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IX Paralympic Winter Games Torino 2006

2006年03月19日 [アルペンスキー]

観客席から〜アルペンスキー/スラローム(最終日)

アルペンスキーで盛り上がる、ノリのいいドイツ応援団
アルペンスキーで盛り上がる、ノリのいいドイツ応援団
鈴木選手の応援団。というかお父さま(右)。
鈴木選手の応援団。というかお父さま(右)。

マウンテンエリアへ行くワゴン車に、中国人のテレビクルーと一緒に乗り込んだ。彼らはプラジェラートプランでノルディックを取材するという。中国のテレビ局は、北京大会に備えてパラリンピックの取材に来ているのだと、NHKの人に聞いた。朝8時発の遅めのプレス用シャトル便で、競技には到底間に合わない。ヴォルガータに行くのは僕一人だった。シャトルのドライバーが、「オーケー、カモーン!」と僕の荷物を運ぶ。 
 
セストリエールは、スキーを楽しみスパでくつろぐ、お金のあるスキーヤーにとっては最高のスキーリゾートだ。アルペンスキーのコースがあるヴォルガータは、セストリエールの下側に位置する街になる。会場にはノリのいい音楽がながれ、鉄パイプで組み上げられた巨大な観客席には、踊っている人の姿が見える。コースの左側には、大型スクリーンと、タイムや順位を表示する電光掲示板がそびえ立つ。まるで野外コンサートの会場のようだ。

森井選手のお母さま。「待ってるよー」と声を出す。
森井選手のお母さま。「待ってるよー」と声を出す。

最終日のスラロームは、2回の滑りの合計タイムで順位を決めるゲームだ。2走目、1走目上位の選手15名(エントリーした選手数により変わる)を記録の遅い順から並べ替えて、2走目の出走順が組まれる。誰が一番になるかが、次第に見えてくるように設定されるのだ。次々スタートする選手。手を合わせて祈ったり、シートの上に立ち上がったりして、固唾を飲んで見守る観客たち。中間地点のラップタイムが表示されると、両手をあげて歓声をあげたり、抱き合ったり、必死の応援がはじまったりする。観客の張りつめた緊張感、まわり続ける時計が止まった時の一喜一憂。「アルペンスキーの観戦はかなり面白いじゃないか」そう思った。 
 
「いやー滑っちゃってさー」と大日向選手は笑い転げながら、1走目の失敗をチームメイトに報告する。リザルトシートにはDNFのマーク。Don't Finish=途中棄権だ。2走目の滑りはない。技術的なミスではなくて雪の状態が悪かったと、記者たちにコメントしていた。それは決して負け惜しみじゃないと思った。自分の滑りの冷静で正確な分析だと、そういう感じがした。話す大日向選手の姿に「強い」と素直に感じた。

大日向邦子選手。強い人だと思った。
大日向邦子選手。強い人だと思った。

スレッジホッケーの観戦を通して『メンタルの弱さ』とは、自分自身の姿が見えないことかもしれないと、僕は考えていた。自身の姿を直視するのは苦痛だが、前にすすむためのヒントは、その苦痛の中にあるのかもしれない。冷徹な事実を受け入れられる余裕が、勝つための強さの一因だと、そんな気がした。 
 
「アルペンスキーヤーにとってゴールとはどんなものですか?」と大日向選手に聞いてみた。「気持ちいいとこ!! こういうところ大好き!!」と明るい答えが返ってきた。このコースの唯一の難点は、観客席がコースから見えにくく、お客の盛り上がる姿がいまいちわかりにくいことらしい。盛り上がる観客を見ながらゴールを決める気分は最高かもしれない。その最高の瞬間に観客は関わり、気持ちよさを選手と共有できるのだ。 
 
会場では表彰式が行われていた。観客席は、総立ちで盛り上がり続けている。観客席に手をふるメダリストたち。ライブのクロージングのような心地よい時間がながれる。アルペン会場に来てよかった。そう僕は感じていた。

(森田和彦)