パラリンピック開催まで500日。ブラインドサッカーの国際大会が教えてくれること

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4月13日で東京2020パラリンピック競技大会開催まであと500日となる。ポストイベント期であるこの時期は、国内各地で国際大会が開催され、いよいよパラリンピック本番へ向けた前哨戦の様相を呈してきた。パラスポーツの中でも人気競技のひとつ、ブラインドサッカーも重要な局面にある。

昨年11月にアルゼンチン代表と対戦した主将・川村怜。その強さや人生を掛けて取り組む覚悟を感じ、感銘を受けたという。 (写真・内田和稔)

昨年11月にアルゼンチン代表と対戦した主将・川村怜。その強さや人生を掛けて取り組む覚悟を感じ、感銘を受けたという。 (写真・内田和稔)

初のメダル獲得へ期待

メディア露出や国民的スポーツのサッカーという親しみやすさから、ここ数年着実に観客数を伸ばしてきたブラインドサッカー。実はまだパラリンピックへの出場は果たしていない。2000年のアテネ大会でパラリンピック正式競技になって以降、アジア枠の1を巡って熾烈な戦いを繰り広げてきた。2012年ロンドン大会からは2枠に増えてチャンスが増えたものの、強豪のイランと中国の壁に阻まれ、ロンドン、リオと出場機会を逃してきた。2020年の東京大会では開催国枠で事実上の出場が決定しているため、初出場で初のメダル獲得が期待されている。

3月19日〜24日には、東京・天王洲公園でIBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2019が行われ、5日間でのべ5000人を超える観客が訪れた。アルゼンチン、スペイン、トルコ、日本、コロンビア、イングランド、ロシア、タイの参加8ヶ国中、日本は昨年の5位から順位を上げ4位で終了。グループリーグを首位で突破し表彰台入りが期待されたが、メダル獲得はならなかった。優勝は2年連続で頂点を制したアルゼンチン。準優勝はイングランド、3位はスペインだった。

最終日は昨年を上回る1104人の観客が来場。肌寒さが残る春空の下、熱戦を見守った。 筆者撮影(丸山裕理)

最終日は昨年を上回る1104人の観客が来場。肌寒さが残る春空の下、熱戦を見守った。 筆者撮影

国際大会で日本代表が得た学び

国際大会はさまざまなヒントを与えてくれる良いチャンスだ。たとえば、前回優勝国で世界ランキング2位のアルゼンチンは、エース15番のマキシミリアーノ・エスピニージョがより俊敏な身体を手に入れるため、7キロ減で大会に出場。試合後には「体重を減らしたことで身体が動きやすく、キレのあるプレーができたと思う」とした上で、「当たり負けしないよう、体脂肪はなるべく落として筋肉は維持するなどバランスを大事にしたい」と語った。エースの絶妙なウェイト管理がキレとスピードを生み、勝利をたぐり寄せた。

サッカーをする弟の子供が緑のヘアにしているのを見て、げん担ぎのため真似したというアルゼンチンのマキシミリアーノ・エスピニージョ。今大会では得点王・MVPに輝いた (写真・内田和稔)

サッカーをする弟の子供が緑のヘアにしているのを見て、げん担ぎのため真似したというアルゼンチンのマキシミリアーノ・エスピニージョ。今大会では得点王・MVPに輝いた (写真・内田和稔)

キレやスピードに加え、日本代表にとっても学べる点は、アルゼンチンが持つチャンスメイクの力。マキシミリアーノは決勝で戦ったイングランドの堅い守備であるダニエル・イングリッシュについて、「すごく強い選手だが、こちらも賢い動きをしながら点を取れるようチャンスメイクをした」と言及。

攻守の切り替えの速さについては、日本代表GKの佐藤大介もコメントを残している。「アルゼンチンは前からプレスして、すぐにボール奪い返す。イングリッシュの得意の形である中央突破を抑えに行って、イングランドにやりたいサッカーをさせない。ここはアルゼンチンの強さ」と分析。昨年の同大会でも、イングランドのドリブル突破に苦戦していた日本代表。「去年のこともあって、田中(章仁)もカウンターを警戒して守備の方に気持ちがいってしまった」と悔しさを滲ませた。前への意識とチャンスメイクの力が今後の鍵になるのかもしれない。

イングランド守備の要、ダニエル・イングリッシュ。今大会では6得点を挙げ、得点王にも輝いた (写真・内田和稔)

イングランド守備の要、ダニエル・イングリッシュ。今大会では6得点を挙げ、得点王にも輝いた (写真・内田和稔)

観客とともに楽しむ工夫

テスト大会から学べるのは、選手だけではない。ブラインドサッカーの大会運営は、いつも観客を楽しませる工夫が随所に見られる。客席には、昨年のチャレンジカップから導入された「透明フェンスシート」が登場。ブラインドサッカーの特徴である壁際の攻防が、透明のフェンスの真裏から大迫力で楽しめるシートだ。観戦した男性は、「すごい見晴らしですよね。ここからの位置ではなかなか試合を見られないので興奮します」と声を弾ませた。

また初の試みとして、4名1セットのテーブルボックス席を設置。ドリンク、ケータリングカーのチケット付きで、ピッチ全体が見渡せる席から飲食を楽しみながら観戦ができるなど、多様な楽しみ方ができるようになった。

2018年から導入の「透明フェンスシート」。選手たちの息遣いまで聞こえてきそう。筆者撮影(丸山裕理)

2018年から導入の「透明フェンスシート」。選手たちの息遣いまで聞こえてきそう。 筆者撮影

「ありがとう、ニッポン」

海外選手の嬉しい反応もあった。表彰式の後、アルゼンチンチームは「アリガトウ、アリガトウ!」と即興でありがとうダンスを披露。ピッチを舞う選手たちの姿に、客席からは思わず笑いがこぼれた。「あれは自然に生まれたんだ。会場からホテルにいたるまで、いつも日本の皆さんからは愛情が伝わって、とても感謝している」とマキシミリアーノが明かした。大会運営の工夫も国際大会の重要な収穫であると教えてくれる。

次は日本一決定戦!

今後は6月から7月にかけ、日本一を決定する「第18回アクサブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」が開催予定。予選は6月1日と2日に東京で、8日と9日には初開催となる福島でそれぞれ行われ、7月7日に東京調布市のアミノバイタルフィールドでFINALラウンドが開かれる。大会日程をこれまでの3日間から5日間に拡大し、全国から集結するチームが熱い戦いを繰り広げる。ブラインドサッカーの迫力や会場の熱を真近で感じ、その魅力に触れてほしい。

(校正/佐々木延江、田中綾子)