Paraphoto 特定非営利活動法人 国際障害者スポーツ写真連絡協議会

9月27日 (17:46)

Paraphoto Article

勝ちきる力

なごやん

 
準々決勝でアメリカに非常に悪い、悔いの残る内容で敗れ、メダルの可能性が無くなってしまった車椅子バスケットボール女子日本代表。
5-8位決定戦ラウンドに回ったが、前回のシドニー大会銅メダルの日本としては、何が何でも5位を掴みたい。絶対に負けられない。

まず最初の相手はオランダ。高さのある #13 Van Veggel、身体能力の高い #4 Jansen を中心に、機動力のあるチームだ。

自分は少し遅れて会場に着いたら、すでに 1Q で 4-14 とリードされていた。あとでスコアを見てわかったことだが、全然ショットが入っていなかった。気負いすぎて、立ち上がりが固かったのだろうか。

しかし、1Q 中盤からじりじり追い上げる。リバウンドは圧倒的に支配されているが、しつこいディフェンスでターンオーバーを奪っていく。#15 南川が #12 Wevers にべったり当たり、いかにもいやだ、という表情を強いている。キャプテン #6 上村は、この試合にかける強い思いが、体と車椅子全体からほとばしるかのようだ。ものすごい気迫。立ち上がりは失敗したようだが、この試合にかけるみんなの思いがビンビン伝わってきた。11-17 と6点差まで詰めた。

2Q に入ると、オランダの選手に少しずつ日本ディフェンスのプレッシャーの効果が現れてきた。ターンオーバーに加えて、焦りからのオフェンスファウルを、オフェンスの中心である #13 Van Veggel、 #4 Jansen から奪っていく。#6 上村のブロックショットも炸裂。体と車椅子をゆらしてドライブをかける。

ショットはまだ思うように決まらないが、じりじり13-19、15-19、17-19 と追い上げる。#6 上村がスティールし、そのまま持ち込んで、ガーッと気迫が叫ぶようにショットを打ち、ファウルされてバスケットカウント。ついに 21-21 の同点! 1ショットを決めて22-21 と逆転!

1Q の様子から、こんなに早くディフェンスから返していくとは思ってなかった。いけるぞ!
その後またリードを許したが、最後に添田が走って、0秒できれいなブザービーターを決め、24-25 で前半を終えた。
 

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走る #15 南川

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ショットの行方を見つめる #4 塚本

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#6 上村の気合いのショットでバスケットカウント同点、
1スローも決めて逆転!

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#14 添田のブザービーターの瞬間


ハーフタイムの練習も、選手は全く気負っているところはみられない。期待がふくらんだ。とにかく後半の入りでやられるケースが多いので、対応ができるだ。

だが、3Q は胃の痛くなるような我慢の時間だった。逆転、また逆転の連続。#9 高林、#15 南川のショットで引き離すが、すぐに追いつかれる。でも、オランダの選手に走り勝ち始めている。様々なポジションの位置に日本の選手が先に回り込めるようになってきた。オフェンスリバウンドはあいかわらず取れないが、ディフェンスリバウンドは #6 上村がしっかりもぎ取っている。スクリーンアウトもがっちり。ペイントエリアが、#6 上村の「お家」のようだ。

36-38 と2点リードされて 4Q に入る。7分過ぎから #9 高林、 #14 添田、#6 上村が連発。40-40 の同点から8点連取で 48-40! 途中でオランダがタイムアウトを取ったが、ショットが入らず、痛いターンオーバーを連発してしまう。残り3分 48-44 で再びオランダがこまめにタイムアウト。

しかし、その後、残り 1:20 で、#15 南川が変なファウルを取られてバスケットカウントを食らって、オランダがタイムアウトを取ってから、バタバタっとおかしくなった。
#15 高林は、後でこの終盤のいくつかのタイムアウトのことを「いつも基本的には同じ指示を出してもらっているので、それをしっかり確認して臨みました」と語っていた。

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#4 Jansen を徹底マークする #14 添田

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ペイントエリアを「お家」にした #6 上村

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当たっている #9 高林。ショットが吸い込まれていく


#14 添田がショットを外して、その足でファウルをしてしまう。いかん、まずいパターンだ。
残り1分を切った。#4 Jansen が決めて2点差。よし、一本取ろう、そうすればまず勝てる、と思った瞬間、#14 添田がスローインしたボールが、狙っていた #13 Van Veggel にきれいにスティールされてそのまま絵に描いたようなレイアップを決められ、ついに 50-50 の同点。唖然。

何度か #14 添田に「しっかり、落ち着いて! 思いっきりパス!」と声を送っていたが、肝心なところで痛いミスが出て、同点になってしまった。

#9 高林が入れ返したが、ドリブルして持ち込んだ #13 Van Veggel が、残り 9秒で、結構距離のあって角度がない、ちょっと信じがたいようなフックシュートがズバンと奇跡的に決まって、また同点。自分はほとんど崩れ落ちかけた。

残り 9秒。同点。

オリンピックの女子バスケット、あのギリシャ戦を瞬時に思い出した。いやな汗がさっきから「じとっ」と出ているのも同じだ。
タイムアウトあったか? いや、そのまま攻めろ!

