関連カテゴリ: アジア大会, イベント, サッカー, チームジャパン, ブラインドサッカー, ブラインドスポーツ, 合宿, 夏季競技, 女子 — 公開: 2022年10月19日 at 10:50 PM — 更新: 2022年11月10日 at 12:26 AM

「必ず勝利して帰って来たい」IBSAブラインドサッカー女子アジア選手権へ壮行会・トレーニングマッチが開催された

知り・知らせるポイントを100文字で

ブラインドサッカー女子日本代表がインドで開催されるアジア選手権に出場する。壮行会・トレーニングマッチがMARUI ブラサカ!パークで開催され、チームの顔ぶれ、意気込みが語られた。

2022年11月11日〜12日にインド南部のコチで行われるIBSAブラインドサッカー女子アジア選手権2022(開催国インドと日本の2か国の参加が予定)に出場する女子日本代表の壮行会・トレーニングマッチが2022年10月16日、MARUI ブラサカ!パークで開催された。
ブラサカ日本女子代表は2017年4月に結成され、同年にオーストリア・ウィーンで開催された「IBSA女子ブラインドサッカートーナメント2017」で優勝。世界的に競技人口が少なかったこともあり日本だけが単独チーム、他15カ国が合同チームで参加した。その後、世界選手権は2020年にナイジェリアで開催予定だったがコロナ禍で中止となり、来年(2023年)バーミンガム(イングランド)で行われる予定。
今回、初開催となる女子アジア選手権には満を持しての出場となる。選手9名とスタッフ9名、計18名が参加し、世界選手権に向けた一歩を踏み出すことになる。

応援メッセージが書かれた日本国旗を掲げての選手・スタッフ集合写真 筆者撮影

まずは女子日本代表メンバーが紹介された。
前列左から
FP 加賀美和子(buen cambio yokohama)
FP 菊島宙(埼玉T.Wings
FP 鈴木里佳(コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ)
FP 竹内真子キャプテン(兵庫サムライスターズ)
FP 橋口史織(ラッキーストライカーズ福岡)
FP 田中一華(A-pfeile広島BFC)
FP 若杉遥(free bird mejirodai)
後列左から
GK 寺林眞智子(埼玉T.Wings)
GK 和地梨衣菜(buen cambio yokohama)

日本ブラインドサッカー協会塩嶋史郎理事長は、「今回のアジア選手権は来年バーミンガムで行われる初の世界選手権に大きな弾みをつける大会である。世界のブラインドサッカーの女子カテゴリはまだ確立の途上。一方、各大陸では各国とも(女子)代表チーム作りには力を入れ、急ピッチで進んでいる。(コロナ禍で6年ぶりの開催となる2023年の世界選手権に向け)山本夏幹監督新体制のもと、アジアの舞台に立つことができる。日本のブラインドサッカー界に大きな転機をもたらしてくれるものと確信している」と力強く語った。

山本監督は「以前の女子代表は菊島が大量の得点を取って一人でゲームを決めていくところが魅力だったが、今のチームはその強みを活かしつつ、今日の試合(後述)でご覧になったように鈴木や田中、竹内もシュートを放ち、いろんな人が関わって相手に向かって戦っていくチームとなった。今までの積み上げが間違えていなかったことを示すものである。男女同時開催はアジアでは初めてで、何が起こるか分からないが、そこさえも楽しんで戦っていきたい。この一歩が女子の未来につながると思っている」とアジア選手権にかける思いを語った。

さらに、竹内真子キャプテンは「監督が代わりコーチスタッフが新しくなり、新しいフィールドプレーヤーも増え、明るく活気のあるチームになった。まだまだ上に成長するしかない私たちですが、インドに行った際には今持っている力を全力で発揮し、必ず勝利して帰って来たいと思います」と決意表明した。

