Paraphoto 特定非営利活動法人 国際障害者スポーツ写真連絡協議会

9月29日 (22:36)

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胸を張って日本に帰ろう

なごやん

 
車椅子バスケットボール女子日本代表は、5-6位決定戦で、予選ラウンドで一度対戦しているメキシコと再戦した。
メダルの可能性が無くなってしまった後は、「このままでは今まで築き上げてきた車椅子バスケットの女子の地位が危うくなってしまうので、とにかく5位を死守したい。」と #6 上村が昨日、劇的な勝利を上げたオランダ戦の後に言っていた。

前回の同カードは3Qまで競り合い、4Q に突き放す展開だったが、この試合では2Qで 26-17 と9点差をつける展開になった。1Q に 8-0 とリードしながら、ばったりシュートが入らなくなり、#9 Vazquez に球を集められて 8-8 のタイに追いつかれたときはまずいと思った。しかし、エース #6 上村が16点と爆発。高いメキシコのスクリーンアウトもきっちりでき、きれいなスティールでボールを奪い取る。すごく集中している。#9 高林も相変わらず当たっていて、バスケットカウントも決めた。

前半の最後によくない時間帯があったので、後半の入りを心配していたのだが、#6 上村を温存し、#13 菅原を入れてきた。しかし、攻守のリバウンドを #9 Vazquez に支配され、あっという間に 28-25 と点差に詰められる。あわてて #6 上村を戻しと、強烈なスクリーンアウトのポジション取りで、リバウンドを互角以上に戻し、圧倒。みるみる差を広げていく。#6 上村は 3ファウルだが、とりあえず 3Qで 45-30 15点差をつけた。

ところが、4Q 始まってすぐに #6 上村が4つ目のファウルを吹かれてベンチに下げざるを得なくなってしまった。しばらくは #13 菅原のブロックショットが出たりして、なんとかゲームコントロールを保ってがんばっていたが、だんだんディフェンスから崩されていき、リバウンドもメキシコに出るようになって点差を詰められる。残り4分を切って 47-41 と6点差まで詰められたところで、腹をくくって #6 上村、#15 南川をコートに戻す。
しかし、一旦勢いに乗ってしまったメキシコへの流れはなかなか取り戻せない。#9 Vazquez がリバウンドにショットに奮闘し、じりじり追い上げられていく。ターンオーバーの応酬の末ボールを奪われ、残り 30秒で #9 Vazquez の絵に描いたような3ポイントが決まって、ついに49-47 の2点差になってしまった。

こんなところで差し切られるわけにいかない。#14 添田がスピードでボールを持ち込んで、残り 13秒できれいなミドルショットを決め 4点差。さらにターンオーバーを奪って、残り 3秒で、#15 南川が定番の #6 上村のポストに球を入れ、がっちりダメ押しのゴールが決まった。

3Qまでの展開なら楽勝かと思ったが、最後はもう冷や冷やものだった。勝ちきることはできたが、最後にどうしてもこうなってしまうのはいただけない。

だが、勝ちは勝ちだ。勝ってパラリンピックを終えて、日本に帰ることができる。

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ゴール下で踏ん張る #6 上村

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残り13秒の #14 添田のショットで救われた

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試合終了後に抱き合う #6 上村と #10 吉田

 
試合後、ヘッドコーチと何人かの選手に話を聞くことができた。

水原ヘッドコーチ:

「最後に勝って日本に帰ることはできるが、目標にしていた世界の4強の中にはいることができなくて残念だ。最後の数試合で自分たちのバスケットはできたが、まだまだ上を目指さないといけない。もう一回立て直して挑戦したい。
(今日の試合で最後追い上げられたが)
 良い時間帯で、経験のために若手を投入した。しかしプレッシャーが厳しくて、すぐ立て直したが、苦しいゲームになってしまった。
 アテネで応援してくれた方々、そして日本で応援してくれた沢山の方々にお礼を言いたい。(涙で声をつまらせながら)もう一度立て直して、いいバスケットをしたいと思う。」
#14 添田:
「勝ててよかった。一時、攻守とも崩れてしまって、ターンオーバーも多くて、こういう冷や冷やのゲームになってしまった。

