2008年9月12日

パラリンピックの伝え方 〜BBC障害者スポーツ担当者に聞く(2)〜 - 北京パラリンピック » 周辺事情

BBCのスタジオ。ここから毎日情報が発信される (PID: 000876)
BBCのスタジオ。ここから毎日情報が発信される

障害者スポーツ報道を可能にするもの

―BBCのスポーツニュース内で、障害者スポーツのコーナーが常設されています。なぜそのようなことが可能なのでしょう。

「スポーツに関して言えば、ヨーロッパでは、障害者スポーツの大会が比較的盛んに開かれています。イギリスでは、パラリンピック・ワールドカップという、大きな国際大会がありますしね。そうした風土も、こうした報道を活性化することにつながっているでしょう。

また、BBCには、障害者関連のプログラムが他にもあります。コラムやポッドキャストを満載したインターネット上のウェブマガジン『Ouch!(あいたッ!)』や、聴覚障害者向けのプログラム『See-Hear(見る-聞く)』など、こうした先行・後発の障害者関連プログラムが、相互に影響しあっていると思います。
イギリスには、障害のある人たちが自ら行動して、権利獲得運動をしてきた歴史があります。こうした障害者関連の番組が作られたり、障害者スポーツの報道が現在のような形をとっているのも、障害者が、社会の中で目に見える存在であろうとしてきたことの反映と言えるかもしれません」

―こうした関連プログラムと、共同企画を行ったりしていますか?

「特に目立ったことはしませんが、よく話し合いますよ。お互いにリンクももちろん張りますしね」

番組を作る人、受け取る人

―今回の番組の制作には、どのような人たちが関わっていますか?

「今回の取材チームには、障害者関係の専門家もいますが、スポーツ、ラジオ、テレビ、障害者問題には直接関係はなくても、それぞれの専門分野と技術を持ったスタッフが一緒に仕事をしています。障害者に関わることは、障害者問題の関係者に一任すればよいという声もあるかもしれませんが、それぞれに異なる、お互いにない力を持った人たちと一緒に番組を作っていく、そのことによって厚みのあるプログラムが可能になるのです。

また、今回の特集番組では、通常の番組のスポーツキャスターと共に、障害のある人自身が、キャスターとして視聴者の前に登場します。顔の見える存在として、大きなインパクトを与えていると思います。車いすテニスで輝かしい戦歴を誇った、タンニ・グレイ-トンプソンなど、こうした司会者としての仕事も長いですから、慣れたものですよ。
それに、障害を持つ人たち自身も、この取材チームの一員として仕事をしています。私自身も車いすを使っていますし、あちらのデスクで仕事をしている彼は視覚障害があります」

―今回のパラリンピック特集への、視聴者の方からの反応はどうですか?

「全般的に、とても好評ですよ。障害者スポーツはこんなに面白いのか、スポーツとして見る楽しさを知ったというものが多いですね。視聴率からすれば、地上波で毎日250万人の人たちが見ている計算ですからね。通常のスポーツコーナーで行う影響力は大きいと思います。選手が実力をつけて、見ごたえのあるいい試合やパフォーマンスをすると、間違いなく関心が高まります。南アフリカの短距離走者、オスカー・ピストリウスのケースなど、いい例ですよね。

一方、障害者スポーツのニュースを、一般のスポーツニュース内で放送し始めてから、数はそれほど多くありませんが、退屈だ、他のスポーツの情報を流せという声を受けることもあります。私たちは質問や批判には、必ず答えるようにしていますが、話を聞いてみると、障害者スポーツには競技スポーツの側面があって、一般のスポーツと同じようにエキサイティングなものだということが、十分に伝わっていないケースが多いように思います」

―視聴者からの声は、どのような方法で受けているのですか?

「メール、ホームページ上のフォーム、電話です。ファックスは受け付けていないのですが、手紙がよく来ますね。さきほどの番組の話ではないですが、コミュニケーションの方法はひとつではなく、複数持つ必要があると思います」

―最後に、これから何か新しいプランがありますか?

「ほら、あと4年後、2012年にはロンドンでパラリンピックが開かれるでしょう。地元で開かれる大会ですからね、より多くの人が楽しんで観戦できるように、盛り上げたいと思っています」
 
* * *

BBCのパラリンピック特集は、大会の開催期間中のみで行われるわけではない。障害者スポーツをスポーツと位置づけ、継続的に紹介する体制の上に成り立っている。
ギャレット氏はロンドンパラリンピックへ向けての活性化を語りつつも、その成功は、障害者スポーツの報道を続け、観戦する側の目を育てることによって可能であることを熟知している。そうした報道を受けて、ロンドンパラリンピックを迎え入れるメディア、ロンドンの市民は、これから4年の間にどのように変化し、大会を楽しむのだろうか。


(真下阿紀)