関連カテゴリ: IDクラス, チームジャパン, ブラインドスポーツ, 夏季競技, 水泳, 重度障害, 静岡 — 公開: 2023年3月10日 at 9:30 AM — 更新: 2023年3月15日 at 9:16 AM

パリを目指す顔ぶれが決まる選考会で、パラ水泳の魅力が渦巻く!

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パラ水泳、静岡県富士市で開催された選考会・春季チャレンジレースで7月の世界選手権と10月のアジアパラの日本代表が選考された。パリパラリンピックへとトップスイマーたちが向き合い始めた。

コロナ禍に観客を奪われた東京パラリンピックから1年半。本来のパラリンピックの姿が戻るであろうパリパラリンピックへの折り返し地点を迎えた。パラスイマーたちのスイッチも入ったようだ。
3月4日〜5日の週末に静岡県富士市で開催された選考会・春季チャレンジレースで、今年7月の世界選手権(イギリス・マンチェスター)への日本代表(24名)、10月のアジアパラ(中国・杭州)への日本代表候補(47名)が選出された。

山口尚秀(四国ガス)男子100メートル平泳ぎSB14、世界記録更新(01:02.75)の泳ぎ 写真・秋冨哲生

100メートル平泳ぎで、続々と記録が更新された!

大会全体で世界記録1、アジア記録2、日本記録13が更新されるなか、100メートル平泳ぎでは、山口尚秀(SB14・四国ガス)が世界新(01:02.75)、視覚障害で今大会初出場の石原愛依(SB13・神奈川大学)が日本記録を9秒更新する(01:10.09)など世界を揺るがす動きがあった。

写真=石原愛依(神奈川大学)のデビュー・レースとなった100メートル平泳ぎSB13( 01:10.09) 写真・秋冨哲生)

また福田果音(SB9・KSGときわ曽根)がアジア新記録(01:25.55)、芹澤美希香(SB14・宮前ドルフィン)と由井真緒里(SB5・上武大学)が日本記録を更新し、それぞれ派遣標準をクリアして世界選手権、アジアパラ日本代表に選出された。

芹澤美希香(宮前ドルフィン)の100メートル平泳ぎSB14、日本新(01:17.54) 写真・秋冨哲生

知的障害の芹澤は、「前半から飛ばして泳ぐ練習をしました。最初は後半に疲れてしまうことがありましたが、練習していくうちに後半ももつようになりました。世界パラで決勝に進み、自己ベストを出し高い順位で終わりたい」と話し、コロナ禍でプールの使用制限があるなか、同じ宮前ドルフィンの先輩の林田泰河とともに強化してきたことが成果につながった。
谷口裕美子コーチは「キックが強く、23歳という年齢になり身体がしっかりとしてきた」と芹澤について評価した。

アジア記録の福田は「目標だった自己ベストと派遣突破が達成できてよかった。海外合宿や健常者の大会に出場して、コーチと相談しながらあげてきました」とこの大会に向けて練習してきたことを語っていた。

南井がアジア記録!

200メートル個人メドレーSM10では、南井瑛翔(近畿大学)が02:22.15の自己ベストでアジア記録を更新、派遣標準も突破して日本代表に選出された。

南井瑛翔(近畿大学)が200メートル個人メドレーSM10でアジア記録(02:22.15)を更新 写真・秋冨哲生

1日目メイン種目のバタフライS10で派遣標準を切れなかった南井瑛翔(近畿大学)は、「気持ちを切り替えのぞんだ。個人メドレーの練習はしていなかったが、背泳ぎと平泳ぎを専門とする同期や後輩に泳ぎを教えてもらい速くなった」とベストを出せた理由について分析した。
左足を鍛えるため義足のフィンを作ったという南井は、右足だけに頼っていたが今後は左足を使って泳ぐトレーニングを行っていく。

窪田・萩原がともに初の世界選手権へ

千葉出身の同じクラスのライバルどうし、窪田幸太(NTTファイナンス)と萩原虎太郎(セントラルスポーツ)。
大会1日目、100メートル背泳ぎS8で窪田が自己ベストを2秒近く更新するタイムで日本新を樹立、萩原も派遣標準を突破しともに世界選手権代表入りが決まった。

