2022年「ヒューリック・ダイハツ BWF パラバドミントン世界選手権2022」が11月1日から6日までの6日間、国立代々木競技場第一体育館で開催された。世界選手権が日本で行われるのは初めてで、52カ国・地域から298人(うち日本人選手は15人)が参加して22種目が行われた。観客も入り、体育館には連日応援の声が響いた。
パラバドミントン世界選手権は2年に一度の開催でグレードが一番高い大会。本来2021年に開催される予定だったがコロナ禍で一年延期されている。東京パラリンピック以後、日本で開催される初の世界選手権となった。
今大会では、金メダル3個、銀メダル2個、銅メダル5個、合計10個を獲得した日本勢。来年から始まる2024パリパラリンピックへの代表選考大会のシード権獲得につながる結果となった。
金メダル
里見紗李奈(女子WH1/NTT都市開発)
東京パラリンピック金メダリストの里見は、Cynthia Mathez(スイス)との決勝を迎えた。落ち着いた立ち上がりで、序盤に9連続得点で引き離すと、ライン側を狙うショットも冴え21-9で第1ゲームを取った。第2ゲームも危なげなく着実にリードを広げ、21-10で第2ゲームも取り、ストレートで金メダルを手にした。「コートの中がよく見えた。サーブで崩して攻めるというパターンが決まった。今回の大会を通してすごくサーブが上手になったのが今大会の収穫。勝たなきゃいけないというプレッシャーをずっと感じていた中で、しっかり勝てたことが良かった」と里見はホッとした表情で語った。「来年のパラ選考レースでしっかり勝つ。誰かに勝つことが目標というよりも自分のベースをちょっとずつ全体的にレベルアップしていきたい」と、来年に向けた抱負も述べた。
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里見紗李奈・山崎悠麻(女子ダブルスWH1-WH2)
東京パラリンピック金メダルペアの里見紗李奈・山崎悠麻(NTT都市開発)。Emine Seckin(トルコ)・Man-Kei To(ベルギー)との決勝戦は、里見を鼓舞する山崎の「ガンバ」の声と観客の大声援がコートに響いた。中盤から緩やかなラリーを駆使すると徐々にリードを広げ、21-11、21-15で勝利した。「最後まで楽しめた試合だった。攻撃的なローテーションも1本決まって良かった。途中からゆっくりなラリーを作って、見えた時にちょっと速いテンポのラリーをしていく作戦に切り替えてからは怖くなかった」と里見。「世界選手権で初めて優勝できたので本当に良かった。応援の声を楽しむことができた」と山崎は語った。
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梶原大暉(男子WH2/日体大)
東京パラリンピック金メダルの梶原。決勝で当たったKim Jung Jun(韓国)は、東京パラリンピック決勝で戦った相手だ。第1ゲーム序盤は連続ラリーからの攻守が激しく入れ替わる展開。中盤に入り梶原が9連続得点を決めると21-12で押し切った。第2ゲームは序盤からリードを広げ21-11と完勝した。「嬉しいのとホッとした気持ちの両方です。試合では自分のバドミントンができ、しっかり準備をして臨めたこと、応援の力が自分のパフォーマンスを上げてくれたことが大きい。ミスをせずに相手を精神的に追い詰めていくのが自分のバドミントン。ドリブンクリアが効果的に効いたのと素早いチェアワークでシャトルを拾うことができたのが良かった」と嬉しさをにじませた。「やっとちょっと自信がついた。この1年すごく辛かったので、来年以降もこの状況が続くと思うが、しっかりパリに向けて強化していけたらと。いつ負けるか分からない日々が続いたので、試合前も不安だった。これも金メダリスト・世界ランキング1位の運命だと思って、周りの目とかプレッシャーとか気にせずに勝ちだけ負けない、強くなることだけ考えてやっていきたい」とこれからの自分について語った。
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銀メダル
藤野遼(女子SL4/GA technologies)
東京パラリンピックでは5位の藤野。本選手権では決勝まで進み、Helle Sofie Sagoey(ノルウェー)と戦ったが、9-21、21-19、10-21で敗れた。
サーブに変化をつけ攻撃を仕掛けた藤野。相手も強烈なスマッシュやクロスを繰り出して応戦。スタミナには自信のある藤野は最後まで食らいつくが、最後は相手のペースに押し切られてゲーム終了。藤野は「1セット目はストレート負けするかと思ったが、2セット目は盛り返せた。3セット目は4−2までは良かったが相手に読まれてばかりでパワーで押し込めなかった。ただやりきったので悔いなく終われた。ただ悔しかったので、技術を磨いて強くなりたい」と述べ、「24時間バドミントンのことを考えるくらいのことをやって、トレーニングも積んでパワーで押し負けて負けないようにしたい」とパリに向けての意気込みを語った。
