関連カテゴリ: World Paratriathlon Series, トライアスロン, ブラインドスポーツ, 取材者の視点, 地域, 夏季競技, 女子, 横浜, 障害 — 公開: 2021年5月17日 at 5:52 AM — 更新: 2021年5月31日 at 10:09 PM

日本で唯一の「盲ろう」トライアスリート、中田鈴子が自己ベストを更新!

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 日本で唯一、視覚障害と聴覚障害を抱える「盲ろう」のトライアスロン選手、中田鈴子が16日、「横浜パラトライアスロン」の一般の部・エイジグループに出場。前回大会より9分以上タイムを縮め、1時間40分8秒で自己ベストを更新した。

バイクパートを走る中田鈴子(後)、脇真由美(ガイド/前)。沿道は審判員のみが見守る 写真・秋冨哲生

 横浜でのエイジパラトライアスロンは、オリンピックのトライアスロンの半分の距離(スプリント/25.75km)スイム750メートル、バイク20キロ、ラン5キロを連続して行い、そのタイムを競う。

 中田は耳が完全に聞こえず、目は向かい合った1メートル先の相手の顔が見える程度の「弱視ろう」と呼ばれる状態で、視覚障害者のカテゴリーに出場。視覚障害者のランナーにはガイドが付き、スイム・バイク・ランの全てを一緒に行う。

スイムからバイクへトランジッションする中田鈴子 写真・秋冨哲生

 京都を拠点とする中田。県外への移動による感染リスクを抑えるため、急遽、いつも一緒に練習を行うガイドの横浜入りを諦め、関東拠点のガイドへと変えた。「ガイドが変わることになって少し不安があったけれど、上手くいって安心しました」と中田。

 隣で支えたガイドは、リオパラリンピック日本代表の円尾敦子のガイド経験もあるベテランガイド、脇真由美が務めた。自身もトライアスリートとして数々の大会出場経験を持つ。

フィニッシュへ向かう中田と脇ガイド 写真・山下元気

「練習なしでぶっつけだったので不安だったと思います。でも1年前に別のレースで一緒に走った頃と比べて、スイムが早くなっていたり、バイクは横振りがなくなって、まっすぐ乗れるようになっていたりと、格段に変わっていました」と、中田の成長に太鼓判を押す。

フィニッシュで健闘を讃え合う中田とガイドの脇真由美 写真・秋冨哲生

 2人のやりとりを嬉しそうに見守るのは、千原寿一コーチ。フルマラソンに出場するなど、もともと「ラン」に強みを持っていた中田だったが、5キロのスプリントレースに適した走りに合わせようと、トライアスロンではスピードを強化。トレーニングには上り坂を取り入れたり、山に登ったりして、体力強化も行った。コロナ禍で、トレーニングを行う時に必要な手話通訳や介助者の支援がなかなか得られず、自主練習を続ける日々もあった。

「練習は生活リズムのひとつ」と、制限はあっても、コロナを言い訳にはしなかった。「今日は調子いい。すずちゃん暑いの嫌いだからね」と千原コーチ。気温23℃のベストコンディションも、中田の努力に味方した。

レースを終え、ミックスゾーンで撮影。左から、千原寿一(コーチ)、中田鈴子、脇真由美(ガイド)、原田妙子(手話通訳)と一緒に 写真・秋冨哲生

 横浜パラトライアスロンに初めて出場した2015年のタイムは1時間56分19秒。そこから6回連続で出場し(2020年はコロナ禍により中止)、着実にタイムを縮めてきた。「(1時間)40分を切ったら、世界選手権に出られるかな」。中田が日の丸を背負う日も近そうだ。

(写真取材・秋冨哲生、山下元気、校正・佐々木延江)

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