#14 添田がすごいスピードでボールをフロントコートに持ち込む。オンサイドの #6 上村、 #4 塚本、#10 吉田が相手のディフェンスをがっちり抑えにかかる。オランダディフェンスも激しく抵抗する。逆サイドで #9 高林がセットする。#14 添田から #9 高林にきれいなパス、そしてショット! 同時にブザー!

・・・ボールは、ちょっとためらいがちにネットに転がり込んだ。

喜びが爆発するコート上の選手たち。そして日本ベンチ。反対に崩れ落ちるオランダ選手。どちらの選手も抱き合っている。自分も飛び上がってバンザイだ(なので写真が撮れてない・・・)。

やった! 勝った! 勝った!
 

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気合いを入れる #15 南川。常に声を出している

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土壇場で追いつかれ、苦しい表情を見せる #4 塚本

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ブザービーターでサヨナラ勝ち、ベンチで叫ぶ #8 後藤

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ブザービーターで勝利を決め、
笑顔で #6 上村とハイファイブをする #9 高林

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土壇場で敗れ、泣き崩れる #4 Jansen(向こう)。

チームメイトから慰めの手が伸びる

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チームメイトと抱き合う #9 高林

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ミスをして悔しがりながらロッカーへ向かう #14 添田に
明るく声をかける #9 高林



試合後、何名かの選手に話を聞いた。まず、ディフェンスをがんばった #15 南川と、最後にミスは出たが、ゲームメイクを託されていた #14 添田から。そして中と外の大黒柱、#6 上村と #9 高林。

#15 南川
「(最後の土壇場で同点にされて)気持ちはしっかり持ってました。とにかくディフェンスだけしっかりしようと思って、後はみんながちゃんと打ってくれると思っていたから。」
#14 添田
「(同じく、最後に追いつかれた場面) すいません、私のミスです。痛恨のミスですね・・・
ここに来て、シュートがやっと入って来たので、次も思い切って打っていこうと思います。がんばるぞ!」
#6 上村

「今日は(シュートを)だいぶ決めることができました(2P 9/18、16リバウンド)。絶対負けたくなかったし、ここで負けちゃうと、今まで築き上げてきた車椅子バスケットの女子の地位が危うくなってしまうので、絶対落とせない試合だったです。
 (最後に追いつかれた場面)追いつかれたって、とにかく返せばいい、と思ってた。あの最後のブザービーターの場面は、もう美香(#15 高林)がセットしてたのがわかってたので、ブロックに行って、もう絶対に(オランダのディフェンスを)出させないように、って必死だった。打った瞬間は「入れ!入れ!入れ!」って・・・
 ファンを感動させられる試合ができて、ほんとによかったです。もっと最初からこういう試合をしないといけなかったんですけどね・・・明日もがんばります!」
#9 高林
「(前半リードされて、後半にはいるときに)相手のシューターがある程度決まってたので、それを抑えることだけに集中してた。
  土壇場で追いつかれたのは、やっぱり私たちの弱いところが出た感じ。もう一回強い気持ちを持ってやらないと、と思います。
 最後のシュートは、みんなが良いブロックをしてくれてたので、もうあたししかない! と思い切って打ちました。#14 添田も本当にすばらしいパスを出してくれた。」

とにかく勝ちきった。

オリンピックから今まで、詰めが甘くて勝ちきれなかった試合を何度も見てきた。野球、バスケット、ソフトボール、ウィルチェアラグビー・・・
勝ちきれない理由はチーム、個人でそれぞれだ。相手のここ一番での強さ、高さなどのフィジカル、チームメンタルの弱さ、国際試合の経験不足・・・勝ちきれなかった本人が、チームが、コーチが一番よく分かっているだろう。

この試合も展開から行くと、すんなり勝ちきって当然の試合だった。「もう勝ったな」と終盤思った。
しかし、信じられないミスが出て、土壇場で同点に追い付かれてしまった。
「ああ〜またいつものパターンか・・・」と一瞬思ったが今日は違った。

詰めは甘かったけど、勝ちきることはできた。

力を出しきれば、勝ちきれるのだ。

26日に5-6位決定戦でメキシコと、再び相まみえる。もう一度勝って、必ず 5位をつかみ取りたい。

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試合後、最高の笑顔にピースサインの
チーム広報の遠藤 "Mame"ちゃん

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