Rio 2016, パラリンピック, 夏季競技, 水泳 — 2016年3月17日 at 11:34 PM

リオへ一発勝負の1日。派遣標準タイムをかけた、静岡水泳記録会

by
50M自由形を泳ぎ終えた、成田真由美(横浜サクラ)

50M自由形を泳ぎ終えた、成田真由美(横浜サクラ)

2016年3月6日・静岡県富士水泳場にて、平成27年度春季静岡水泳記録会が開催された。
9月にブラジルで行われるリオパラリンピック派遣選手選考を兼ねており、例年とはかなり雰囲気が違う。1レース、1レースが緊張感あふれるレースとなった。全国から身体障害・知的障害のある204名の選手が出場した。

この日、リオパラリンピック日本代表を決めるために定めた「派遣標準タイム」を突破し、内定をつかんだ身体障害の選手は、男子5名;鈴木孝幸、山田拓朗、小山恭輔、中村智太郎(木村敬一は昨年7月の世界選手権ですでに内定済)、女子1名;成田真由美。

3月6日、富士記録会で派遣標準記録を突破と同時にリオパラリンピック出場を確実とした6人。左上から、山田拓朗、木村敬一、小山恭輔、中村智太郎、左下・鈴木孝幸、成田真由美と峰村史世監督

3月6日、富士記録会で派遣標準記録を突破と同時にリオパラリンピック出場を確実とした6人。左上から、山田拓朗、木村敬一、小山恭輔、中村智太郎、左下・鈴木孝幸、成田真由美と峰村史世監督

また、春季静岡記録会の記録をもとに、日本代表13名が選考され、合計19名
(男子12名・女子7名)がリオパラリンピック日本代表として内定した。正式には日本障がい者スポーツ協会により発表される予定。

6名が派遣標準タイム突破
パラ水泳においては、初めての試みとなった一発勝負でのパラリンピック代表選考会。かなりの集中力を必要とするレースとなり、どの選手からも緊張感が感じられた。

鈴木孝幸50M平泳ぎSB3のスタート

鈴木孝幸50M平泳ぎSB3のスタート

レース中、一番目に派遣選考タイムを突破した鈴木孝幸(千葉県/GOLDWIN)。現在はイギリスを練習拠点とし、フォームの改善などに重点を置いていた。自身が世界記録を持つ50M平泳ぎSB3では、派遣標準タイムを3秒上回るタイムとなった。また150M個人メドレーSM4でも派遣標準選考タイムを突破し、アテネから連続4度目になるパラリンピックへのスタートラインに立った。

泳ぎ終えた鈴木孝幸

泳ぎ終えた鈴木孝幸

女王復活

泳ぎ終えた、成田真由美(横浜サクラ)

泳ぎ終えた、成田真由美(横浜サクラ)

このレース中、派遣選考タイムを突破した、ただ一人の女子選手・成田真由美(川崎市/横浜サクラ)。1996年アトランタ大会から4大会連続でパラリンピックに出場し、日本最高の15個の金メダルを獲得した。2008年北京大会でのクラス変更により一線より退くが東京パラリンピック開催が決定すると「泳ぐことで盛り上げたい」と競技に復帰した。
到底難しいのではと思われた、クラスを超えた挑戦に挑み、メキメキと高め、このレースに合わせてきた。
50M背泳ぎS5では、あと0.02秒足りなかったが、それがが成田の闘志に火をつけた。次の50M自由形S5では見事に派遣標準タイムを突破した。
(長年、彼女のレースを見続け、また、同じ試合で泳いだ経験もあった。これほどまでに興奮させられた、圧巻のレースがあっただろうか!)
「子供たちの応援がパワーにつながる。今日は、早く泳ぎたくて、泳ぎたくて、楽しみだった!」と、満面の笑みで語る成田の堂々の代表復活劇だった。

やるときは、やる!エース木村、主力・山田、中村、小山
昨年7月の世界選手権でいち早くリオ出場権を手に入れた木村敬一(滋賀県/東京ガス)は、目標にしていた100M自由形S11での1分切りを果たし着実な成長を見せてくれた。

泳ぎ終えた、木村敬一(東京ガス)

泳ぎ終えた、木村敬一(東京ガス)

13歳でアテネパラリンピックに初出場し、4度目のパラリンピックとなる山田拓朗(NTTドコモ)。
50M自由形S9、100M自由形S9の2種目で派遣標準タイムを突破した。

