パラフォトニュース
記事掲載日:2003/11/12

競技する環境・その1・審判 三井利仁さん(再)_001

photo11月1日(金)、競技の後・閉会式前に、フェスピックで審判をしていた三井利仁さん(東京都障害者スポーツセンター)にお話を伺った。三井さんは、アトランタパラリンピックから陸上のコーチとして日本選手団と一緒に大会に参加、シドニーオリンピックでは、公開競技として参加した車椅子の陸上競技で銀メダルの土田和歌子選手のコーチもしている。現在は、陸上競技の全日の本監督。さまざまな大会経験から、今大会では審判としての参加となった。(「 」は三井さんの言葉)

佐々木:国際大会にはいつも来ていらっしゃるのですか?

「そうです。ぼくはいつも、コーチできています。今回初めてオフィシャルできました。普段は競技は陸上競技のコーチをやっています。」

佐々木:今回の大会はどんな印象を受けましたか?

「(韓国の人は)みんな熱心にやっていますけれども、やっぱりまだ韓国の中で、障害者のスポーツが根付いていないのかなって、感じる所もあります。用器具の設備のしかたなど、日本と比べてもこれだけ立派な競技場なのに、ルールで決まっているのに何故使わないのかな?などと首を傾げることがありました。こちらから指示をしてはじめて出してくる。そういった意味では、もう少し成長して、意識を高めてもらえるといい大会になったんじゃないかなと思います。」

佐々木:スタジアムは新しいですよね。設備はなんでも揃っているんですよね?


「そうです。ワールドカップで使った会場です。こんなにいいところを使っているのに、記録表示とか、速報表示とかも出なかったし、りっぱなオーロラビジョンがあるのに競技風景映しているわけじゃなかったりとか。(今日)マラソンやっていても途中のラップタイムが速報で入らない。漠然と陸上競技をやらしちゃったところがあって、選手には不満が残っています。僕は抗議をうける担当なんですが、非常に多くの国が、抗議をしてきたっていう事実はありましたね。」

佐々木:何が原因でそのような声があがってくるのでしょうか?

「十分な打ち合わせが、フェスピック連盟、現場の大会の主催者から競技をうけている・・陸上で言えば陸上競技連盟のほうにシッカリとした指示がなかった、という気がします。」

佐々木:広報もとても遅かったような気がするのですけれども。

「そうですね。メインプレスセンターとか、メディアさんへの連絡も、現地では悪かったし、全体的な流れや指示も、選手もそうだし、まわりもちょっと受け取りづらかったんじゃないかなと思います。(釜山では)せっかく「アジア大会」をやったのだから、アジア大会と同じようにやれば、(フェスピックは)いいものになったんじゃないかと思います。なんだか、アジア大会で全エネルギーを使って、ほっとしたときにこのイベントやっているんじゃないかなっていう感じがしました。ただ、ボランティアは、非常によくやってくれたと思います。日本でもこういう風であって欲しいと・・。学生ボランティアとか、軍隊の方とか・・・ボランティアのマンパワーっていう部分ではとてもよかったです。」

佐々木:徴兵の経験は生きていると思いますか?

「そうですね、そういうところはきちっと整理されていて。一言いえば間違いなく、こちらが忘れていることでも、1時間後くらいに(答えを見つけると)さっき言われた事なんですけれども、って持ってきてくれたりとか。打ち合わせができていたのかなっていう部分はあるんですけれども、その部分がちゃんとしていれば、もうパーフェクトっだったんじゃないですかね。」

佐々木:競技の内容・大会への理解という面ではどうですか。

「フェスピックの主催者としては当然、十分わかっていたと思います。ただ、そこの部分を競技をジャッジする審判までに上手く伝えてられなかった気がするんですよ。だからもう、ガンバレ!ガンバレ!。やってる形にして、若干フェアじゃない部分があったとしても、まあ、いいじゃないか、っていう。障害者がやってるんだからっていうところが感じられました。僕はこのフェスピックはじめて参加したんですけれども、パラリンピックとか世界選手権を経験した中では、非常にそういったところが比較できた大会だったですね。」

佐々木:三井さんはいつから国際大会や世界選手権に行かれているのですか?

「僕はアトランタからです。コーチとしてアトランタとシドニーへ行きました。アテネは、できれば、日本の選手を引き連れて、コーチという立場で行きたいです。」

佐々木:これから、環境面や選手の方への期待などについてはどう思われますか。

「やはり、アジアのこういった大会は重要だと思います。今、このフェスピックが持っているスローガンをもって運営していってほしいことと、同時に、もっとハイレベルなアジアの大会をつくって欲しいということです。国内でも、全国障害者大会と、ジャパンパラリンピックとがあるように、それぞれのイベントの分けをつくる。やはり、この大会は非常に大切だと思う。これはこれで置いて、もっとハイレベルなチャンピオンスポーツもつくっていく必要があるんじゃないかな。パラリンピックはパラリンピックで、フェスピックはフェスピックで、まだアジアの中にも差がかなりあるので、それぞれの大会に参加する選手を大切にしていきたいなと思います。」

佐々木:ありがとうございました。

photo 三井さんのお話を聞き、フェスピックの存在意義について、自分もまだ整理がつかず、ぼんやりと感じていたことを言い当ててくれた気がした。前回のバンコク大会から競技によってはIPC(国際パラリンピック委員会)のポイントが加算されるようになった。フェスピックで良い成績を収めると、アテネ・パラリンピックに参加できる。そのため、競技性が強くなり、底辺を広げることの意味が薄れてしまうのではないかと心配したが、思い過ごしだった。これからも、選手が選手としての自分をつくる環境、競技を強化するために、3分の1ルール(代表選手の3分の1は、国際大会未経験者を出場させなければならない)をはじめ、フェスピックの理念と存在は重要な機能を果たすと思った。

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