ジャパンパラリンピック3日目
〜競技2日目・フリー走法〜

2月17日 ジャパラ3日目 磯田久美子

競技2日目の今日は男子フリー10km/シット10km、女子フリー5km/シット5kmが行われた。朝8時の気温は2.3℃と比較的暖かい。今日も日本代表であるシットの長田弘幸、久保田とし子、B1の小林深雪は欠場。風邪をこじらせていた小林深雪は今日退院するということで一安心だ。意外にも競技前の選手の表情は非常に穏やかなものだった。選手にとっては勝つというよりも、調整という意味合いが強いのだろう。

そのなかで目に付いたのはLW6/8の伝田寛。彼はフリー走法を得意としている。一番長くアップをしていた彼は「今日は滑りにこだわっていきたいと思います。ソルトに行く前の確認をしたいと思っています。一生懸命やりますよ。」と言ってスタートへ向かった。

いつもは小林深雪のガイドを務める小林卓司は、平沢知緒理のガイドを務める。平沢知緒理は、小林稔が先生として勤める松本盲学校の中学2年生だ。松本盲学校は小林深雪の母校であり、スタッフの渡辺孝次が体育教師として勤める学校でもある。ジャパラには中学生は参加できないが、クロスカントリー協会の推薦により去年から出場している。アルペンを保育園のころからはじめ、クロカンは長野パラのころからはじめたそうだ。

アルペンとクロカン、どっちが好き?と尋ねてみた。すると「どっちもいいけど、まだアルペンのほうがすきかもしれない。体力がないから・・・。」と恥ずかしそうに話してくれた。練習の時に顔面からクラッシュしてしまったようで、顔が赤くなっている。ガイドの小林卓司は、「将来のホープですね。4年間鍛えてトリノへ連れて行きますよ。去年よりは確実に上達していますね。そのうちクロカンにやみつきになりますよ。」と笑顔で話してくれた。

マーキングも終わりスタートの時間となった。10時現在の気温は5.6℃。かなり暖かい。30秒ごとに選手がスタートしていく。スタート付近では荒井監督が選手を叱咤激励する声が響く。代表選手以外にも「がんばれ、がんばれ」と声をかけている姿が印象的だった。コースではコーチ、ガイドの声が響く。「さーのばりだ。知緒理がんばれ。はい。はい。がんばれよー。知緒理こい!」と小林卓司ガイドの声。あまり起伏の無いコースとはいえ、下りではスピードが速いし、上りでは力を必要とする。コース上を歩いていても汗がでてきた。滑っている選手は相当暑いに違いない。

まずゴールしたのはLW6/8の伝田寛だ。どうでした?と質問すると、「やりました」と笑顔で答えてくれた。自分に納得のいくレースができたということで、これから期待がさらに高まる。一方「やばいね」と答えるのは新田佳浩。筋力が落ちているとのこと。乳酸が足にたまっていくのが分かるという。その辺の感覚はアスリートでないとわからないところだろう。
フリーを得意とする伝田寛

新田佳浩。疲れを取って本番に臨んでほしい

代表選手がぞくぞくとゴールする中、平沢知緒理もゴールした。タイムは33分57.2(%計算後28分10.8)。感想を聞くと、「練習よりもころんだ気がする。ガイドの卓司さんはわかりやすいし、本当のことを言うと、今までのガイドのなかで一番よかったかもしれない。」と照れながら答えてくれた。
平沢知緒理 選手とガイドの小林卓司

IDクラスでは西村潤一が一番にゴールした。今回は安彦、篠原両選手が出場していないから勝ってあたりまえのレースだったが、タイムは25分23.2と満足のいく結果だったようだ。ソルトレークには出場できないが、世界選手権へと努力を積み重ねている。西村選手の後援会も大きな横断幕をもって応援していた。

深沢春二のシットについても話を聞くことができた。今までのシットスキーは前と後ろの4点で固定されていて、いわば「そり」と変わらないものだった。しかし今年から新しいシットが導入された。これは、前2点で固定され後ろ2点は浮くようになっている。スラップスケートのようなものだ。海外でも3分の2もの選手が導入している。他の2選手も慣れればこのシットを使うようだ。驚くべきことに、深沢のシットは「手作り」だそうだ。「俺と友達で作ったんだよ。アイデア出したのは俺だもん。俺が元祖なんだよ。外人の方が全部アルミですばらしいものを作っているんだよ。俺は鉄だけど向こうはアルミだもん。」と笑う。
手作りのシットスキーで大会に臨む、深沢選手

これがそのシットスキー

競技終了後、監督に話を聞いた。「結果には満足しています。この大会は調整の一環なんで。この後25日に出発して高所トレーニングを積みたいと思っています。ソルトレークではいい結果を出してもらえると思うのでぜひ。」

長野以降の努力が報われるのはもうすぐ。選手たちは4年に一回のパラリンピックという瞬間に結果をだすため、練習を積み重ねている。もし失敗すればまた4年間努力しなければならない。成功しても肩書きを背負って過ごさねばならない。4年に一回というオリンピック・パラリンピックの難しさを感じた。
ジャパラという大会は日本最高峰の大会だ。しかし、パラリンピックの年ということもあって、勝負よりも調整に重きがおかれているように感じた。日本のクロカンチームの現状を考えれば仕方ないのかもしれなが、もっと多くの選手が参加すれば、より意味のある大会になるのではないだろうか。

〔男子〕                  
フリー10km・LW6/8                
1 伝田寛  24:39.4 [23:55.0]
2 新田佳浩 26:06.5 [25:19.5]

フリー10kmB1・B2
1 小林稔・大平紀夫(G) 27:49.4 [23:05.6]
2 高橋正充・小泉洋美(G)32:26.6 [26:55.6]

フリー10km・ID
1 西村潤一 25:23.2

シット10km・LW10  
1 深沢春二 38:46.6 [32:57.6]  

〔女子〕
フリー5kmB1
1 平沢知緒理・小林卓司(G) 33:57.2 [28:10.8]

※[ ]内は%計算後のタイム