ドイツ、トーマス選手のドーピングが発覚。新田選手の銅メダルが確定。
12日午後、国際パラリンピック委員会は、LW6/8クラスのドイツのトーマス選手に行なったドーピング検査が陽性と判定されたため、バイアスロン、5kmクラシカルでの金メダルを剥奪すると発表した。この結果、5kmクラシカルで4位になった日本の新田佳浩選手が3位に、バイアスロンで5位になった伝田寛選手が4位に繰り上げとなった。トーマス選手は今後2年間すべての大会に出場停止処分となる。冬のパラリンピックでは初めてドーピングでのメダル剥奪となった。思わぬ形で銅メダリストとなった新田選手は、「複雑な心境だがメダルが取れたのはうれしい。」と落ち着いた様子でコメントした。
金メダルを剥奪されたドイツのThomas |
私はこのニュースがあまりに突然だったためにとても驚いた。いままでトーマス選手はダントツで勝っていた。今日も当然トップに食い込んでくるものと思っていた。ところが、今日のコースには現れなかった。どうしたのかと思ってリザルトを見に行くと「Did not start」とある。怪我でもしたのかと思っていたが、実はドーピングだったのである。日本のスタッフは、レース後この知らせを聞いたようだ。。荒井監督も対応に追われていた。
くり上げで銅メダリストとなった新田選手 |
トーマス選手は、8日のバイアスロン後に行われたドーピング検査に引っ掛かった。ドーピング検査には成績優秀者に対して行われるものと、抜き打ちで行われるものがある。今回は前者によるものだが、後者も1988年ソウルパラリンピックから行われている。パラリンピックがリハビリテーションから、競技スポーツへと変化した現れだ。また、1992年のバルセロナパラリンピックでは、アメリカのバスケットボールチームが金メダルを剥奪され、それに対して選手側が提訴をした。裁判は1995年まで長期化し、結局選手側の敗訴となった。今回もドイツの選手側が再審議を申し出ている。ドーピング検査は同じ排尿をA、Bのサンプルに分けて提出する。Aのサンプルで陽性が出たため、Bのサンプルでも検査をするように申し出ているのだ。
今回検出された物質は、メテノロンという俗に言う筋肉増強剤の一種だ。蛋白質同化剤ステロイドに分類され、禁止薬物事項に含まれている。私は、今回この物質が摘出させたことが一番ショックだ。トーマス選手の滑りは、初めて見る私にも凄さを感じさせた。そんな姿にほれぼれしていたのに。実は薬によるものだったなんて。残念というか無念というか、なんとも言えない気持ちだ。薬によって強くなった姿が金メダリストの姿だろうか。世界のトップクラスのアスリートが集いトップを競う。お互いが本来の力をぶつけあいその戦いを讃え合う。それが本来のパラリンピックの姿ではないだろうか。なのに。
荒井監督は次のようなコメントを残している。「クロスカントリーはすばらしく、自然と協調して行われるスポーツだ。ドーピングはこれに相反する行為であり、アスリートを台なしにするだけでなく、スポーツをも台なしにしてしまう。」
ドーピングは本来あってはならないことなのだが、禁止する側と、使用する側のいたちごっこが続いているのが現状だ。荒井監督の言うように決してドーピングによってスポーツが台なしになってはならない。一人の選手によって大勢の選手の努力やがんばりを無駄にしてはならないのだ。スポーツは真っ白な世界で戦ってこそ、本来の姿になる。一日でも早くその日が来ることを期待したい。
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