関連カテゴリ: BEIJING 2022, スノーボード, 冬季競技, 義足 — 公開: 2022年3月4日 at 7:19 PM — 更新: 2022年3月10日 at 9:57 AM

スノーボードの展望

知り・知らせるポイントを100文字で

投稿はこちら(メールソフトが開きます)

98年長野オリンピックで採用されたスノーボードがパラリンピックに登場したのは、前回平昌大会(2018年)である。2005年から障害者のスポーツとしてパラスノーボードの先駆者の一人であるビビアン メンテル(NED)らがパラリンピックへの採用へ働きかけを始め、ソチ大会(2014年)で公開競技として実現し、平昌大会から正式種目となった。

本番会場のスノーボードパーク。一人滑るスノーボーダー
北京パラリンピック・スノーボード会場:Genting Snow Park にて、3月3日 写真・中村 Manto 真人

先日閉幕した北京オリンピックでは、平野歩夢(TOKIOインカラミ)が金メダルを獲得したハーフパイプや、大迫力のビッグエアなどスリリングなイメージがあるスノーボードだが、パラリンピックでは、バンク、ローラー、スパイン、ジャンプなど、様々な障害物で構成されたコースでタイムを競い合う「スノーボードクロス(SBX)」と、バンクとともに造られた旗門を回転(スラローム)しながら滑り降りタイムを競う「バンクドスラローム(BSLもしくはDBSL/デュアルBSL)」が正式種目として採用されている。

    クラス分け

また、選手は障害の状態に応じて、上肢に障害のある/SB-UL (SnowBoard-UpperLib)と、下肢に障害があるSB-LL(SnowBoard-LowerLib)に分類される。義足を使用するSB-LLの選手は更に、障がいの度合いに応じて2つのクラスに分けられている。より障害の重いSB-LL1は主に大腿切断の選手が参加し、障害が軽いとされる下肢障害SB-LL2は膝から下の障害で義足や装具を使用する選手が参加する。一枚のボードの上で様々な角度の雪面に対してバランスをとりながらのスピード勝負。特にスノーボードクロスの決勝では複数の選手が同時にスタートして、激しいレースの駆け引きのあるところも、この競技の見どころである。

    女子クラス

前回大会の女子クラスではSB-ULのクラスが開催されなかったため、合計4個のメダルが争われた。今回は2個のメダルが争われる予定である。平昌で開催されたSB-UL1が、選手の数・出身国数で開催基準をみたさず開催されないためである。
実際、現在のワールドランキングにある女子選手は、男子選手が101名に対して34名とわずかだ。日本では、男子6名がランキングしているが、女子のランカーは0。日本障害者スキー連盟の強化指定選手も1名という状況である。以下では日本からも表彰台を目指す男子について、カテゴリー別に触れてみたい。

    上肢障害/SB-UL

上肢障害/SB-ULのカテゴリーは前回平昌においてクロスおよびバンクドスラロームで4位だったヤコポ・ルチアーニに(ITA)および、今期好調のマキシム・モンタッギオー二(FRA)を軸に、地元中国のLijia Jiがどう挑むかが見所となる。17歳で2019年のWPSB世界選手権1位を獲得し、今シーズンが始まるまでワールドランク1位をLuchiniと分けていたLijia Jiは今シーズン11月より中国内モンゴルの中国ナショナルチームの合宿にこもりきりで、参加したレースは国内戦の一度のみ。パラリンピックは今シーズン初の国際試合となる中で、地の利を活かし、母国の期待をエネルギーに変えられるかどうか楽しみである。
日本人としてはこのカテゴリー初参加の大岩根正隆(ベリサーブ)はワールドカップで今季一度表彰台に立っている。上位を目指す力は十分にあると、二星謙一日本障害者スキー連盟スノーボード委員長は語っている。

Jacopo Luchini ITA competes in the Men’s Banked Slalom SB-UL Run 3 at the Jeongseon Alpine Centre. The Paralympic Winter Games, PyeongChang, South Korea, Friday 16th March 2018. Photo: Joel Marklund for OIS/IOC. Handout image supplied by OIS/IOC

    下肢障害・重度/SB-LL1

下肢障害・重度/SB-LL1のカテゴリーは、平昌のクロスで表彰台を占めた三人、マイク・シュルツ(USA)、クリス・ボス(NED)、ノア・エリオット(USA)が引続き強く、今シーズンも安定した戦績を収めている。特にボスとエリオットは二人で今シーズンのオランダ、オーストリア、フィンランドのワールドカップ、ノルウェーの世界選手権、計4回8レースのうち7レースの1位を独占している。
この三人に、割って入る第一の候補がタイラー・ターナー(CAN)である。両脚とも膝から下が義足の選手だが、2022年に参加したワールドカップと世界選手権ではクロスで1位を獲得している。

更にランキング4位、日本チームのキャプテンで二大会連続出場の小栗大地(三進化学工業)がどう彼に割って入るかがとても楽しみである。もう一人の日本人選手、Tokyo2020の陸上に参加した小須田潤太(オープンハウス)も、今季はワールドカップにおいて初の表彰台(3位)を経験した。毎年レベルアップしていると本人が実感している力を是非発揮して欲しい。

Chris Vos NED (L) and Daichi Oguri JPN compete during the Men’s Snowboard Cross Quarterfinal SB-LL1 at the Jeongseon Alpine Centre. The Paralympic Winter Games, PyeongChang, South Korea, Monday 12th March 2018. Photo: Simon Bruty for OIS/IOC. Handout image supplied by OIS/IOC

    下肢障害・軽度/SB-LL2

下肢障害・軽度/SB-LL2のカテゴリーは、平昌 のクロスで金メダルを獲得したマッティ・スール・ハマリ(FIN)、銀メダルのキース・ガベル(USA)は依然、ランキング上位をしめ、今シーズンも安定した力を見せている。彼等以上に調子をあげているように思えるのが、ランキング1位のベン・タドペ(AUS)である。19歳で参加した平昌 ではクロス 10位、バンクドスラロームは7位であったが、今シーズン、1月のスウェーデン、2月のカナダでのワールドカップのクロスでは4レースすべて1位となっている。その他、ソチで金メダルのエヴァン・ストロング(USA)、アレックス・マシー(CAN)など強豪が多いのもこのクラスの特徴である。

日本からは岡本圭司(牛乳石鹸共進)を筆頭に、田淵伸司(兵庫県立和田山特別支援学校)、市川貴仁(エレマテック)の3名がこのカテゴリーに参加する。期待されるのは平昌後の2018年からパラスノーボードに取り組む岡本である。2020年の北米選手権では1位を獲得、今季はオランダでのワールドカップで2位を獲得している。今季オーストリアのワールドカップにおいて3位を獲得した田淵、そして、最後に選考が内定した市川にも上位進出を期待したい。

Ben Tudhope AUS competes during the Snowboard Men’s Banked Slalom SB-LL2 final run at the Jeongseon Alpine Centre. The Paralympic Winter Games, PyeongChang, South Korea, Friday 16th March 2018. Photo: Thomas Lovelock for OIS/IOC. Handout image supplied by OIS/IOC

(編集校正・佐々木延江)

この記事にコメントする

記事の訂正はこちら(メールソフトが開きます)