判定の写真を撮らせていただいた。簡単な質問だけで済むのかと思っていたが、実際には車椅子から降り、木製のバランステーブルに乗って体を曲げたり伸ばしたりというテストを繰り返している。「自己申告に頼るところが大きい」というイメージは、必ずしも当たっていないのだろうか?
そこで、クラス判定を行っていた大阪市立大学医学部の小林章郎さんに話を聞くことにした。小林さんは、日本に数少ないauthorized classifier(IPCから資格を受けたクラス判定士)の1人で、国際大会のクラス判定に長年携わっている。
クラス判定をした、小林章郎 先生 |
― IDクラスも含めて、障害のクラス分けには明確な基準が確立されていないのでしょうか?
本質的には、障害の程度を客観的に定量的に評価するのは難しいんです。ただ、だからってクラスをものすごく細かく分けたら、金メダルがたくさん出てしまって競技性が薄れてしまいます。そんなわけで、今は国際的に、できるだけクラス数を少なくしようという動きになっています。そのためにパーセンテージというシステムがあるんです。ゴルフのハンディキャップみたいなもんですわ。
ただしこの場合、自分の属しているカテゴリーに強い選手がたくさんいたり、自分の障害がたまたま軽く判定されたりしたら、不利になってしまうんですよね。
ですから、このルールが必ずしも公平というわけではありません。でも、何らかの形でルールを決めないことには競技として成立しませんので。矛盾を感じながらも、これしかないという動きになっているわけです。
― 言葉は悪いですが・・・「ごまかす」ってことはあるんでしょうか?
それはありますよ。すごくあります。だから、国際大会に出る選手には特に厳しく判定しています。大きな大会では、3人のauthorized classifierの意見を総合して判断することになっているんです。
それでも、詐称をするひともいれば、変な入れ知恵をされている人もいますからね。だからバランステーブルに乗せて体を傾けているときに、急に選手の体を押したりするんです。そこで跳ね返ってきたら、「こいつ、ごまかしてるな」とわかるでしょ。
また、クラスが疑わしい場合はほかの国からプロテスト(抗議)できるという決まりもあるんです。過去に甘い判定を受けた選手がずっと同じクラスになってしまうこともありますから。まあ、いやらしいかもしれませんけどね。でも誤った判定がまかり通ってはいけませんし。
― クラス分けで悩むことってありますか?
下肢障害の場合は、6つのテストをそれぞれ0・1・2・3の4段階評価で行います。合計が8点までがLW10、9〜15点がLW11、16〜18点がLW12になるんですけど、8点か9点かとかの「境界領域」が非常に微妙なんですよ。国際大会に出ても判定が甘いときもあれば辛いときもありますからね。
判定があいまいなときは、腹筋や背筋のつき具合を見たり、それでもわからなかったら、ゲレンデに行って滑らせることもあるんですよ。でもそうすると、努力をして得た技術によって障害が軽くみなされてしまうこともあります。技術が上がることはいいことですが、競うという観点からすれば不利になってしまうこともあるんです。
― 先生のご専門ではないと思いますが、今回、IDが参加できないということに関しては?
う〜ん、まあ、IDの場合、クラシフィケーションのしようがないんですわ。IQを計ってもいいんですけど、客観性がないし、フィジカルの障害よりもはるかにごまかしやすいですから。国際大会でも、「なんかこの人フツウみたいやなあ、でもなんか変やなあ・・・」と思う人もいますし。競技性を重んじる今のクラス分けの観点からすると、そんな客観性や再現性のないものは認められへんのじゃないかなあ。
― なるほど・・・。先生自身、この仕事をやって得たものってありますか?
最初は障害者っていうことで気ィ使ってたんですけど、今はもうそんなことはないですね。気を使ってたらはじまらへんですから。自分の世界が広がったし、もちろん、やってよかったと思いますよ。
2002年2月15日 望月浩平
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