取材者の視点, 馬術 — 2019年10月22日 at 2:47 PM

パラ馬術、CPEDI★★★ GOTEMBA 2019 安定のベテラン・鎮守、宮路、成長著しい若手・吉越、稲葉

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グレードⅢ、チームテスト表彰式 左は1・2位の稲葉 将、右は3位の常石勝義 写真:望月芳子

10月17~19日、御殿場市馬術・スポーツセンター(静岡県)で、「第65回東京馬術大会CDI★★★ GOTEMBA 2019 / CPEDI★★★ GOTEMBA 2019」が開催された。

パラ馬術には障害物を跳び越す「障害馬術」などの種目はなく、種目は人馬一体となって演技の美しさや正確性を競う「馬場馬術」のみ。
障害の程度によって、もっとも障害が重いグレードⅠからグレードⅤに分かれており、パラリンピックでは各グレードごとに規定種目のチームテスト(団体戦)、同じくインディビジュアルテスト(個人戦)、個人戦の成績上位の人馬のみ進出できるフリースタイルテスト(自由演技。音楽に合わせて、規定の演技項目・時間を各選手がオリジナルにアレンジした経路を踏む)が実施される。

過去のパラリンピックでは、日本代表は1人馬だけだった。しかし、東京パラリンピックでは開催国のため、パラ代表選考基準を満たした4人馬が出場できる。つまり、国別団体戦に初めて参加できることになった。

東京パラ代表の選考対象となるには、パラ馬術の国際大会、CPEDI★★★(3★)以上の大会で少なくとも1回、62%以上の得点を出すことなどが必要。
現在、グレードⅠの鎮守美奈(明石乗馬協会)、グレードⅡの宮路満英(リファイン・エクイン・アカデミー)・吉越奏詞(四街道グリーンヒル乗馬クラブ)、グレードⅢの稲葉 将(静岡乗馬クラブ)、グレードⅣの高嶋活士(ドレッサージュ ステーブル テルイ)の5人がクリアしている。
ただし、各人馬ごとに選考するので、現在62%とれている馬とは違う馬で出場したい場合、その馬で62%以上取得しなければならない。

CPEDI3★である今大会も、東京パラリンピック代表の選考対象となる重要な試合で、16人馬が出場。
アテネパラリンピック(2004年)出場の鎮守美奈&ジアーナがチームテスト58.845%、インディビジュアルテスト62.976%、リオパラリンピック(2016年)出場の宮路満英&オロバスがチームテスト64.646%、インディビジュアルテスト61.177%、とベテラン2人が好成績を収めた。

その一方で、吉越奏詞&バイロン18がチームテスト62.828%、インディビジュアルテスト64.608%、稲葉 将&ピエノがチームテスト65.343%、インディビジュアルテスト64.559%、同じく稲葉&カサノバ(2馬で出場)がチームテスト65.294%、インディビジュアルテスト58.873%、と若手2人が高得点を挙げ、順調な成長ぶりを示した。

グレードⅣ、チームテスト表彰式 右は1位の大塚宗毅、左は2位の高嶋活士 写真:望月芳子

今年7月に購入した自馬カサノバを初めて大会に出場させた稲葉は、
「来年の東京パラに向けて勝負をかけたいと思っている馬ですが、インディビジュアルテストの結果があまりよくなくて残念でした。一緒に試合に来たことがなかったので、僕も練習の時より力が入ってしまいました。本来はこちらの指示に沿ってきちんと動ける馬なので、自分の力をコントロールし、これからもっと信頼関係を築いていかなければと思います」
と大会を振り返り、今後の課題を語った。

今のところピエノの方が高成績だが、「7月に購入したカサノバの方が10歳若く、高い能力を引き出していきたい」と稲葉 将 写真:望月芳子

17日のチームテストでグレードⅡの3人馬中2位、18日のインディビジュアルテストで1位だった吉越奏詞は、
「チームテストの時は、パフォーマンスを高めようとしすぎて少し失敗してしまいました。2日目は馬と人間とのコンビネーションをしっかり保てたので、まあまあいい演技ができたと思います」
と語った。
今回一緒に出場したバイロン18は、健常者にとってもトップレベルの馬だったため、70%取得を目標にしていたという。
オランダで購入した自馬エクセレントは、日本に連れて来たばかりで慣れや調整が必要なので、今回は出場させなかった。バイロン18以上にポテンシャルが高く、来年3月開催予定のCPEDI3★ GOTEMBAへの出場を目指している。