トレーニングマッチ vsソイエ葛飾 3−2で勝利

試合開始前に整列する女子代表選手たち 筆者撮影

壮行会の前にソイエ葛飾(女子選手も所属するブラインドサッカーのクラブチーム)とのトレーニングマッチが行われた。まず菊島宙が右サイドからボールを奪ってシュートを決め1点目。菊島以外の鈴木里佳や田中一華もシュートを放ち、第1ピリオドは女子代表がシュートを11本放つ攻めをみせ、1−0とリードして終了。

菊島宙の豪快なシュート  筆者撮影
ディフェンスする菊島宙(中央)、竹内真子(右)  筆者撮影

第2ピリオドも、菊島がドリブルで持ち込みGKの股間を抜くシュートで2点目を決める。後半、菊島がベンチに下がるとソイエ葛飾に2点を取られてしまうが、竹内真子がシュートを打つシーンもみられた。メンバーの底上げを図っている途上でもあり、これからに期待したい。試合は、ピッチに戻った菊島が残り5秒でゴールを決め、3−2と勝ち越した。

ボールを奪いにいく鈴木里佳 筆者撮影
ボールをキープする田中一華 筆者撮影
トレーニングとして行われたPK戦でシュートを止めるGK寺林眞智子 筆者撮影

女子日本代表選手・監督インタビュー

竹内真子キャプテン(兵庫サムライスターズ)

インタビュー後に撮影に応じる竹内真子 筆者撮影

関西出身なので笑いを取ることを忘れずに、明るくみんなに声をかけていきたいという竹内キャプテンにアジア選手権への抱負などを聞いた。

Q:アジア選手権に向けての抱負を。
A:まず初めてアジアで女子の選手権が行われるということで勝ちに行くというところはもちろんのこと、見ている人もやっている人もワクワクするサッカーや、みんなで点を取りに行くところを目標にしています。

Q:チームの雰囲気はどうか?
A:とても雰囲気が良い。トレーニングマッチの10分間のハーフタイムに「声出てたねー」とか「あの声かけ良かったよ」とか、「声出てるけど、ああいうこと言った方がいいよ」と前向きなコミュニケーションができたので、良いと思います。

Q:トレーニングマッチで菊島選手がベンチに下がった時間帯に2失点してしまったが?
A:菊島選手は存在が大きい選手なので、頼りにしていますが、そこに頼るだけではなくて、自分から行くことを練習したいと思ってますし、チームでパスが上手く繋がればいいのかなと思ってます。

菊島宙(埼玉T.Wings)

インタビュー後に撮影に応じる菊島宙 筆者撮影

ブラサカトップリーグLIGA.iで得点王・最優秀選手賞を取り、男子の中でも引けを取らない選手である。

Q:アジア選手権でどんな戦いをしたいか?
A:ドリブルとか力強いシュートはあまりないと思うので、そういうところをどんどん見せて、”女子も男子みたいにすごいんだよ”と。やっぱり女子だから男子だからって自分でも思うことはあるが、それでも女子もすごいんだよと。オンラインで配信されたら、全国で見てもらえるので、”女子もできるからやろうやろう”、”始めましょう”みたいなことを画面越しでも伝えられたらと思います。

Q:取り組んできて上達したと思うところは?
A:自分でワンマンで行って取って自分で行ってみたいなことが多かったが、この体制になってからは今までより周りを見られるようになったと感じます。今日もパスが何個か通せたのが良かった。自分のドリブルは走って蹴っての直線なんですよね。それでゴール前を固められると突破出来ず突っ込んで取られてもみくちゃにされて終わることがある。最近は少し左右の動きというか、揺さぶって相手の形を崩してっていうのは少しづつ出来ていると思ってます。

若杉遥(free bird mejirodai)

トレーニングマッチで壁際の攻防戦に挑む若杉遥 筆者撮影

ゴールボールの選手としてロンドンパラリンピックで金メダルをとった経験のある若杉。東京パラリンピック銅メダル獲得後、ゴールボール選手としては引退したが、今年4月のブラインドサッカー体験会をきっかけに本格的に選手活動を始めた。選手スタッフからもゴールボールでの経験をブラインドサッカーに活用してほしいと期待されている選手である。