 (4Q残り13秒の最後のショットは)
 (上村)知佳さんにパスを出そうと思ったら、パッと前が開いて、抜けたから行っちゃえ、と思って打った。あれが入ったのはラッキーだった。

 (勝って終われることになったが)
 メダルを取れない、と決まったあの日から、何度かみんなでミーティングをした。気持ちは落ち込んじゃってたが、次の世代の子たちのために、最低でも5位は持って帰ろう、とみんなで結束してがんばった。
 5位は取れたけど、内容が内容なので、いろいろ反省点を出して、いいバスケットができるようにしたい。課題はいっぱいもらった。
 地元の川崎や練習先でも、応援してくれた人はいっぱいいたので、メダルは逃したけれど、5位を持って帰れるのでよかった。今後も支えてくれる人に感謝しながら生活しようと思っています。」
#8 後藤
「(大会を通して)
 パラリンピックって本当にすごい。世界の強さをまざまざと見て、もっと勉強しないと、と思ったし、これからのこととか、いろいろ考えた。普通の試合と全然違うから、勝ったときの感動が本当に大きい。
 いろいろな人の支えがあってここに来ることができたので、本当にありがとうをいいたい。次の目標に向かってがんばりたい。」
#6 上村
「(ファウルトラブルで後輩に託した時間帯は)
 ナオ(#13 菅原)なんかには、『自信を持って、自分のためにプレーしろ』とアドバイスした。今日は4ファウルしたが、ちゃんとポジションを取れてたし、変な笛ではなかったので冷静に受け止められた。

(大会を通して)
 こういう大きな大会は本当に怖いな、ということ。初戦(ドイツ戦)を落としてしまうと、ここまで立て直すのが厳しいのかな、本当に初戦が大事だな、とつくづく身にしみた。
 やっと、ここに来てチームを立て直すことができた。初戦のドイツ戦で負けたショックが大きくて、なかなか立ち直ることができなかった。シュート率も20%台という状況で、『自分たちはこんなんじゃ(日本に)帰れない』と思っていた。何とか、どん底から死にものぐるいでではい上がって、5位まで上げることができた。

 自分自身は今回、本当にどん底まで落ちたし、オフェンスがダメだった分、ディフェンスではがんばってたつもりだった。でも、やはり自分の要というのはオフェンスだと思うので、いつになったらスイッチが入るんだろうと思いながら、とにかく必死だった。いつも塚本さんらに励ましてもらって、はい上がってこれた。とても助かった。

 一日で終わる競技がうらやましい、と思うこともある。(バスケットボールのように)長丁場で戦うのは辛いけど、でも逆にとても楽しい。いろんなことを話せるし、泣いたり笑ったりしながらチームってできているから。後半の 5-8位の順位決定戦に入ったとき、泣きながらミーティングしたこともあった。

 でも、最後に勝って、5位を掴むことができた。胸を張って日本に帰りたいと思います。」

オリンピックの女子バスケットも、初戦でブラジルにこっぴどくやられて、そこからはい上がってきた。そして、パラリンピックも同じような経過だった。
苦しみ、悩みぬき、どん底からはい上がって掴んだ5位。ここで得たものは、一人一人にとてつもなく大きい。

結果だけでなく、その苦しんだこと、そして得られた勝利と課題。次につながる大会になったと思う。

帰国後すぐに、10月10、11日に神戸市のグリーンアリーナ神戸で日本選手権がある。自分も沖縄に帰る直前なので、是非見に行きたいと思う。

アテネで成長した選手、日本で成長した選手。新たな高みを目指して、歩んでいこう。

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試合後、ほっとした表情の #6 上村。
でも悔しさも持って帰る

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車椅子バスケットボール女子日本代表チーム。
苦しんだから、明日がある。灯火は受け継がれていく

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