関連カテゴリ: IDクラス, ジャパンパラ, ジャパンパラ水泳, デイレポート, デフスポーツ, ブラインドスポーツ, 今日の注目記事, 切断者, 国内大会, 夏季競技, 横浜, 水泳, 神奈川 — 公開: 2023年9月17日 at 12:20 AM — 更新: 2023年9月24日 at 11:35 AM

世界と向き合うパラスイマーたちが勢揃い!横浜で「WPS公認ジャパンパラ水泳競技大会」が開幕!

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東京パラリンピックから2年、パリパラリンピックまで1年。パラスイマーたちは世界と向き合い、布石として置かれた世界選手権やアジア選手権に出場し自らを一歩ずつ前に進めようとしている。さまざまな障害のあるアスリートが織りなす最高峰の水泳カルチャーがここにある。

「WPS公認ジャパンパラ水泳競技大会」が9月16日、横浜国際プール(横浜市都筑区)で開幕。18日まで3日間、約270名が出場し予選・決勝の競技が行われる。厳しい標準記録をクリアしたスイマーが参加する国内最高峰のパラ水泳である。東京パラリンピックから2年が過ぎ、1年と迫るパリへ主力となる選手から、東京でパラリンピック初出場した選手、それに続く選手など、身体・知的障害のある選手が集う。
また例年この大会には聴覚に障害のある選手もエントリーしており、2025年・東京開催を控えるデフリンピック有力選手の泳ぎに触れることもできる。

初日は、地元・横浜市の川渕大耀(宮前ドルフィン)が男子400m自由形S9アジア新記録を樹立したほか、由井真緒里(上武大学)が女子200m自由形S5で、小池さくら(大東文化大学)が女子100m背泳ぎS7でそれぞれ日本新記録を樹立。また10の大会新記録が更新され勢いのあるスタートを飾った。

アジア記録・川渕大耀

男子400m自由形S9で自身のアジア新記録を更新した、川渕大耀(宮前ドルフィン)、2位・岡島貫太(日本福祉大学)、3位・大内秀真(京都文教高校)の表彰式 写真・内田和稔

日本記録・小池さくら

女子100m背泳ぎS7で自身の日本記録を更新した、小池さくら(大東文化大学) 写真・内田和稔

日本記録・由井真緒里

女子200m自由形S5で自身の日本記録を更新した、由井真緒里(上武大学) 写真・内田和稔

大会記録・窪田幸太

窪田幸太(NTTファイナンス)は、2018年アジアパラ(ジャカルタ)のメドレーリレーで背泳ぎパートを務めた。それから100m背泳ぎを得意とする選手に成長し、2年前、東京パラリンピックに初出場。この8月、イギリス・マンチェスターの世界選手権で銀メダルを獲得した窪田は、全盲の木村敬一に続く新たな日本のエースとして加わった。この日、会社から30人規模の応援があるなか、男子100m背泳ぎS8で1分7秒36の自身の大会記録を更新、成長を確実なものとした。

窪田幸太(NTTファイナンス)男子100m背泳ぎS8決勝のスタート前 写真・内田和稔

「世界選手権では、前半はスピードもあってよかったが、後半、迫ってきているのが見え、そこで焦った。今までにない感覚だった」と、後半逆転されタッチの差で銀メダルとなった世界選手権での体験を窪田は口にした。
「今日のレースでは7秒台がコンスタントに出せるようになってよかった」と感想を述べた窪田。「(このレースでは)世界選手権で1位だった選手のレースを真似てみたんです」と挑戦を明かした。結果として「前半は早く入れてよかったが、後半(ペース)があがりきれなくて、やっぱり前半からいかないといけない。自分の持ち味(前半のスピード)を伸ばしていき、後半の持久力もつけていけたらと考えている。来月のアジアパラでいい記録を残して、3月の選考会で派遣記録をきってパリへいきたい」と、冷静に前を向いた。

大会記録・木下あいら

今年初めて海外遠征を経験し、8月の世界選手権で銀メダルを獲得するなど彗星の如く現れた日本のニュー・ヒロイン、知的障害の木下あいら(三菱商事)は、女子200m自由形S14の予選と決勝、女子100m背泳ぎS14の決勝と3つの大会記録更新した。

