関連カテゴリ: IDクラス, Tokyo 2020, チームジャパン, デフスポーツ, ブラインドスポーツ, 地域, 夏季競技, 横浜, 水泳, 重度障害 — 公開: 2021年6月7日 at 4:04 PM — 更新: 2021年6月15日 at 2:37 AM

東京パラへ80日。WPS公認第24回日本知的障害者水泳選手権が閉幕

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6月6日、横浜国際プール(横浜市都筑区)で、第24回日本知的障害者水泳選手権が開催された。感染対策のもとで2年ぶりとなった。
大会には、知的障害のほか、聴覚障害、視覚障害、肢体不自由が参加し、例年の約半数の207名となった。
知的障害の男子50m平泳ぎS14で山口尚秀(四国ガス)が、女子100m背泳ぎS14・芹澤美希香(宮前ドルフィン)のほか、視覚障害の女子50m自由形S11・石浦智美(伊藤忠丸紅鉄鋼)が日本記録を更新。この1日で日本記録6と大会新記録14が更新された。

世界記録表彰式

山口尚秀(四国ガス)の世界新記録(5月21日、男子100m平泳ぎ1分4秒00)表彰式が6日午後に行われた。 写真・秋冨哲生


男子100m平泳ぎワールドレコード保持者の山口尚秀は、2週間前に開催されたジャパンパラ水泳競技大会で保持する世界記録を更新した。この日は、世界記録を祝うセレモニーが行われたが、スプリント種目として国内で取り組む50m平泳ぎでも29秒49の日本記録を更新した。

「推薦決定書も受け取って知的(障害)の代表として自覚を持って取り組みたい。(50m平泳ぎは)国内の種目で世界大会にはないけど、しっかり大切にしていきたい。初心を忘れずにいけば自己ベストを狙えると思う。水泳というのは、ライバルとの競い合いであるし、個人での競い合いであると実感した」レース後のインタビューで山口は話していた。

男子50m平泳ぎS14を泳いだ山口尚秀 写真・秋冨哲生

また山口と共に日本代表を担うのは、東海林大である。男子200m個人メドレー・ワールドレコード保持者の東海林と山口は共に初出場のパラリンピックに世界記録を賭けて挑もうとしている。

混合56ポイントフリーリレーでスタートする東海林大。フリーリレーでは山口とともにチームを組む機会ができそうだ 写真・秋冨哲生

 「楽しく泳げたが、自分らしさが足りなかった。大会の1週間前にはきつい練習が始まっていた。ここぞ踏ん張りどきできつい中でも練習をやり切れたと思う。200m個人メドレーでは隣に(デフリンピックメダリストの)茨選手がいましたが、自分の泳ぎができた。タイムは気にしなかった」と、東海林。茨隆太郎(SMBC日興証券)はデフリンピック日本代表選手。今年の年末にブラジルで予定されていたデフリンピックもまた来年5月に1年延期されている。

自国開催への目標、男子金2、リレーでメダル、女子決勝進出/谷口由美子専務理事


知的障害は、シドニーパラリンピック(2000年)後はクラスの世界大会だけだったが、ロンドンパラリンピック(2012年)から復帰した。復帰と同時に田中康大が男子100m平泳ぎで世界記録での金メダルを獲得した。リオパラリンピック(2016年)では競泳全体で金メダルがなかったが、2019年の世界選手権に出場した東海林大と山口尚秀が世界記録を樹立して金メダルを獲得。芹澤美希香が女性アスリートとして初めて派遣標準を切って出場した。数々の遠征や合宿を通じて成長が著しく、女子に関しては特に力をいれていた強化が実ったという。

日本知的障害者水連盟で強化にあたる泳谷口裕美子専務理事 写真・秋冨哲生

日本知的障害者水泳連盟で強化にあたる谷口裕美子専務理事は、「2週間の疲れのあるなかで頑張ったと思います。走行会では代表のチームユニフォームに袖をとおしていい顔をしていました」

ーー1年間延期での選手たちのモチベーションどうやって維持しましたか?

「先が読めないことは知的障害の選手にとって不安定要素となります。パラリンピックも行われるかわからないというところでモチベーションは普通の選手より下がる。想像力とか工夫が苦手なため、延期となった東京パラに向け、モチベーションを維持するために昨年4〜5月の緊急事態宣言後も人数を絞ってすぐに合宿を始め、できるだけ定期的に強化活動やっていく姿勢をみせて、彼らの居場所、目指すべきところを見失わないよう強化活動してきました」

ーー今後の競技環境について

「知的はパーソナルコーチがいない。スイミングであったり、健常の中高生と一緒にやっていたりという現状であることが多い。生活が大事ですから、慣れた環境で落ち着いて生活を組み立てる、地に足をつけて練習するというのが大事なのですが、個々に見ていくためには合宿などで中央に呼んだほうがいいと思います」

ーー家族の帯同についてどうお考えでしょうか。


「知的は重度障害の扱いになりますが、家庭の中で見せる顔と代表チームの中で見せる顔がちがいますので、家族と離れてチームで一体化してやっていくのもいいんじゃないかと思っています」

芹澤美希香、平泳ぎ
女性アスリートとして初めて派遣標準を切って世界選手権に出場した芹澤美希香(宮前ドルフィン)、5月21日、ジャパンパラ水泳競技大会(東京パラ選考会)女子100m平泳ぎ 写真・秋冨哲生

1日の大会で、レースの合間に5月24日に発表された「東京パラリンピック水泳日本代表内定選手の東京2020パラリンピック水泳競技日本代表推薦決定書授与式」、世界記録を更新した山口尚秀(四国ガス)のお祝いのセレモニー、パラリンピックで出場が予定されるリレー種目のエキシビションが行われ、コロナ禍で延期となった東京パラリンピックに向け最後のWPS公認大会として大きな役割を果たした。

(写真取材・秋冨哲生)

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