左から、窪田幸太(NTTファイナンス)と荻原虎太郎(セントラルスポーツ)2021年8月24日、東京パラリンピック会場で 写真・秋冨哲生

2日目、萩原は200メートル個人メドレーSM8で日本新を樹立し2種目での派遣標準突破となった。
二人は東京パラに向かう2019年世界選手権(ロンドン)への出場を逃してから試行錯誤が続いた。ともに東京パラリンピックへ出場したが、昨年の世界選手権(マデイラ)は逃し、今回マンチェスターが初の世界選手権出場となる。競い合う二人が世界へ舞台を移す。

「石原はクラス分けを得たら非常に大きな戦力になるだろう」

1日目の100m平泳ぎでパラ・デビューを果たした石原愛依(神奈川大学)は2日目、200m個人メドレーSM13(弱視)で世界記録より6秒速いタイム(02:15.00)で泳ぎ、会場を沸かせた。

200メートル個人メドレーSM13を泳ぐ石原愛依(神奈川大学)そのタイム02:15.00はクラスの世界記録より6秒も速い 写真・秋冨哲生

「健常にいた選手がパラへ来るのは特別なことではないが、オリンピックをめざせる選手が入ってくるというのはレアなケース。石原は非常に鍛錬され、磨き上げられており、水泳の技術面に関して良い水の感覚をもっている。S13クラスのトップで必要な技術をもっている。彼女が戦ってくれることでパラリンピックのハイパフォーマンスが届けられると思います」と、上垣匠パラ水泳日本代表ヘッドコーチは石原を評価。(クラス分けに)必要な書類が調い次第、国際クラスを受けるためワールドシリーズへのエントリーを行う予定となっている。

競技後のインタビューに応える石原愛依 写真・秋冨哲生

石原は7月の(健常の)世界水泳2023福岡大会への出場も目指しており、4月に選考会を控えている。今後はオリンピックとパラリンピックの両方の目標を持って活動する。

木村、富田はパリへ意欲みせる。

1日目、木村敬一(東京ガス)と富田宇宙(EY Japan)は100メートルバタフライS11、50メートル自由型S11に出場。ライバル対決はともに木村が征したが派遣標準は富田も危なげなく通過した。

木村敬一(東京ガス)と富田宇宙(EY Japan)は100メートルバタフライS11 写真・秋冨哲生

試合後のインタビューで木村は「東京パラで金メダルが達成できものすごく満足した。いま同じことをやって金メダルは考えていません。泳ぎが壊れても新しい取り組みができればという気持ちで泳いでいます。(世界選手権で)泳ぐからには0.01秒でも速く泳ぎたい、そのためにどうできるかみんなで考えながら目指したい」と話した。

富田は「(今日の)タイムには納得していない。記録はいつも狙っている。ひと試合ごとに自分の成長を確認したい。パラリンピック1年前の世界選手権は前回とは比べ物にならないだろう。選手が集まってくるなかでしっかりと自分を位置付けられる大会にしたい。木村選手と切磋琢磨しながら世界を目指していけたらエキサイトできると思う」と話した。

鈴木はアスリート人生の終活。

鈴木孝幸(GOLDWIN) 写真・秋冨哲生

鈴木孝幸(GOLDWIN)はパリへ意欲を見せてくれた。東京パラ後はイギリスから帰国し、練習拠点を東京のNTC(ナショナルトレーニングセンター)へ移した。
「(今大会は)派遣標準を切り、世界選手権でいい泳ぎができるための位置付けで泳ぎました。東京パラが年齢的に最後の大会と考え泳いでいたが、たくさんメダルもとれ、応援も増えました。もう少し泳ぐ姿を見せたいと思っています。パリは「アスリート人生の終活」だと思っています。もちろん、決勝に残るとかじゃなくて、メダル、できれば金メダルをしっかりと狙います」と鈴木は語った。

(校正・望月芳子)

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