Q:代表入りして初めて国際大会に臨む思いは?
A:このような形でチャンスをいただけたことに、まずは感謝しています。ゴールボールでは一線を退きましたが、スポーツへの思い、自分がまず楽しんで伝えたいという思いがまだ自分のなかにあったと気づいた時に、ブラインドサッカーで世界に挑戦するようなチャンスを頂きました。そういったところを前面に出して、技術的にはまだまだな部分があるので、そこは一歩一歩成長できるように頑張っていきたいと思っています。

Q:どういったところに競技の魅力を感じているか?
A:ピッチの中を自由に動けるというところと、だからこそ相手とのコミュニケーションが必要というところ。ゴールボールでも必要でしたが、それ以上に大事なんだというところです。山本監督も「ピッチの中では自由だよ」と言って頂きました。視覚障害者がやるスポーツは、どう視覚の情報を補うかが大事ですが、ただそれは一方で、補い過ぎると言われた通りに動くだけになってしまう二面性があり、そこをもっとうまくやることで自分たちが表現できると感じ凄く面白そうだなと思いました。

Q:国際大会の経験でチームに還元できるものは?
A:技術的なところはまだまだですが、今できることを一生懸命にやるということはチームにプラスになると思っています。また、競技は違えど試合の経験はありますので、そこに向かう姿勢とか気持ちでは何か貢献できるところがあると思うので、出来ることをチームに貢献して、みんなでいいプレーができるようにしていきたいと思っています。

田中一華(A-pfeile広島BFC)

インタビュー後に撮影に応じる田中一華 写真撮影・地主光太郎

チーム最年少、中学一年生で日本代表としてアジア選手権に出場する田中。日本ブラインドサッカー協会の普及事業であるキッズキャンプやキッズトレーニングに参加し選抜された選手である。

Q:ブラインドサッカーの魅力は?
A:フィールドプレーヤーとか少ないし、目が見えない中でやっていくのでコミュニケーションを取るのが非常に難しいが、私みたいな中学生から大人の方までいろんな世代の方と向き合ってコミュニケーションを取っていけるというのが魅力だと思います。

Q:得意なプレーを教えてください。
A:私は結構ボールを持ってプレーするより、相手を追いかけてボールを取りに行く方がうまいと思います。

Q:目標はどこに置いているのか?
A:私はスタメンになれていないので、これからガンガン練習していって、シュートもいっぱい決められる選手になって試合にもいっぱい出たいと思ってます。

山本夏幹監督

インタビュー後に撮影に応じる山本夏幹監督 筆者撮影

本年1月より女子日本代表監督に就任。3月1日に行われたオンライン記者会見において、「世界選手権での優勝を目指し、前体制の村上重雄監督が築き上げてきた強みを活かしつつ、新たなチャレンジをしていく必要がある」と目標を語っている。

Q:日本女子のレベルはどれだけ上がったと感じているか?23年の世界選手権にどう繋げるか?
A:一回一回試合の中で測っていくしかない。今日のトレーニングマッチで言えば、鈴木が口火をきるシュートを打ち、その後菊島が得点を取って途中から入ってきた田中がすぐにシュートを打って、後半もGKから良いスローが入って竹内がシュートにいくという風に、これだけ攻撃に関わる選手が増えてきたというところは僕が狙っていたところです。元々賢い選手たちですから、そういったものが合宿の中でちゃんと積み上がっているというところは評価でき、これが23年に繋がってくると思います。まずは初めての国際舞台で女子相手に戦いますので、どれだけ通用するのか非常にワクワクしてますね。

選手一丸となってアジア選手権で勝利を勝ち取り、来年の選手権での優勝獲得に弾みをつける大会となることを切に願う。

(編集・校正 中村和彦、地主光太郎、佐々木延江)

この記事にコメントする

記事の訂正はこちら(メールソフトが開きます)