Tokyo 2020, 取材者の視点, 東京, 馬術, 馬術ニュース — 2021年8月27日 at 6:29 PM

パラ馬術、グレードIV、Vの個人メダルが決定

8月26日(木)、東京のJRA馬事公苑で2020年東京パラリンピックの馬術競技が開幕した。競技初日となるこの日は5つのグレードのうち、グレードII、IV、Vの個人メダルを争うインディビジュアルテストが行われた。この競技の各グレード上位8人馬は団体戦の後に行われるフリースタイル(自由演技)決勝に進出する。

グレードIV、サンネ・ヴォーツが待望の個人競技金メダル

Sanne Voets&Demanteur
グレードⅣ金メダリスト、Sanne Voets&Demanteur(オランダ)
Photo Credit:FEI

※グレードⅣ:馬場の大きさは20x60メートル。審査項目数は29項目、総合観察4項目(各10点満点)審判員は5名
※経路図 https://jrad.jp/wp/wp-content/uploads/2019/11/Ind_4-1.pdf

グレードIV世界ランキングトップ5のうち最初に登場したのはRodolpho Riscalla (ブラジル)& Don Henrico (18歳/牡/ハノーバー)。自国開催だった前回2016年リオパラリンピックで個人10位に終わって以来トレーニングと馬の選考を重ね、今回はメダルをという気持ちで挑んだ。実はRiscalla選手、本来は2016年リオオリンピックに向けトレーニングをしていた熱心な馬術家。しかし直前に父を訪問するためブラジルに帰国した際、細菌性髄膜炎に感染。体調回復の後、パラリンピック出場に方向転換を余儀なくされた経験を持つ。
演技は、数項目で5人の審判が6.5点から8点と分かれた意見をもった箇所もあったが、他は順当に7点以上の結果。2倍得点となる7項目ではすべての審判が7.5点以上をつける高評価を得て、74.659%の結果を収めた。

7番手に登場したのはランキング4位、スウェーデン代表Louise Etzner Jacobsson & Goldstrike B.J.(10歳/セン/KWPN)。最初の停止や途中の移行で得点のばらつきがみられたが、平均的には7点台が多く、最終的に72.634%を記録。

続く8番手に登場したのはランキング5位、ベルギー代表Manon Claeys & San Dior 2(13歳/セン/オルデンブルグ)。最初の停止、敬礼は6点台があったが2倍係数の項目で7点から8点を獲得、この時点で72.853%の2位につけた。

9番手は本命グレード別世界ランキング1位、オランダ代表Sanne Voets & Demantur (13歳/セン/KWPN)。 さすがのベテラン、最初の停止から8点台のつく発進。安定した演技を終始披露。総合評価は2倍係数の2項目(「従順性」「騎手の馬術的理解力と技術力、正確さ」)は8.5点が複数つくなどして堂々の76.585%を記録。
最後に登場したのはランキング3位、アメリカ代表Kate Shoemaker & Solitaire 40 (14歳、セン、ハノーバー)。全体的に7点台が多く、移行や図形の正確さなどの項目で減点がみられ、惜しくも70.854%に終わっている。

この結果、金メダルはSanne Voets & Demantur(オランダ)、銀メダルはRodolpho Riscalla & Don Henrico (ブラジル) 、銅メダルはManon Claeys & San Dior 2(ベルギー)に確定した。Sanneはヨーロッパ選手権、世界選手権につぐ金メダルで個人競技3冠を達成した。

Grade IV medalists
グレードIV個人競技メダリスト
Photo Credit: FEI

金メダリストSanne Voetsのコメント
「暑さの中でDemanturが本当によく頑張ってくれました。体感温度は、今日44度くらいあるのではないかというくらいの暑さでした。準備運動中にできるだけ馬体を冷やすようにしていたのですが、ウォームアップというだけに言葉そのまま、温まった、そんな感じでした。クーリングテントに直行してそこから馬場に入り、Demanturは準備万端という姿勢を見せてくれました。
演技中は、この素晴らしい馬場の中でのすべての瞬間を楽しんでいました。終わった時にはふーっとプレッシャーが抜けた気がしました。想像した通りに、そして自分が出し切りたい演技ができた、満足感がありました。
このスポーツでは馬にとって、良いライダーでいられるかが大事なんです。観客や審判やコーチがどう思うかよりも最終的には馬がどう思ったか、それが肝心だと思うんです。そう、馬が私をどう採点しているか、それが大切だと思います」

銀メダリストRodolpho Riscallaのコメント

グレードⅣ銀メダリスト、Rodolpho Riscalla & Don Henrico(ブラジル)
Photo Credit: FEI

「感動しました。たくさんの練習を重ねた結果で、今でも信じられません。出番のあと結果を待つのはいつもつらいところがありますが、得点を聞いた時にはトップ5には入賞できるだろうと思ったんです。僕とこの馬にとっては高い方のスコアだったので、本当にすごく満足しています。
2024年パリ大会では五輪とパラリンピック両方を出場目標にしています。もしかしたら来年の世界選手権も(パラ馬術と馬場馬術)両方にでるかもしれません。そのために育ててトレーニングしている牝馬がいます。今回はまだ準備できていなかったので連れてきませんでした。正直にいえば、東京ではさすがに無理だったと思います。オリンピックにまず1頭で出場して、ヨーロッパに戻ってまた別の馬でパラリンピックに出場。プールに泳ぎに行くようなのとは全然違って、毎回馬のために600キロくらいの道具などを持ち運ばなくてなならないんです。パリではなんとか実現したいですね。両方出場することができる、そして成長していくことができるというのを見せたいなと思っています」

