パラフォトニュース
記事掲載日:2003/11/15

日本障害者スキー連盟・野村一路さん(再)_006その2

「あそび」のスポーツ・「競技」のスポーツ

(1月10日野村さんその2)

 ― ノルディックの日本代表って、どんなチームなんですか?

「チームとしてのまとまり」っていう点では、世界でトップじゃないかな。

 ― それは荒井監督の指導方針なんですね。

僕が思うに、ソルトレイクというひとつの大会が終わっても、それでおしまいじゃないっていう意識を植え付けるのが、荒井監督のスタイルだね。彼は、メダルを獲ることに価値があるんじゃなくて、「メダリストとしていかに生きていくか」ってことに価値があるんだということを、理解しているんだと思う。
たとえば、メダルを獲るためだけに頑張っていたら、その大会が終わってから、どうしていいのかわからなくなっちゃうじゃない。
メダルを取ってからも、豊かに生きていく姿を見せていけば、スポーツはもっと文化として根付くはずなんだよね。

 ― 日本の指導者には、その辺の意識が少ないですよね。

そう。悪く言えば「使い捨て」ってことなんだけど・・・。これは、いわゆる「体育」ってやつの影響なのかもしれない。

 ― ところで、日本では障害者スキーの競技人口はどれくらいなんですか?

レクリエーションとしてやってる人は多いけど、「競技」という点からすれば、ほんのわずかだね。でも、「競技」としてやっている人が、SFL-Jのようなレクリエーションに参加することだってあるんだよ。
考えてみれば、いま世界で活躍しているスキーヤーでも、そのほとんどは「おもしろそうだから」ってスキーを始めたわけでしょ。それから、だんだんスキーの魅力にはまっていって、体力・技術が高くなったから「競技」としてやるようになったわけであって。
たとえば、子供の鬼ごっこにしても、「負けたら悔しい、勝ちたい」っていう要素があるわけです。これはスポーツと変わらないでしょ。なのに、日本では「競技スポーツ」と「あそびとしてのスポーツ」を分けてしまっているんだよなぁ。

 ― この研究室では、そういったことをテーマにしているんですか?

障害者に限らず、全ての人々にとって、「あそび」は人生を豊かにしてくれる。そのためには、スポーツってとってもいい方法じゃないかって事をテーマにしているんです。
たとえば、スキーにしても「ただ山の上から下まで滑ってきて速い遅いと、大の大人がなにやってんだ」と思う人もいるかもしれない。でも、これってスキーという活動を通して、何か別のものを得ようとする活動じゃないですか。それはある意味「あそび」ってもんなんだよ。関心のない人には分からないかもしれないけど、それでいいんだよ。

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 インタビューを終えて・・・

確かに、真剣に闘っているスポーツ選手と「あそび」という言葉は結びつかないかもしれない。でも、彼らだってそのスポーツが好きで、やっていて楽しいから苦しい練習にも耐えられるわけだ。

「スキーを通して、あなたは何を得ようとしているんですか?」
「あなたにとってスキーとは?」
だからって、こんなバカな質問をするのはやめよう。それはきっと言葉にできないものだし、無理に言葉にすると、安っぽくなってしまうから。

とにかく早いうちに、代表選手に会わなくては。いやその前に、荒井監督の話を聞きたい!という事で、1週間後の1月17日、旭川に出発する前の荒井監督に会いに行った。


 望月浩平


※この記事は、2002年1月10日に取材されたものです。
 ソルトレークパラリンピック大学生チームの「追い風」より再掲載しています。

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