関連カテゴリ: BEIJING 2022, COVID‑19感染対策, アルペンスキー, ジャパンパラ, 冬季競技, 重度障害, 長野 — 公開: 2022年2月6日 at 12:33 AM — 更新: 2022年3月10日 at 9:57 AM

「足裏の感覚」を追求し8年ぶりの大舞台へ。東海将彦が再びパラ復帰!

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北京パラリンピック開幕へ1ヶ月と迫る2月4日。2022ジャパンパラアルペンスキー競技大会(菅平高原パインビークスキー場・長野県上田市)は最終日(4日目)スラローム(回転)のレースが行われ、男子立位でトリノ大会(2006年)銀メダリストの東海将彦(トレンドマイクロ)が4日間とも同じクラスの後輩で北京代表をめざす青木大和(EXx)を制して1位をキープし完走。北京出場資格をクリアした。

表彰式
男子立位の表彰式。1位・東海将彦(トレンドマイクロ/右)、2位・青木大和(EXx/左) 写真・内田和稔

「(菅平での)今回は北京大会への出場資格を満たすためスピード系(SG)と技術系(GS、SL)のレースでそれぞれ1レースは完走しなくてはなりませんでした。ピークを合わせたわけではありません」ミックスゾーンでありのままを話す東海。
去る1月、北京への前哨戦となるリレハンメルでの世界選手権へ日本の立位選手のほとんどが参戦するなか、長野にとどまり今大会に出場して目標を達成した。

2月4日、2022 ジャパンパラアルペンスキー立位、東海将彦(トレンドマイクロ)のスラローム 写真・内田和稔
2月4日、2022 ジャパンパラアルペンスキー立位、東海将彦(トレンドマイクロ)のスラローム1本目 写真・内田和稔

東海の左足首は麻痺で力が入らず、つま先・足底からふくらはぎにかけて装具で固定したうえブーツで包み込み固定している。
足首・膝の古傷の痛みと進行を和らげながら「足裏の感覚」を頼りに持ち前のセンスをフルに活かして滑るのが東海のスキー・スタイルだ。

東海の滑り
2月4日、2022 ジャパンパラアルペンスキー立位、東海将彦(トレンドマイクロ)のスラローム 写真・内田和稔

練習中のジャンプで転倒し脊髄を損傷した東海は2003年からパラリンピックを目指し日本代表チームに参加。初めて出場したトリノ大会(2006年)で銀メダルを獲得しデビュー戦を飾ったが、4年後バンクーバー大会(2010年)目前にした2009年、練習中の事故で左足首を骨折、左膝の靭帯を損傷して障害を重くしてしまった。
バンクーバー大会は現地へ行くも出場できず、ソチ大会(2014年)はスラローム10位、平昌大会(前回・2018年)は出場を逃した。長く困難がつきまとう怪我と戦い、装具やブーツの調整に多くの時間を費やしてきた。

現在の足の状態は

ゲレンデのミックスゾーン
ミックスゾーンでインタビューに応じる東海 写真・内田和稔

「長く引きずっていた怪我の痛みや後遺症はゼロではないですが、ブーツのなかに去年から1つ大きな装具を足首の前側から固定し、骨折した部分に余計な負荷がかからないよう工夫しています。痛みは軽減されてきていて、完全に思い切って滑れるわけではないけれども、だいぶ良くはなってきていると思います」

今シーズン工夫した点は

「去年から継続して同じ装具の硬さが違うものだったり、角度がちがうものを10個ぐらい作ってきました。今シーズンの序盤、11月からの雪上、いまも継続していますが、そこの最後の調整に力をいれています」

ミックスゾーンでインタビューに応じる東海 写真・内田和稔

「角度は何となく概ね決まってきたので、もう一個のパターンのやつができあがって、それをもって、北京前最後の合宿で、より良い方で行こうと。そこはたぶん100点を求めてもなかなか完成しないし、不安のまま出発することになってしまうので、7〜8割かなって自分で思えればいいと考えています。あと最後はもう、本当に数値とかデータとかをとっていいものつくったほうがいいんですけど。一回履いてみて、しっくりきたほうで行こうと思っています。これだなっていう感覚的な部分を捉えることに力をいれています。北京前にやれることは限られてしまいますけど、最後そこを調整していこうと考えています」

完成が近い、左足の装具。 本人提供写真

北京へメインの種目は

「(東海の場合)種目っていうのは、ある程度装具を作る時に絞っていきます。(今大会に合わせ)スーパー大回転と大回転を中心にしてきました。スラローム競技に関しては今シーズン3日しか滑っていません。(スラローム用の)新しいスキーは今日が3日目で(これまではメインだった)スラロームは手探りな感じです。北京へのメイン種目としてはスーパー大回転と大回転を(装具とブーツを)しっくりさせて本番頑張りたいなと考えています」

パラアルペン・立位のみどころ

パラリンピック・アルペンスキーは3カテゴリー制(立位・座位・視覚障害)で、障害の程度によりクラスのタイムに係数がかけられ、異なる障害の選手がつぎつぎに滑り降り順位を競い合う。
立位クラス(LW1〜9)は、数字の低い方が障害が重い。雪面と接する足に重い障害のある選手から上腕障害まで多様で数多くの選手がひしめきあっている。
速く滑るには足裏の感性を磨き、生足と装具・ブーツ、スキー板のバランスを細かく調節しては試す。根気と技術が必要だが、その積み重ねや経験を世界最高峰の舞台で試すことができる。

ライバルの海外勢は・・

東海につねにヒントをくれるのは同じトリノ大会からの同期、スラローマー、アダム・ホール(ニュージーランド)。世界から尊敬される、バンクーバー、平昌大会のチャンピオンで、立位最重度のLW1クラス。先天性二分脊椎症に加え膝の半月板損傷と戦っている。

IPCアルペンスキー長野大会に来日したLW1のアダム・ホール(ニュージーランド)。2017年3月 写真・山下元気

勢いのいいのは、1月のリレハンメル世界選手権で成長をみせた2000年生まれのアルトゥル・ボシェ(フランス)。スラロームでアダム・ホールから優勝を奪いシーズン最強となった。東海と同じLW3クラス、先天性痙性対麻痺という両足の麻痺が進行する難病を持つボシェは、スラロームだけでなく、オールラウンダーでもあるようだ。

リレハンメル世界選手権に出場したライバルたちも含め、この2シーズンはアスリートの誰もが長引くコロナ感染症対策の影響をうけている。雪原での練習が少なかったのに加え、パラアルペンのテストイベントは行われなかった。スキー競技に大きく影響を与えるコース状態や雪質情報がない。
一方、中国選手には唯一練習できる場所が大会会場であって、ホストの優位性を活かした活躍が予想される。これまで全く存在を知られていなかったパラウインターに中国の人々が大きな魅力をみつける機会になるかもしれない。

菅平高原、スラロームコース
2022ジャパンパラアルペンスキー競技大会の会場となった菅平高原。長野パラリンピック後に日本のパラアルペンスキーヤーを育んだホームゲレンデ。 写真・内田和稔

「硬い氷のコースが予想されている。現地のコースや雪質についてはオリンピックチーム・スタッフからの連絡を待っている」と夏目堅司アルペン委員長は話していた。

<参考>
2022年1月に行われた2021リレハンメル、スノースポーツ世界選手権公式YouTube動画/男子スラローム1本目
Lillehammer 2021 | Para Alpine | Slalom (m) 1/2 | WPSS Championships
https://youtu.be/W2llvLo7IiI

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