次は東京2020、その次は神戸2021であいましょう。世界パラ陸上閉幕(1)

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ドバイ(アラブ首長国連邦)でのパラ陸上世界選手権は120カ国から1500名の選手が参加し、11月15日まで9日間開催され幕を閉じた。つぎの大会は、2021年9月に神戸市で開催されることが決まっている。日本でのパラ陸上世界選手権の開催は初めて。会場は、ユニバー記念競技場。

閉会式でのフラッグ・セレモニー。2021年開催地となる神戸市を代表して、パラ陸連の増田明美会長が大会旗をうけとった。 写真・IPC Athletic Official Photo

ドバイに出場した国々のメダルランキングのトップ3は、1位・中国、2位・ブラジル、3位・イギリスとパラリンピックを開催した国の競技レベルが高まっているようだ。

日本代表は43名で、金メダル3、銀メダル3、銅メダル7の合計13のメダルを獲得した。
4位までの選手に与えられる東京パラリンピック出場枠については、メダリスト8名と4位=5名、合計13名の選手の出場が内定した。

「ロンドン(2012年)、リオ(2016年)と日本はパラリンピックでの金メダルから離れていた。リオ以降3年は狙えるところで金メダルをとる方針で取り組み、佐藤友祈と中西麻耶が金をとった。この3年間の強化はまちがってなかったと思う」と、日本パラ陸上競技連盟の三井利仁理事長はよい評価を示した。

女子走り幅跳びT64、最終の6回目で5m37cmをマークし金メダルを獲得した中西麻耶 写真・吉田直人

また、これにマラソンが加わることになる。東京パラリンピックでも同じ水準を目指したいと三井氏は話していた。

マラソンのメダル候補は、世界記録保持者・道下美里(視覚障害)、またすでに出場枠を獲得している鈴木朋樹、トライアスロンとダブルで出場する土田和歌子らだ。

ベテラン、若手がバランスよく成長

今回ドバイの結果、日本代表は、ベテラン、若手がバランスよく結果を残せていると言える。特に、ベテランは北京からパラリンピック3大会を経て伸び悩んでいた中西麻耶(走り幅跳びT64/うちのう整形外科)が金メダルに輝いたことが大きい。中西は海外の指導者にいち早く学び、その成長の感覚を頼りに、国内での練習環境を見つけ、粘りづよく挑んできた。
若手は、2013年アジアユースパラ(クアラルンプール)からの日本代表である佐々木真菜(400m T13/4位・内定/東邦銀行)も6年になる取り組みの結果を残すことができた。

女子400mT13で決勝進出した佐々木真菜(東邦銀行)は58秒38で4位、東京パラリンピック出場枠を得た 写真・吉田直人

「佐々木は誰よりも練習している」と、400mでインタビューを待つミックスゾーンで日本チームのスタッフも呟いていた。地道な努力が花開いた瞬間を見せてくれた。

大学からの4人のうち、2017年アジアユースパラ(ドバイ)にも出場した全員が自己ベストを更新。中でも兎澤朋美(走り幅跳びT63・内定/銅メダル/日体大)は、代表デビューと同じトラックで3年間の成長を形にすることができた。

11月12日、男子100mT47 のスタート付近。ブラジルのマルチメダリスト、フェレイラ・ドス・サントス( FERREIRA dos SANTOS Petrucio)とならんでスタートダッシュをきる石田駆(愛知学院大学) 写真・安藤理智

石田駆(400mT47/自己ベスト/愛知学院大)、鈴木雄大(走り幅跳びT47/自己ベスト/日体大)、高橋駿也(やり投げF46/自己ベスト/日本福祉大)そして、前川楓(女子走り幅跳びT63/自己ベスト/チームKAITEKI)も自己ベストを出すことができた。

指導者の質を上げた成果

義足のスプリント、跳躍などを対象に、オリンピックや健常者の競技で活躍するコーチを招き指導の質を高めたことは効果があった。とりわけ、昨年の引退までは山本篤の最大のライバルだったリオパラリンピック金メダリスト、世界記録保持者のハインリッヒ・ポポフ(ドイツ)が、日本選手団コーチとして東京パラリンピック終了まで共に闘う仲間となってくれたことは何より心強い。

11月12日の午後に行われた女子走幅跳びT63で、4m33cmで3位、銅メダルを獲得した兎澤朋美。 写真・安藤理智

中西麻耶(T64・金メダル)、山本篤(T63・銅メダル)、鈴木徹(T64・銅メダル)、兎澤朋美(T63・銅メダル)が成果をあげることができた。
今回も義足でのスプリントやソケットのマッチングを中心に、ドイツで鍛え上げた技術を惜しみなく活かして指導にあたってくれた。またポポフの指導は義足の選手だけでなく、日本選手団全体に影響をもたらしている。
「これからの海外での冬季トレーニングもT63、T64(ともに義足の)クラスを中心にテクニックの改善が期待できる」と三井氏は話していた。

表彰台を独占した男子T52。重度障害クラスの明と暗

国によって切断系、脳性麻痺などのどこが強いかでどれを対象に「マルチメダリスト」を育成・強化するかが課題となっている。
日本のマルチメダリストの対象は「T52男子」であり、佐藤友祈(WORLD-AC)ら重度障害の選手に発掘を含め期待がかかっている。

最終日11月15日、男子1500mT52の表彰式。佐藤友祈ら3人が表彰台を独占し、日本のT52の強さを示した。 写真・IPC Athletic Official Photo

一方でT52女子は、IPC(国際パラリンピック委員会)の規定により「3か国以上・6名以上の参加」が競技の成立条件であり、今大会は4カ国5名で開催したが、現状では東京パラリンピックでの開催がないことがほぼ決まっている。
女性アスリート、重度障害の選手が少ないことは、パラリンピック全体の課題でもあるが、競争が成立しなければ成り立たない。
リオ銀メダリストのマリーケ・フェルフールトが10月に安楽死を遂げたことからも、限られた競技の機会が重要であることを発信していかなければならないと感じる。

日本からは、田中昭代(銀メダル)、木山由加(銅メダル)が出場。取り組みを続けている。

T54車いすの展望は

車いすレーサーでのスピードを競うT54はパラスポーツのシンボルとして大きな楽しみを伝えてくれる。永尾嘉章や樋口政幸らベテラン・アスリートが道標となって、鈴木朋樹、生馬知季らも順調な成長を遂げ世界にも示してきた。しかしこの10年で世界のT54の様相は変わった。「タイムそのものではなく、層が厚くなった」と樋口。今回のドバイでも日本の低調を示す結果となった。かつて日本はメダルに絡むのが当然だったのに対して、決勝へ進めるかどうかの瀬戸際だった。

11月11日、男子1500mT54 決勝 写真・安藤理智

「戦略の問題だと思う。持ちタイムを見れば5000mで10分を切っている。負けてはいない」と三井氏は話す。
東京でのメダルを目指す成果を考慮する場合、どのような戦略を試せるのか。土田和歌子がマラソンに戻ってきたことも含め、ベテランの知恵を集結して取り組んでほしい。

ドバイでの大会直後、11月17日(日)に開催された大分国際車いすマラソンに出場するため、多くの選手がドバイから大分へ渡った。
結果は、ドバイ参加組のマルセル・フグが1位、鈴木朋樹は2位と疲れをみせないレースを展開した。マラソン含め、パラ陸上においては、東京にむけ高まる機運をいかしたスピーディーな成長が見られることだろう。

(校正 望月芳子)