なお、日本からは高嶋活士(千葉県出身。コカ・コーラ ボトラーズジャパン ベネフィット/ドレッサージュ・ステーブル・テルイ)&Huzette(9歳/牝/KWPN)が15人馬中14番目に演技。65.951%を記録し14位に終わっている。
「初めてのパラリンピックは本当に楽しかったです。東京開催ということもあり貴重な経験ができました。
ヒュゼットビーエイチは臆病な性格ですが、集中して最後まで演技してくれました」

グレードⅣ 高嶋活士(コカ・コーラ ボトラーズジャパン ベネフィット/ドレッサージュ・ステーブル・テルイ)は14位。 画像提供:一般社団法人 日本障がい者乗馬協会

グレードIVフリースタイル(自由演技)進出トップ8人馬
Sanne Voets & Demantur(オランダ)
Rodolpho Riscalla &Don Henrico(ブラジル)
Manon Claeys & San Dior 2(ベルギー)
Louise Etzner Jacobsson & Goldstrike B.J.(スウェーデン)
Sussane Jensby Sunesen & Leeds (デンマーク)
Saskia Deutz & Soyala(ドイツ)
Kate Shoemaker &Solitaer 40(アメリカ)
Pippa jonson-Dweyer & Just In Time (南アフリカ)

グレードVを制したのはベルギーのジョルジュ

Tokyo 2020 Paralympic Games – Individual Grade V
Michele George riding Best of 8 BEL. Gold medal position.
Photo Copyright :copyright: FEI/Liz Gregg

※グレードV:馬場の大きさは20×60m。審査項目は29項目、総合評価4項目。そのうち係数が2倍になる項目は9つ。
経路図 https://jrad.jp/wp/wp-content/uploads/2019/07/Ind_5.pdf
グレードVは、グレード別世界ランキングトップ3のSophie Wells(イギリス)、Frank Hosmar(オランダ)と、Michele George(ベルギー)の競り合いに注目が集まる。

最初に4番手で登場したのは、Michele George & Best of 8 (11歳/牝/ハノーバー)。最初の入場、停止の項目から7.5点や8点の高得点、審判に良い印象を与えてスタート。8項目目で係数2倍の常歩ピルエット(馬の後肢を軸に回転させる運動)で6.5がいくつかついたものの、ほかはすべて7点以上。「騎手の馬術的理解と技術力、正確さ」の総合評価は9点も含む高評価を得て、76.524%を記録した。

ランキングトップ3、続いて登場したのは9番手Frank Hosmar & Alphaville(16歳/セン/KWPN)。最初の停止、敬礼の項目や9項目目の伸縮速歩(しんしゅくはやあし)で4点や5点が含まれ評価が分かれたものの、全体的には7点台や8点台のスコア。73.405%を記録。George & Best of 8に3%及ばず、2位につけた。

そして12番手に登場したのが、前回2016年リオパラリンピックの金メダリスト、Sophie Wells & Don Cara.M (12歳/セン/NRPS)。直前に本命の馬が怪我をし、補欠登録馬に乗り替わっての演技。王者らしくスタートから7.5点や8点を順当に記録。惜しくも19項目目の伸縮常歩(しんしゅくなみあし)で4点台がつく演技となってしまったが、その後持ち直して7点台や8点の演技に回復。さすがのベテラン、「騎手の馬術的理解と技術力、正確さ」は8点や8.5点の高評価がついた。最終得点は74.405%とGeorgeには及ばなかったものの、Hosmarを抜いて2位につけた。
そして残る2人馬の演技が終了、このままメダルが確定した。

グレードVメダリスト
Photo Credit: FEI

金メダリストMichele Georgeのコメント
「素晴らしい演技でした。入場した瞬間からBest of 8の調子が良くなっていくのがわかりました。楽しんで最後まで演技していたようです。私も楽しみながら演技していました。言葉に表せない気持ちです。
(ロンドン、リオの経験は)少しは影響があったかもしれません、どんな感じなのか想像できたので。今回は違う馬で、まだ7回しかコンビを組んで競技に出ていません。あと、ライダー側からすれば、パラリンピックに出場するという意味やパラライダーであることの意識が違うかなと思います。
(施設は)本当に素晴らしいですね。このような所でトレーニングすることはなかなかできないです。(観客はいなくても)たくさんの人、そして照明は独特な雰囲気です。でも、Best of 8は女王のように軽やかに踊ってくれました。なんともいえない、うれしい気持ちです」

グレードVフリースタイル進出8人馬

Michele George & Best of 8(ベルギー)
Sophie Wells & Don Cara.M(イギリス)
Frank Hosmar & Alphaville(オランダ)
Regine Mispelkamp & Highlander’s Delight(ドイツ)
Natalia Martianova & Quinta(ロシアパラリンピック委員会)
Lena Malmstrom & Fabulous Fidelie(スウェーデン)
Kevin Van Ham & Eros Van Ons Heem(ベルギー)
Amelia White & Genius 60(オーストラリア)

競技日程・結果 https://olympics.com/tokyo-2020/paralympic-games/ja/results/equestrian/paralympic-schedule-and-results.htm

詳細競技結果 https://tokyo2020.live.fei.org/
グリーンチャンネル放送予定 https://www.greenchannel.jp/program/tokyo2020_paralympic.html

パラ馬術とは? https://www.parasapo.tokyo/sports/equestrian
一般社団法人 日本障がい者乗馬協会 (JRAD) https://jrad.jp/

(取材協力 一般社団法人日本障がい者乗馬協会 岡崎千賀子、FEI/Rob Howell、編集・校正 望月芳子)

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