IPC教育委員長ニック・フラー氏、日本発のパラリンピック教育に期待!

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I'm POSSIBLE(国際版)ディレクター、IPC教育委員会委員長のニック・フラー氏(左)と日本語版プロジェクト・リーダーのマセソン美季氏。日本財団ビル(東京都港区)

I’m POSSIBLE(国際版)ディレクター、IPC教育委員会委員長のニック・フラー氏(左)と日本語版プロジェクト・リーダーのマセソン美季氏。日本財団ビル(東京都港区)

IPC(国際パラリンピック委員会)教育委員長で2020東京に向けたパラリンピック教材「I’m POSSIBLE(アイム ポッシブル)国際版」の開発に携わるニック・フラー氏が来日、4月27日(木)パラリンピック教育の可能性について話すシンポジウムが行われた。会場の日本財団ビル(東京都港区)に2020東京関係者、パラリンピアン、行政、教育機関などから関心のある人々、メディアが集まった。


「パラリンピック教材」とは

オリンピックとパラリンピックの統合は、夏は北京大会(2008年・中国)から、冬はバンクーバー大会(2010年・カナダ)から始まった。それまで開催国で行われてきた「オリンピック・パラリンピック教育のパラリンピックの内容が正確でない」としてIPC独自の教材開発がバンクーバー大会で始まった。以後、開催国で引き継がれ、ロンドン大会(2012年・イギリス)で完成した。

昨年6月、パラリンピックの国際的発展を担うアギトス財団と日本財団パラリンピックサポートセンターが業務提携、アジア地域への普及を視野に国際版を作ろうというパラリンピック史上初の試みとなった。開発は両者とJPC(日本パラリンピック委員会)の三者で担っている。
いま、2020東京に向けて「I’m POSSIBLE」が国際版・日本版ともに開発され、世界中でパラリンピックがもつ意義や価値に学び、多くの人が社会を変革するための新しいツールとしてバージョンアップ。日本から発信されようとしている。

ニック・フラー氏とパラリンピック教育

パラリンピック教材「I'm POSSIBLE 国際版」ディレクター、IPC教育委員会ニック・フラー委員長

パラリンピック教材「I'm POSSIBLE 国際版」ディレクター、IPC教育委員会ニック・フラー委員長

「I’m POSSIBLE 国際版」のディレクションに携わるニック・フラー氏は、ロンドンオリンピック・パラリンピック教育プログラム(Get Set=ゲットセット)の開発責任者を務め、実施した学校から「子供たちにポジティブな影響をもたらした」という評価を得ている。

「パラリンピックのミッションは医療・リハビリから発展していますが、現在は、人々の行動や社会を変える変換装置としての役割が重要となっている。そのなかで若い人への教育現場での活用は極めて重要です。
2012年のロンドンでは、私自身が変わりました。就任当時(2007年)パラについて私の知識は限られていましたが、セバスチャン・コー会長が、ロンドンがいかにスポーツの力を活かして世界の若い人にインスピレーションを与えられるか、と言っていた。私は若くはなかったが、教育者として魅了され、ロンドンオリンピック・パラリンピック教育プラン(Get Set=ゲットセット)の開発に従事した」と、パラリンピック教育との出会いについて話した。

戦略的な「リバース・エデュケーション(逆の教育)」とレガシーの形成

ロンドン・パラリンピックは戦略的な「リバース・エデュケーション(=逆の教育)」の成果があったとされている。通常の教育は大人から子供へと行われるが、IPCフィリップ・クレーヴァン会長は「逆」を行うことを提唱してきた。
Get Setを通じて学校で子供が学んだことを家庭で話すことにより、多くの親子づれがオリンピックの後に行われたパラリンピックの会場を訪れた。初のオリンピック・パラリンピック両大会でのチケット完売にも貢献した。

イギリスでのGet Setによる教育はイギリス全体の約8割の学校が参加し、現在も使用されている。
東京への新たなパラリンピック教材「I’m POSSIBLE」も、パラリンピックを成功に導く要、2020年の東京大会後のレガシーとして有望視されている。

ニック・フラー氏

ニック・フラー氏

シンポジウムのあと、フラー氏は次のように話していた。
「イギリスでも、障害のある人は気の毒だという考えはあったが、Get Setで学習したことが人々を変えた。人間の持つ特別な力をパラリンピックが示し、多くの若い人が多様性を理解した」

日本版について

「I’m POSSIBLE 国際版(英語)」の内容をもとに小学校高学年を対象としたシリーズ全15単元が2020年までに準備される。このほど4単元が完成し、4月20日、文科省から全国の小学校と自治体の教育委員会に発送された。東京2020教育プログラムのサイトからもダウンロード可能となる予定で広い活用を促す。

日本版の紹介をするプロジェクトリーダー・マセソン美季氏

日本版の紹介をするプロジェクトリーダー・マセソン美季氏

日本版プロジェクトリーダーのマセソン美季氏(1998長野パラリンピック金メダリスト)は、
日本版は、スポーツに知識のない先生でも指導提案ツールに豆知識が盛り込まれ「まるでパラリンピックに詳しい博士のように教えることができる」「公式の用具を買わなくても身近なもので代用する方法が示されている」ぜひすぐ使ってほしい、と紹介。
また、来月に改定される学習指導要綱に「パラリンピック教育」が記載される。学校での活用がしやすくなり、国際版と同時に日本各地に正しいパラリンピックが広まることが期待されている。

<参考>
・We’re The Superhumans | Rio Paralympics 2016 Trailer(チャンネル4)
https://youtu.be/IocLkk3aYlk
(教材には含まれないが、シンポジウムでフラー氏が紹介した、チャンネル4が昨年リオパラリンピック前に公開した「YES I CAN」と呼ばれる映像。パラリンピック公式映像を使用し競技の醍醐味、障害のあるアスリートに触れることで全ての人間の可能性に対してクリエイティブになること、パラリンピックへの「ワクワク感」を子供たちにもたらすことを連想させるのに説得力ある映像となっている)

・東京2020教育プログラム(パラリンピック教材ダウンロード予定)
https://tokyo2020.jp/jp/get-involved/education/

・パラリンピックの価値や価値・パラリンピックとは(JPCホームページより)
http://www.jsad.or.jp/paralympic/what/index.html

・記事:「I’m POSSIBLE」パラリンピックの魅力を伝える、初の公開授業がスタート!(4月25日)
http://www.paraphoto.org/?p=13154