競技2日目 シット・クラシカル短距離
〜各選手「ベストを尽くした」と語るも、メダルにはとどかず〜

現地時間3月10日、シットスキー男子5km・女子2.5km、立位クラシカル男女5kmのレースが行われた。午前9時の気温が0℃、雪は降っていない。その後気温はどんどん上昇し、雪もやわらかくなっていった。見ている方としてはありがたいが、ワックスマンたちの苦労を思うと、複雑な気分だ。この日の注目は短距離クラシカルを得意とする新田佳浩。メダルも十分期待できる。髪を茶色に染めたのは、気合のあらわれだろうか。

まず、シットスキー男女がスタートした。深沢春二はスタートから体が重そうで、スピードに乗り切れない。両肩に痛みがあり、力が出ないのだ。注射をするとドーピングにかかるかもしれないので、湿布や針で痛みを抑えたという。開幕直前にクラスがLW10からLW11に変更される(軽い障害とみなされる)緊急事態が影響したのかもしれないが、本人は「いろいろ考えすぎたけど、それを理由にするとかっこ悪いから。一生懸命やって、応援してくれたみんなに恩返しするだけです」と気合を入れなおしていた。

深沢選手は、開幕前のクラス判定で、申告していた障害の程度より軽いとみなされたため、クラスが変更になった。日本チームの抗議で再検査が行われたが、やはり結果は変わらなかったという。自分が努力して獲得した技術やバランス感覚によって、軽い障害とみなされてしまうことが実際に起こってしまったのだ(ジャパラ1日目のインタビュー記事を見ていただければわかると思います)。

短距離を得意している長田弘幸は、実力を出し切っての5位。レース後「5kmが得意だったので、チャンスを逃したような気もするけど、気持ちを切り替えて次のレースにつなげたい」と笑顔で話した。
久保田とし子はトップと1分32秒差の10位。長距離を得意としているということで、今後に期待をしよう。コースの厳しさにも慣れてきたそうだ。
ホールディングゾーン。スキーヤーがガイドのストックを握って坂を下る

ブラインド男女は、世界との差を見せつけられる結果となった。小林稔は5位だったが、トップとの差は1分以上。それに対し、1位から3位までの差は13秒だった。高橋正充は8位に終わったが、前の選手と2分50秒の差が開いた。今まで20分を切ったことがなかった小林深雪にいたっては、17分台にまで自己ベストを大きく縮めたが、順位は7位。それでも、各選手ともレース後は「実力は出しきった。悔いはない」と晴れ晴れした表情だった。

立位男子で注目の新田佳浩は、スタートからスピードに乗っていった。公式練習のときから僕たちに「ホントは早くクラシカルやりたいんだよね」とこっそりもらしていたほど、クラシカルが好きな選手だ。実力もトップクラスで、日本では健常者と一緒にインターハイやインカレにも出場している。ワールドカップでも銅メダルを取った。期待の大きさからか、コース脇に立つコーチの指示も一段と大声になる。

レース中盤から後半にかけてもスピードは落ちない。3位だ!「新田こげ!もっと!」ゴール前最後の直線、荒井監督の声がスタンドに響いた。歯を食いしばってゴール。やった!銅メダルだ。うれしさのあまり、仰向けになって「アーッ!」と雄叫びをあげる新田選手に、他の選手がかけよって、抱き合っていた。

興奮しながらインタビュースペースで待っていると、その前で新田選手がしゃがみこんだ。しばらく動かないでいる。どうしたんだろう?と思うと、「新田4位だって。1.5秒差。トップとは4秒差。」という記者の声が聞こえた。1.5秒。いったいどれだけの差なんだろう?ほんの一押し、数メートルのちがいなのに・・・。なんて声をかけていいのかわからなかった。


立ち上がった新田選手は、意外にもさっぱりとした表情だった。「全力を出せたので納得しているけど、負けたという現実は悔しいというか・・・。4秒という差がこの1年を物語っている。一生懸命やってきたつもりだけど、4秒を縮める努力ができていなかった。勝ちたいという闘志の差かもしれない。実力的には変わりがないので、次につなげたい」と満足感と悔しさが入り混じった表情で語った。

