限界は自分が決める ~車いすバスケ女子日本代表・土田真由美~

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「国際大会を生で観てもらえる機会はなかなかない。その分、恥ずかしい試合はできないというプレッシャーも感じています」
車いすバスケットボール・女子日本代表の土田真由美(シグマクシス/4.0)。2020東京パラリンピックへの思いを、まっすぐな目で話した。
日本は、北京以来12年ぶりのパラリンピック出場を控えており、土田自身は初めての挑戦となる。
競技への思いとは、そして彼女を突き動かす原動力とはどのようなものなのか。7月中旬、都内でインタビューした。

車いすバスケットボール・女子日本代表の土田真由子(シグマクシス/4.0)(写真・内田和稔)

車いすバスケットボール・女子日本代表の土田真由美(シグマクシス/4.0)(写真・内田和稔)

勝つ喜びと、負ける悔しさ。どちらにも学ぶことがある

静まり返る会場。狙いを定めた瞳。弧を描くボールがゴールネットに吸い込まれると、歓声が沸き起こる。
「ファウルゲームを仕掛けられて得たフリースローをもらえるのは、その瞬間に1人だけじゃないですか。練習してきたことが出せて嬉しかったです」
6月に東京・調布市の武蔵野の森総合スポーツプラザで行われた国際親善大会「日本生命 WOMEN’S CHALLENGE MATCH」でオーストラリア相手に全勝を飾った日本。土田は大事な場面でフリースローをしっかりと決め、勝利に貢献していた。

「日本生命 WOMEN'S CHALLENGE MATCH」オーストラリア戦での土田真由美

「日本生命 WOMEN’S CHALLENGE MATCH」オーストラリア戦、ボールをキープする土田真由美(写真・水口之孝)

車いすバスケットボールには選手に持ち点があり、1.0(1番重い障害)から4.5(1番軽い障害)まで8段階のクラス分けがされている。土田は4.0で、正確なシュートが持ち味。試合開始前にもルーティンとしてシュートを打って、気持ちを落ち着かせる。コーチ陣からは「彼女は間違いなく日本を引っ張っていく選手。これから高い要求をしていく」と期待を寄せられる存在だ。

勝つ喜びは、モチベーションを上げる。
「ここ最近の大会は負けてばかりで、悔しさから学ぶことが多いと思っていたのですが、勝つってすごく嬉しいことなんだなということを実感しました」

しかしその後、7月初旬にイギリスで行われた親善大会「コンチネンタルクラッシュ2018」で、強豪のイギリス・カナダ・オランダ・ドイツと対戦。ここでは全敗を喫した。が、「全く歯が立たないわけではなかった」と前向きな感想を話してくれた。勝敗それぞれから成長を得る姿勢が身についていた。

女子日本代表を取り巻く現状の中で

女子日本代表は、シドニーで銅メダルを獲得したものの、北京以来パラリンピックから遠ざかっている。2010広州でのアジア大会では男子と共に優勝を経験したが、前回仁川では惜しくも中国に敗れた。(土田は2014年仁川アジアパラからアジア大会に出場)
その理由の1つは、国内に女子チームは8つしかなく、実践の試合が組みにくいことだ。
さらに、プレーでの当たりの弱さも要因だと土田は言う。
「海外の選手は体格が大きくて当たりが強い。4年前のアジアパラ競技大会でも決勝で中国に敗れて、このままじゃだめだと。普段の練習から相手の当たりの強さを経験できるにはどうしたらいいのか考えていたんです」
そこで土田は去年から国内の男子チームに入り、9月からは単身でのオランダ留学もスタートした。日本代表の合宿や大会の時には帰国するため、今は行ったり来たりの生活を送っている。

競技力の向上は、社会での認知度の向上につながる。
「6月の大会も、広報の方の宣伝やボランティアのサポートがあって、とても嬉しかった。負け続けているとメディアなどに取り上げられる機会もどうしても少なくなりますし、チームが勝つためにも私自身が成長しなければならないと思っています」

(写真・内田和稔)

「日本生命 WOMEN’S CHALLENGE MATCH」オーストラリア戦、中空を見つめる土田真由美(写真・水口之孝)

夢を叶えるには、視野を広げること

土田の人生には、夢を諦めた瞬間が2度あった。
1度目が、トレーナーになる夢。そのために進学した体育大学の在学中に、突然腰痛に襲われた。医師からは「股関節に障害がある。徐々に歩けなくなるだろう」と、進行性の病気であることが告げられた。
2度目が、アパレル関係の仕事に就く夢。アパレル販売員のアルバイトにやりがいを見出し、新たな目標を見つけた。しかし、痛みは足にも広がり、長時間立つことも難しくなった。体の痛みは、土田の夢を次々と奪っていった。
「自分の夢をつぎつぎと諦めないといけなくなって、やりたいことが何もできないのかなって当時は思いました」

そんな時に出会ったのが、車いすバスケだった。
「“足が悪くなってできないこと”が増えたんですが、“足が悪くてもできること”を見つけたので、挫折せずにまた頑張ろうと思えました」
第3の夢を見つけたのだ。

土田にとって、車いすバスケは“生きがい”だ。チームメイトや周囲のサポートに支えられ、毎日がすごく幸せだという。
「世の中にはいろんな物事があって、自分の今興味のあるものってその一握りじゃないですか。“興味がない”と言っても、やってみて興味がないのか、やらないで興味がないと思っているのかでまた違うので、一度視野を広げてみると、新たな目標が見つけられるんじゃないかなと思います」

“いきがい”である車いすバスケの魅力を語る土田真由美

“生きがい”である車いすバスケの魅力を語る土田真由美(写真・内田和稔)

座右の銘は、「限界は自分が決める」

「開催国として出場できる東京パラリンピックは、競技を多くの人に見てもらえるチャンス。必ず結果を残したい」と話す土田。股関節の状態は今も少しずつ進行しており、1~2年前までは出来ていたプレー中も足の踏ん張りがしづらくなっているという。今と同じようなパフォーマンスが2年後にできる保証もない。
それでも、「できないと思ったらできないけれど、できると思ったらできる、と思っています」と前を向く。
「限界は自分が決める」―――自分を信じれば、成長は続けられる。2020年の舞台に向けて、土田は今日もまたトレーニングに励む。

「限界は自分で決める」、という土田真由子は2020年に向けてトレーニングに励む。

「限界は自分で決める」、という土田真由美は2020年に向けて今日もトレーニングに励む。(写真・内田和稔)

(編集:望月芳子、金子修平)