ボッチャ 「火ノ玉ジャパン」 実り多き壮行試合

 ボッチャ日本代表「火の玉ジャパン」の壮行試合が7月13~14日の2日間にわたり東京都武蔵野市で開催され、東京パラリンピックに出場する全10選手が参加、コロナ禍で試合の機会が失われていたなか、選手たちは貴重な実戦の場を得た。

 感染対策として、メディアには2週間の体温測定、健康チェックシートの提出、入場前の抗原検査が課せられ、試合終了後の囲み会見はオンラインで行われた。

投球直後の田中恵子(BC3) 写真・山下元気 

 パラリンピック全競技全種目のなかで最重度の障害の選手が出場するBC3クラスには、ペアの対戦相手として強化指定選手の有田正行(脊髄性筋萎縮症)も参加。計11名の選手とアシスタントたちが熱戦を繰り広げた。

有田正行(BC3) ボールをセットするアシスタントで妻の千穂  写真・山下元気 

 BC3ペア戦では、個人世界ランキング上位の高橋和樹(脊髄損傷)・河本圭亮(筋ジストロフィ)ペアに挑んだ田中恵子(脳性まひ)・有田ペアが第1エンドでジャックボールを9mの遠い位置に置く。これは田中の得意の距離でもある。高橋、河本ペアは対応しきれず、4ポイントのリードを許す。その後は固いボールをランプの上段から転がし相手ボールを弾き出すというBC3特有の迫力ある投球なども見られた。最終エンドで、高橋、河本ペアは、相手のボールに乗り上げるスーパーショットなどを繰り出し猛烈な追い上げを見せるが、5-6で敗れてしまう。

個人戦で対戦するBC3の高橋和樹(左)と河本圭亮 写真・秋冨哲生

 リオパラリンピックで銀メダルを獲得し、東京では金メダルが期待されている団体戦では、BC2の杉村英孝、廣瀬隆喜、BC1の中村拓海、藤井友里子チームが、BC4(脳原性疾患以外のクラス)の江崎俊(筋ジストロフィ)、古満渉(脊髄性筋萎縮症)、木村朱里(脊髄性筋萎縮症)に3-9で敗れた。(団体戦はBC1とBC2の3名で行われ、そのうち1名以上がBC1でなくてはならない。その相手をBC4の選手たちが務めた)。

 だが村上光輝監督は「代表のチームが全部負けた」ことを前向きにとらえている。「負かすくらい全体のレベルが上がっている」「最後の大会で負けて、パラリンピックに進むということで、次の合宿が楽しみ」と語る。
 団体戦の代表チームに勝利したBC4の木村朱里は競技年数は少ないものの、女性選手が必ず出場しなくてはならないというルールのもと、最後に東京パラリンピック代表内定が決まった。その木村が、カメラが居並ぶなかにもかかわらず、ものおじせずプレーし活躍したことでBC4のチームワークがよくなった。そういったプラスの連鎖を引き起こすキーマンがメダル獲得のためには必要だという。

壮行会で挨拶する木村朱里(BC4) 写真・秋冨哲生
江崎駿(BC4) 個人戦9-2で古満に勝利 写真・秋冨哲生
古満渉(BC4) 写真・秋冨哲生

試行錯誤を重ねて

 また「食事をとる時間もなかなかないなかで、捕食をとりながら」の試合であったにも関わらず「スタミナ切れが全くなかった」ことは収穫だった。宿舎でのスタッフワークも含めて「選手の体調管理は万全にいける」という手ごたえを村上監督は感じたという。

 BC3の高橋和樹も、これまでは試合中にエネルギーが消耗してきたと自身で感じていたが今大会中は感じられなかったという。それはコロナ禍で体育館が使えない時期に「体のコンディション、栄養面にも力を入れて、栄養サポートの人に相談したりしてきた」成果でもあった。
 また実家にタラフレックスというマットを6mほど敷いて、少しでもボールを転がせるような環境も作ってきた。

 BC3の個人戦で高橋に7-0で勝った河本圭亮も、映像で世界のトップレベルの戦略などを学んだり、練習が少ないなかでもどうやったら効率よく練習ができるかメニューを考え、試行錯誤してきたという。

狙いを定める河本圭亮(BC3) 写真・秋冨哲生 

 そうやって各選手たちがようやくたどり着いた壮行試合は、実りある場となった。
 その他のクラスの個人戦は、BC4江崎駿9-2古満渉、BC1藤井友里子7-1中村拓海、BC2杉村英孝7-2廣瀬隆喜という結果に終わった。
 試合に敗れたものの廣瀬は「負けてしまったが、要所要所でいいパフォーマンスもあったので決してマイナスの試合ではなかった」と感じていた。

杉村と対戦する廣瀬隆喜(BC2) 写真・秋冨哲生

 監督は「個人戦も全員が最後まであきらめないで、何かしらいいプレーをしようという感じが伝わってきて、パラリンピックでも集中切らさずいいプレーができるのではないか。それができたらメダルは見えるのでは」という思いで試合を見つめていた。

廣瀬と対戦するキャプテンの杉村英孝(BC2) 写真・秋冨哲生

 そして杉村英孝が東京パラリンピックへ向け、キャプテンとしての思いを語った。
 「火の玉ジャパンはこれまでずっと全クラスメダル獲得という目標に向けて取り組んできたので、そのゆるぎない目標を選手、スタッフ、アシスタントのみならず、これまでいっしょに戦ってきたメンバーの思いとともに全力で戦っていきたい」

火の玉ジャパンのメンバーは以下。

BC1 車いす操作不可で四肢・体幹に重度の麻痺がある脳原性疾患のみのクラス。 
 中村 拓海 世界ランキング9位(社会福祉法人愛徳福祉会 大阪発達総合療育センター)
 藤井 友里子 19位(株式会社アイザック)

BC2 上肢での車いす操作がある程度可能で脳原性疾患のみのクラス。
 杉村 英孝 2位(有限会社伊豆介護センター)
 廣瀬 隆喜 23位(西尾レントオール株式会社)

BC3 最も障害の重いクラスで自己投球ができないため、競技アシスタントによるサポートを受けランプを使用し投球する。
 高橋 和樹 14位(株式会社フォーバル) アシスタント 峠田 佑志郎
 河本 圭亮 18位(東郷町施設サービス株式会社) アシスタント 河本 幸代
 田中 恵子 47位(株式会社ゴーゴーカレーグループ) アシスタント 田中 孝子

BC4 筋ジストロフィーなど、BC1・BC2と同等の重度四肢機能障害のある選手が行うクラス。
 江崎 駿 39位(法政大学)
 古満 渉 75位(広島市役所)
 木村 朱里 105位(藤沢市役所)

「火の玉ジャパン」の選手、アシスタント、スタッフたち 写真・秋冨哲生 

(取材・記事/中村和彦、写真取材/山下元気、秋冨哲生、校正/佐々木延江)

この記事にコメントする