レース後、表彰式へ向かった。


目の前に、金メダルがある。表彰台に向かう前のそれにカメラを向けると、意外にも簡単に撮影をさせてくれた。手を伸ばせば、すぐにとどきそうな距離にある。
しばらくすると、僕たちのすぐ横を金メダリストが通り過ぎて行った。メディアパスを首から下げている僕たちは、観客よりも近く、ほんの10メートルの距離で、表彰式を見ることができる。そこに日本人が立っている光景も、テレビの中でなら、幾度となく目にしてきた。それが、いま目の前で起こっている。

メダルを取る、ということ。口にするのは簡単だ。
日本国内では敵なしの代表選手を見てきた僕たちは、その言葉を軽々しく口にしすぎていなかったか。
障害者クロカンフェスタin旭川の壮行会で、選手たちは口々に「メダルを取りたい」と話していた。その言葉を聞いた僕たちは、それが簡単に実現されるものだと錯覚していた。しかし、今日のレースで、それは間違いだったと痛感した。

「練習の成果を出してくれればいい」「怪我をしなければいい」レースを見守る家族はそれで十分だと言う。しかし、多くの観客や視聴者は、自国の選手が表彰式に上がることを期待するだろう。上位3人に入るか入らないかで、がらりと扱いが変わる。レース中はあれほど多かった日本のマスコミが、表彰式には数えるほどしかいなかった。ここに日本人が立っていたら、こんなことにはならないだろう。
たった4秒、そこに世界との壁がある。かと思えば、自己ベストを大きく更新しても上位にくい込めない選手もいる。レースを終えた代表選手たちは、全力を出し切った満足感と、全力を出し切ってもメダルには届かない悔しさとが入り混じった顔をしていた。僕たちもまた、同じような気持ちだった。

3月10日ショートディスタンス結果

男子シットスキーLW11

1位・RUEPP Roland(LW11)/ロシア・・・・・・・・15:42.3
2位・ANTHOFER Oliver(LW11)/スロバキア・・・・15:50.5
3位・MARGUERETTAZ Alain(LW11)/ポーランド・・・16:00.3
12位・深沢春二(LW11)/日本・・・・・・・・・・・21:08.6

男子シットスキーLW10
1位・SHILOV Sergey(LW10)/イタリア・・・・・・・15:18.3
2位・TERENTIEV Michal(LW10)/オーストリア・・・・15:41.5
3位・KLEISER Klaus(LW10)/フランス・・・・・・・16:56.2
5位・長田弘幸(LW10)/日本・・・・・・・・・・・・17:16.3

女子シットスキー

1位・MYUKLEBUST Ragnhild(LW12)/ノルウェー・・・・9:01.2
2位・TRYFONOVA Svitlana(LW11)/ウクライナ・・・・9:11.4
3位・YURKOVSKA Olena(LW12)/ウクライナ・・・・・・9:38.2
10位・久保田とし子(LW11)/日本・・・・・・・・・・10:33.2

男子B1

1位・FLO Helge(B1)G:SNEVE Paal/ノルウェー・・・・・・・・・・12:58.3
2位・MUNTS Oleh(B1)G:STOROZHOK Volodymyr/ウクライナ・・・・・13:08.4
3位・KOUPTCHINSKI Valeri(B1)G:DOUBOV Viatcheslav/ロシア・・・13:08.4
5位・小林稔(B1)G:大平紀夫/日本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14:04.5
8位・高橋正充(B1)G:小泉洋美/日本・・・・・・・・・・・・・・・・・・17:40.0

男子LW5/7,6/8,9

1位・OELSNER Thomas(LW6/8)/ドイツ・・・・・12:49.0
2位・HUSTVEIT Andreas(LW6/8)/ノルウェー・・12:51.0
3位・HECKER Axel(LW5/7)/ドイツ・・・・・・・12:51.6
4位・新田佳浩(LW6/8)/日本・・・・・・・・・・12:53.1
14位・伝田寛(LW6/8)/日本・・・・・・・・・・14:00.2

女子B2,3

1位・SKORABAHATAYA Yadviha(B3)G:HAURUKOVICH Vasili/べラルーシ・・・15:51.3
2位・ARGILLANDER Jaana(B3)G:KAUKONEN Arto/フィンランド・・・・・・・15:55.9
3位・GRAVVOOLD Tone(B2)G:SOERENSEN Kristian/ノルウェー・・・・・・・16:14.8
7位・小林深雪(B2)G:小林卓司/日本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17:58.2