「第21回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」が1月30日、東京・千代田区立スポーツセンターで開幕した。緊急事態宣言のさなか、徹底した感染対策の中で始まった今大会。男子59㎏級では27歳の光瀬智洋(シーズアスリート)が137㎏をマークして優勝し、記録を狙う第4試技では141㎏の日本記録を更新した。
感極まってこぼれる涙…
パラパワーリフティングは、3回の試技の中で成功した一番重い挙上が記録となるが、新記録を狙う場合にのみ、特別試技(第4試技)が認められる。光瀬は今回、第2試技で137㎏を成功させたが、第3試技では141㎏を失敗。すぐに第4試技への挑戦を求めた。
入場からバーベルを挙げ切るまで、大きな声で叫んで自身を鼓舞するのが特徴の光瀬。第4試技を成功させると、ヒザを叩いて喜びを爆発。目頭からは涙がこぼれていた。
躍進の秘密は、2020年秋に変えたフォーム。男子65㎏級の奥山一輝(サイデン化学)からヒントを得て、グリップをナロー(狭く)で握るフォームに切り替えた。胸の筋力の強さが足りないため、ナローに変えたことで安定性が増したという。
さらに、週3回のベンチプレス練習以外でも毎日ジムに通っている。シャフトを握り、動画で撮影して自身のフォームを徹底的に研究してきた。
今回の涙の理由について、「何度も日本記録に挑戦して、やっと更新できた。たくさんの方の応援や支えの中で有言実行できたことに胸がいっぱいになった」と振り返った。
男子59㎏級で日本記録保持者(140㎏)だった38歳の戸田雄也(北海道庁)を制したことについて、「抜いたり抜かれたりと切磋琢磨してきたし、超えないといけない壁のような存在。負けないように頑張りたい」と光瀬。
一方、今大会131㎏に終わった戸田は光瀬について、「光瀬が力をつけてきていることがとても刺激になった。パラランキングではまだ自分が上なので、必ず次の試合では修正して攻めていきたい」とコメントした。
連盟の「次世代アスリート」として東京パラリンピックやその先に向けて期待がかかる、11歳差のライバル。2人の成長の行方に注目だ。
【大会第1日の優勝者】
女子
41㎏級 佐竹三和子 47㎏
45㎏級 成毛美和(APRESIA Systems)56㎏
55㎏級 中村光(日本BS放送)56㎏
ジュニア55㎏級 見﨑真未 43㎏
61㎏級 龍川崇子(EY Japan) 65㎏
67㎏級 森崎可林 66㎏
男子
49㎏級 西崎哲男(乃村工藝社)136㎏
ジュニア49㎏級 中川翔太 45㎏・ジュニア日本新
54㎏級 市川満典(コロンビアスポーツウェアジャパン)135㎏
59㎏級 光瀬智洋(シーズアスリート)141㎏・特別試技日本新
(校正=佐々木延江 撮影・取材協力=秋冨哲生)