山田拓朗100M自由形S9のスタート

山田拓朗100M自由形S9のスタート

「細かいミスがあり、リオまでには改善しなければならない点はまだまだある。
スタートからの浮きあがりが苦手だったり、精神的な成長も必要」と、慎重な発言ながらも、リオでのメダル獲得に向けた山田の決意に力強さが感じられた。

また、大会標準を突破したベテラン中村智太郎(和歌山県/HISAKA)が4大会連続、北京からの小山恭輔(東京都/日鉄住金P&E)が3大会連続での出場となる。

派遣標準タイム突破に至らなかったが、ベテラン江島大佑(横浜市/シグマクシス)も4大会連続出場へと選考された。

若手・ベテラン/女子の活躍

200M個人メドレーを泳ぎ終えた一ノ瀬メイ

200M個人メドレーを泳ぎ終えた一ノ瀬メイ

昨年から大学1年生となった、一ノ瀬メイ(京都市/近畿大学)。観客席には、在学中の近畿大学の水泳部員50名が応援に駆けつけていた。大歓声の中、一ノ瀬の泳ぎが爆発した。

本番に強かった一ノ瀬。「泳いでいて、楽しかった。今までにないくらい自信を持って挑めたレース!」。
200M個人メドレーS9ではベストタイムを5秒も縮めることができた。

3か月間オーストラリアでの単身水泳留学を経験し、帰国したばかりの池愛里(エイベックス・グループ・ホールディングス)。「これまでの水泳人生で一番緊張したレースでした」と、レース後は表情が硬く、自己ベストが出なかったこと、気持ちと泳ぎのアンバランスを指摘していたが、結果的には、リオへの切符を手にすることができた。

2013年アジアユースパラでは旗手を務め、この3年間で大きく成長した森下友紀(千葉県/千葉ミラクルズ)、JOCが推進するトップアスリ-トの就職支援活動サイト「アスナビ」を通じ今春より、あいおいニッセイ同和損保へ入社が決まり新しい環境で生活・練習がスタートする小野智華子(東京都/あいおいニッセイ同和)はロンドンから2大会目。32歳から水泳を始め、北京から3大会目出場となる生長奈緒美(大阪府/大阪およごう会)、そしてロンドン大会では得意とする背泳ぎが無くなり、種目変更を試みたが叶わなかった笠本明里(神戸市/神戸楽泳会)は8年越しのパラリンピックとなった。

知的障害の活躍

知的障害の選手は、津川拓也(ANAウィングフェローズ・ヴイ王子)ら6名が代表に内定した

知的障害の選手は、津川拓也(ANAウィングフェローズ・ヴイ王子)ら6名が代表に内定した

知的障害の選手は、津川拓也(大阪市/ANAウィングフェローズ・ヴイ王子)ら6名が代表に内定した。
リオパラリンピック日本代表内定選手・男子12名のうち6名が知的障害の選手である。
ロンドンパラリンピック・100M平泳ぎで世界記録での金メダルを獲得した田中康大(千葉市)。津川もまた「アスナビ」を通じて、ANAウィングフェローズ・ヴィ王子へ移籍し練習環境をより一層充実させた。レース前になると、会社挙げて応援で観客席は大歓声に包まれた。
中島啓智(千葉県)・板倉航季(三重県/津トップSC)・宮崎哲(札幌市/あいおいニッセイ同和)・慶田真一(堺市/大阪およごう会)がリオパラリンピック日本代表に内定した。


大会中に18の日本新記録と4つのアジア新記録が樹立された。
その中で注目選手が2つのアジア新記録を樹立した、富田宇宙。パラスイムの世界に入ったのは大学卒業後の2012年で、昨年の日本選手権で400M自由形、100Mバタフライでアジア新記録を樹立した。優勝4種目に出場し3種目でベスト更新。2020東京パラリンピックへ向けて楽しみな選手の一人となった。

1日のレースを終えて、感想
今回のレースを振り返り、メディア・観客の多さに驚きと嬉しさが入り交じった。
選手所属の企業・学校が団体で来場し、揃いのTシャツ・うちわで一丸となり応援する光景は数年前では考えられなかった。しかしパラリンピックが認知され、注目されつつある、と実感できる。
印象深かったのは、やはり、45歳となる成田真由美の結果を残すレース。
また、若手の中で注目されつつもリオ代表とはなれなかった選手については残念であったが、この結果が2020へのステップとして選手一人ひとりの意識を高めたことには違いない。日々の練習に励み、次の大会で新たな結果がたのしみである。

(写真:佐々木延江)