Paraphoto 特定非営利活動法人 国際障害者スポーツ写真連絡協議会

9月27日 (10:46)

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I  AM A FAN

カメラマン・吉村もと

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水を得た魚のような、というたとえが好きだ。中村智太郎(平泳ぎ・SB7)はその魚のようだ。京都のプールで初めて見たとき人魚のように泳ぐ彼の泳ぎから目を離せなかったことを思い出す。平泳ぎとは、手で水をかき足で水を蹴る。中村智太郎は手を使わない。足、というか体すべてを使い静かに泳ぐ。とても静かに泳ぐ。横から見ると水をうまく利用し波に乗って進んでいくように見える。アテネで最初に見た中村智太郎は決勝のレースを前に余裕の表情でふらふら歩いている時だった。何コースなのかと尋ねてもはっきりしな答えしか返ってこなかった。中村にとってはどうでもいいことのようだ。5コースのスタート台に立った中村はいつものように天を仰ぐ。そして、さて、とばかりに水に帰っていくようなスタートをきる。ファインダー越しで見る中村はいつもいつも楽しそうに泳ぐ。アテネのプールでもそれは変わらなかった。あっという間の100Mを泳ぎ、頭でゴールのタッチをして掲示板を見た中村の顔が忘れられない。普段から大きい目を一段と大きく見開き、3位を確認した。水面から出ている顔だけで喜びを表現した。中国選手と同タイム銅メダル。意味もなく緊張していた私までにやけた。世界3位。表彰台に堂々と上がった中村の嬉しそうな顔は、人魚ではなく和歌山の橋本で練習しているという大学生の水泳選手の顔だった。緊張しすぎたため納得のいかない写真しか撮れなかったことは言い訳とし、飛び上がりたいくらい嬉しかったその感情をくれた中村に感謝して、これからも水に帰っていくようなスタートを見るため私は中村のファンであろうと思った。

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2004
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