馬と上手にコミュニケーションをとるために、バランスボールを使ったフィジカルトレーニングなどを行っている吉越奏詞 写真:望月芳子

もう1人の若手、高嶋活士&ケネディは、昨年10月のCPEDI3★でインディビジュアルテスト66.259%という高成績を出していたが、最近やや不調だ。今回もチームテストが61.125%、インディビジュアルテストが59.431%だった。
「今回60%もいけないような成績では、ちょっとひどいな、と。もっとよくしようと思って色々やった結果が、よくない方向にいったのかな、という感じです。一番の原因は、僕の右手が揺れてしまうこと。どうにもならないけど、どうにかしなきゃいけないです」
JRA(日本中央競馬会)の騎手だった高嶋は、落馬事故で引退。右半身にまひが残る。

過去に行われたCPEDI3★ GOTEMBAでは自馬ケネディと出場していたが、今回初めて所属クラブの馬フェラガモと二馬で参加した。しかし、チームテスト58.583%、インディビジュアルテスト59.228%と、残念ながらケネディ以上の成績は出せなかった。

愛馬ケネディとともに成績を上げるため、試行錯誤中の高嶋活士 写真:望月芳子

フリースタイルテスト(今大会では、チームテストとインディビジュアルテストの平均得点率60%以上の人馬が進出)には、鎮守、宮路、吉越、稲葉&ピエノ(2馬とも60%以上だった場合は、得点率が高かった方の馬と出場)、高嶋&ケネディに加え、大塚宗毅(グレードⅣ、OISO乗馬クラブ)&リトルアトム(チームテスト61.750%、インディビジュアルテスト59.594%)が出場。
鎮守&ジアーナは64.167%、吉越&バイロン18は65.111%、宮路&オロバスは47.889%、稲葉&ピエノは65.667%、高嶋&ケネディは62.167%、大塚&リトルアトムは60.125%だった。

グレードⅠ~Ⅴに出場した全選手のチームテストとインディビジュアルテストの得点率を合計した結果、総合1位は稲葉 将&ピエノとなった。

全試合結果
https://jrad.jp/wp/wp-content/uploads/2019/10/f021a9e52befdaaeabf5b5b88367ce74.pdf

「あとひと息、68%の得点率を目指してほしい」と嘉納寛治大会会長(一般社団法人 日本障がい者乗馬協会副会長) 写真:望月芳子

今大会会長で、一般社団法人 日本障がい者乗馬協会の嘉納寛治副会長は大会を振り返って、また東京パラに向けて次のように語った。
「パラ馬術はイギリスなど欧米が発達しているので現状では上位は難しいですが、入賞を目指して頑張ります。パラリンピックにはCPEDI3★以上の大会で62%以上を取得した人馬が出場できるのですが、すでに5人の選手が取得していて、今回もまずまずの成績を収めています。しかし、できれば入賞ラインの68%を目指したいと思います」

なお今大会では、リオ・パラ代表で、2018年アメリカ・トライオン世界選手権グレードⅣで銀メダルを獲得したロドルフォ・リスカーラ(ブラジル)がデモンストレーションを披露した。軽快な音楽にのった巧みなステップは、前日貸与された馬とは思えないほど。世界のレベルをまざまざと見せつけた。リスカーラは東京パラ出場を目指しており、日本代表の強力なライバルの1人となるだろう。

「東京パラで金メダルを獲ることが目標」というロドルフォ・リスカーラ 写真:望月芳子

 

左からロドルフォ・リスカーラ、アマンダ・ボンド今大会テクニカルデリゲート(技術代表)・FEI(国際馬術連盟)パラ馬術委員会委員長、嘉納寛治大会会長

●パラ馬術について
「馬術」 日本パラリンピック委員会

https://www.jsad.or.jp/paralympic/sports/equestrian.html

●2020年東京パラリンピック大会 パラ馬術競技 代表人馬選考基準
https://jrad.jp/wp/wp-content/uploads/2019/05/2020daihyou.pdf

●Tokyo 2020 Paralympic Games Qualification Regurations(資格規則) IPC(国際パラリンピック委員会)
EQUESTRIAN Athlete Eligibility(馬術 アスリートの適格性)
Have achieved at least one (1) sixty-two (62) percent score at a FEI Para Equestrian 3* or above event in an Individual or Team competition between 1 January 2018 and 19 June 2020;
http://www.paralimpicos.es/sites/default/files/inline-files/190503125740838_2019_04_05%2BTokyo%2BQG.pdf

●CPEDIおよびCPEDI3★とは?
http://www.paraphoto.org/?p=19538

 

グレードⅠ、個人テスト表彰式 右は1位の鎮守美奈、左は2位の細川裕史 写真:望月芳子

グレードⅡ、インディビジュアルテスト表彰式、中央は1位の吉越奏詞、左は2位の宮路満英、右は3位の井上 力 写真:望月芳子

グレードⅤ、チームテスト表彰式 右は1位の石井直美、左は2位の高橋宗裕 写真:望月芳子