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豊田まみ子(女子SU5/ヨネックス)
東京パラリンピックには出場できず、会場でボランティアをしていた豊田。準決勝では亀山楓(高速)との日本人対決を制し、Manisha Ramadass(インド)との決勝に挑んだ。お互いの緩急使いこなすショットで点の取り合いだったが、終盤に突き放されて15-21で第1ゲームを奪われた。第2ゲームもスマッシュとドロップショットの応酬で息詰まる戦いが続いたが、最後5連続で点数を取られ15-21で敗れた。「点差が離れて自分がミスしてしまった、そのあたりの駆け引きが上手くいかなかった。攻めるショットが上手く行かなかったり、ショットが甘く入ってしまったりしたので、もう少し自信を持って攻めていけば良かったのかと感じた」と決勝を評価した。「気持ちの面で安定してきているなと感じている。合宿からの自信がついてきている。この自信を活かしてパラ選考レースを戦い抜きたい」と来年に向けた抱負を口にした。
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銅メダル
⻄村啓汰(男子WH1)
世界選手権初出場の西村、準々決勝では、優勝経験のあるThomas WANDSCHNEIDER(ドイツ)に競り勝ち、準決勝に進んだ。「表彰台は嬉しかったが、準決勝で負けてしまって悔しい。苦い思い出になった」
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山崎悠麻(女子WH2/NTT都市開発)
東京パラリンピックでも銅メダルだった山崎。「甘い球になった時にしっかり落とす、アウトに出さないでラリーを続ける、基本的なところをもう一度見直してまた来年に向けて挑みたい」
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藤原大輔(男子SL3/ダイハツ工業)
東京パラリンピックでは混合ダブルスSL3-SU5に杉野明子選手とペアを組んで出場し、銅メダルを獲得している藤原、「結果的には負けたけど、紙一重だった。20−19のところでスマッシュを打つことができたのは今大会での成長。失敗したが、ラリーをせずに無理やり打っていくスタイルが僕がやりたかったこと」
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今井大湧(男子SU5/ダイハツ工業)
東京パラリンピック5位の今井「自分のプレーを先に出してそれに相手がついてくるのが良いが、今日の試合は自分が合わせにいってしまった。自分先行でいくのが今後の課題。1試合1試合を大切に勝ちに貪欲になってやれば良い結果はついてくる。来年の選手権には今回の悔しい気持ちをしっかり持ってパワーアップしていきたい」
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亀山楓(女子SU5/高速)
東京パラリンピック4位の亀山「一球一球大切に何がなんでも食らいつこうという気持ちではやっていたが、気持ちで押されてしまって自分の気持ちが引いてしまったところがあった。日本開催で応援があってここまで戦ってこられたので感謝している」
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ベスト8
長島理(男子WH1/LIXIL)
2005年以降9大会連続で世界選手権に出場し、東京パラリンピック5位の長島は、世界のレベルが上がっていることを肌で感じている。「今の実力差が出てしまった試合。トップ4の選手に食らいつくくらいのことをやっていきたい。自分のベースアップを図っていきたい」
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村山浩(男子WH1/SMBCグリーンサービス)
東京パラリンピック4位の村山「東京パラと同じ場所で観客ありなので優勝を狙っていたがメダルなしに終わり残念」
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松本卓⺒(男子WH2/創政建設)
世界選手権初出場の松本「梶原選手と準決勝で戦いたかった。その気持ちが先走ってしまったかも。クリアの打ち分けとドロップの精度を上げていきたい。今まで以上にトレーニングをしてショットの精度を磨いていきたい」
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全試合の終了後に、今大会の日本勢について平野一美理事長が総括した。 金3個、銀2個、銅5個のメダルを獲得したことについて、「地元開催で東京パラや9つの国際大会を経てからの結果になるので、ある程度結果は読めていて予想の範囲内だと思っている。許容範囲内で計画的に取れたと考えている」と評価した。
パリパラリンピック出場をかける来年のパラ選考レースにおいて、一人でも多くの選手たちが代表に内定できるような活躍を期待したい。
(校正・久下 真以子、佐々木延江)