ジャパンパラ水泳, 水泳, 観戦レポート — 2017年9月3日 at 3:55 PM

世界を相手に、トビウオパラジャパンが好レース

by
鈴木孝幸と競い合うスペインの王者ミゲル・ルカ。50メートル平泳ぎ(SB3)でのライバルどうし 写真・山下元気

鈴木孝幸と競い合うスペインの王者ミゲル・ルカ。50メートル平泳ぎ(SB3)でのライバルどうし 写真・山下元気

9月2日、東京辰巳国際水泳場(東京都江東区)で「ワールドパラ水泳公認2017ジャパンパラ水泳競技大会」が開幕した。27回目となる今大会に、初めて、強豪国ニュージーランドとスペインから4名のメダリストが招かれ出場。約1ヶ月後の9月30日にメキシコで開幕する「ワールドパラ水泳世界選手権」の前哨戦として、世界トップレベルのレースを見られる貴重な機会となった。

男子150メートル個人メドレー(SM4)、50メートル平泳ぎ(SB3)にはスペインからミゲル・ルケ(40歳・関節拘縮症)が出場。長年のライバルである鈴木孝幸(30歳・先天性四肢欠損)とのレースを競った。
150メートル個人メドレーではミゲルが予選で泳法違反により失格。勝負は両者が得意とする50メートル平泳ぎへ持ち越した。レースは予選、決勝ともにミゲルが勝利。決勝タイムはミゲルが49秒97、鈴木が50秒74だった。

レース後にインタビューに応える鈴木孝幸

レース後にインタビューに応える鈴木孝幸 写真・佐々木延江

ミゲルに届かなかった鈴木は「毎回良いタイムが出るわけではない。ただ、今回のタイムをしっかり分析して世界選手権に臨みたい」と、冷静に分析した。鈴木は今大会を世界選手権に向けた過程と捉え、あくまで照準は世界選手権としていた。はじめてメダルを逃し4位となった昨年9月のリオパラリンピックから1年、体幹やメンタルを鍛えるなど陸上でのトレーニング方法を加えた。
「リオでは4位だったので、ああいった思いは二度と経験しないようなレース展開をしたい」と世界選手権への強い思いを語った。メキシコでの世界選手権は、前回グラスゴーでも金・銀を分けたミゲルへの雪辱を晴らす目標の舞台である。

50メートル平泳ぎ(SB3)の表彰式でのスペインのミゲル・ルカ 写真・佐々木延江

50メートル平泳ぎ(SB3)の表彰式でのスペインのミゲル・ルカ 写真・佐々木延江

一方のミゲルは「40歳という年齢だが、いま競技を心から楽しめている。世界選手権は6度目の参加になる。自己ベストを更新できるよう頑張りたい」と意気込む。そして、今回日本でレースを競った鈴木に対しては「素晴らしいライバル。彼は長いあいだ高いレベルを維持していて、いつも良い試合ができる。人間としても素晴らしい選手」と長年の宿敵を讃えた。

日本勢も負けていない。女子400メートル自由形(S7)で日本新記録を更新したのは、16歳の小池さくら(下肢障害)。2017年に頭角をあらわした小池は、今大会で自己ベストを5秒も縮める5分40秒92を記録。大会前にスペインの強化合宿でより速く、力強く泳げるようトレーニングを積んできた。課題とする肺活量の強化は必要としつつも、今日は呼吸が苦しくなかったと安堵の表情を浮かべていた。

400メートル自由形で日本新記録を更新した小池さくら 写真・山下元気

400メートル自由形で日本新記録を更新した小池さくら 写真・山下元気

400メートル自由形(S7)で日本記録を更新した小池さくら 写真・佐々木延江

400メートル自由形(S7)で日本記録を更新した小池さくら 写真・佐々木延江

また、海外選手とのレース経験も追い風となったようだ。今日は隣のレーンがリオパラリンピック銅メダリストのレベッカ・ダーバー(24歳・ニュージーランド/先天性下肢障害)であり、「レベッカ選手がいてくれたので速いペースを維持できた」と自身の泳ぎを振り返る。

「小池のペースに合わせていい泳ぎができた」と話すリオパラリンピック銅メダリストのレベッカ・ダーバー 写真・佐々木延江

「小池のペースに合わせていい泳ぎができた」と話すリオパラリンピック銅メダリストのレベッカ・ダーバー 写真・佐々木延江

一方、日本新記録を更新した小池選手についてレベッカは、「彼女に合わせて泳ぐ事ができた。ニュージーランドにいるときは同じクラスの選手があまりいないので、本当に良い機会になった」と、振り返り、海外選手とのレースは互いにとって貴重な経験となったようだ。

今大会では、ニュージーランド最強のスイマーも来日した。リオパラリンピックで5つのメダルを獲得しているソフィー・パスコー。女子200m個人メドレーなど4種目で世界記録を保持し、母国では国宝と称される選手だ。今大会では、100メートルと400メートルの自由形(S10)、100メートルバタフライ、100メートル背泳ぎ(S10)にエントリーし、初日の今日は50メートル自由形と400メートル自由形に出場した。

400メートル自由形を泳ぐ強豪国ニュージーランドから来日したソフィー・パスコー 写真・山下元気

400メートル自由形を泳ぐ強豪国ニュージーランドから来日したソフィー・パスコー 写真・山下元気

「今日のタイムは自己ベストに近い記録だったので、まもなく開催の世界大会に向け良い足掛かりになった」と、自身の泳ぎを振り返る。また、日本人選手の印象を「素晴らしい選手が揃っている。特に若い選手が多く刺激になる。世界大会には日本からも数多くの選手がやってくるので今大会に出場できて良かった」と語り、日本での大会出場に収穫があった様子だ。
今大会後にはアメリカで21日間の高地トレーニングに入るソフィー。メキシコ入り前最後の大会で安定の強さを見せた。

明日大会2日目には、女子100メートルバタフライ(S10)で同クラスの池愛里(左足首まひ)がソフィーに挑む。池は、大会1日目・女子200メートル個人メドレー(S10)で日本新記録となる2分37秒8を記録。この春日体大に進学し、本人いわく「これまでの倍以上」のトレーニングで水泳に打ち込む日々を過ごしてきた。「ここ最近は自己ベストを出し続けている。練習が良い結果につながっている」と、自信の表情をみせた。

視覚障害は、クラスが全盲クラス(S11)に変わった富田宇宙が、得意の400メートル自由形でアジア新記録を樹立。「クラスが変わった(障害が重くなった)ことで、世界選手権への出場など可能性が出てきたことは、機会として取り組みたい。(同じクラスになった)木村選手とはずっと一緒に練習しているのでお互い東京でメダルをとりたい」と話した。

今やトビウオパラジャパンの屋台骨をささえる知的障害(S14)は、リオ銅メダリストの中島啓智が50メートル自由形で日本新記録更新、東海林大が100メートル平泳ぎで大会記録更新、200メートル個人メドレーでも優勝し安定した強さをみせた。

200メート個人メドレー(S14)の表彰式。1位・東海林大、2位・中島啓智、3位・津川拓也 写真・佐々木延江

200メート個人メドレー(S14)の表彰式。1位・東海林大、2位・中島啓智、3位・津川拓也 写真・佐々木延江

また、世界選手権に向け、はじめて知的障害女子3人が加わり、井上舞美、北野安美紗が200メートル個人メドレーで日本記録を更新する活躍をみせてくれた。

大会は明日3日まで開催。世界最高峰の泳ぎに挑む日本人選手の活躍に注目だ。

(校正・佐々木延江)