女子200m自由形S14予選と決勝で大会記録を更新した、木下あいら(三菱商事) 写真・内田和稔

「今日の200自由形は予選は楽に泳げて、決勝はベストじゃなかったが惜しいところまで行けてよかった。世界選手権は1日目の200m自由形は緊張したが、あとは楽しめた。(銀メダルの)200m個人メドレーはちょっとの差で最初はくやしかったけど、すごいベストだったので来年にむけていい目標ができたと思う。平泳ぎはこのペースで続け、背泳ぎの水中動作、掻き方を改善しようと思います」

大会記録・上園温太

17歳の上園温太(須磨学園)は、男子100m背泳ぎS10予選・決勝で大会記録を更新した。決勝ではライバルの大島茄⺒琉(国士舘大学)と僅差で競り勝った。上園は、水泳部の名門須磨学園高校で健常の選手たちとトレーニングをしている。「環境は素晴らしく、すごく刺激的です」と話す。高校1年の頃、パラ水泳S10のクラスとなり、当初憧れていた大島と競えるまでに成長した。

上園温太(須磨学園)、男子100m背泳ぎS10決勝のスタート前 写真・内田和稔

「自分の強みは後半の粘り。アジアパラに向けてスプリント力、持久力の練習をしていきます」と話す上園、ゆくゆくは世界で戦いたいと力強い眼差しで語った。

2日目からの見どころ

初日に引き続きイギリス・マンチェスターで先月(8月)行われた世界選手権で10個のメダル(金1、銀4、銅5)を獲得した日本代表が、その泳ぎをパリへむけて披露する、そのスタート地点となる貴重なレース。世界選手権初出場で銀メダルを獲得した知的障害の木下あいらが2日目、その200m個人メドレーS14に出場する。
男子100m自由形S4では、メキシコから来日した東京パラリンピック100m背泳ぎ銅メダリストのCamacho Angelが、鈴木孝幸(GOLDWIN)と対決する。世界選手権で鈴木は3位、Camachoは4位だった。
さらに、来月(10月)開催される杭州アジアパラ競技大会に出場する43名(身体障害29、知的障害14)の中には、トップ選手を追う若手選手の力強い顔ぶれに触れることができることだろう。1日目に400m自由形S9でアジア記録を更新した川渕大耀の200m個人メドレー、100m自由形、100mバタフライなどにも注目したい。

ちなみに、アジアパラ競技大会は杭州大会のあと2026年は愛知・名古屋での自国開催を控えている。全国各地、アジア各地から参加するパラスイマーの存在を地域で応援し、身近に親しんでいく機会となるだろう。

山田拓朗ラストレース

3日目(9月18日)、50メートル自由形S9で、アテネパラリンピック(2004年)から日本のパラスイマーのリーダーとして率いてきた、山田拓朗(NTTドコモ)が競技活動を締めくくるレースを披露する。山田は9月1日、自身のフェイスブックに「今大会をもって現役選手としての活動を一区切りする」と発表した。12歳からジャパンパラに出場した思いのある大会で幕を引く。山田拓朗のラストレースが行われるという意味で、パラ水泳ファンにとって大切な思いを共有できる大会となるだろう。

<1日目の新記録>
・アジア記録
川渕大耀(横浜市・宮前ドルフィン) 男子400m自由形S9

日本記録
由井真緒里(群馬県・上部大学) 女子200m自由形S5
小池さくら(埼玉県・大東文化大学) 女子100m背泳ぎ

大会新記録
木下あいら(大阪府・三菱商事) 女子200m自由形S14(予選・決勝)、女子100m背泳ぎS14
上園温太(兵庫県・須磨学園) 男子100m背泳ぎS10(予選・決勝)
窪田幸太(東京都・NTTファイナンス) 男子100m背泳ぎS8
辻内彩野(東京都・三菱商事) 女子100m背泳ぎS13
山口尚秀(愛媛県・四国ガス) 男子100m背泳ぎS14
日向楓(横浜市・宮前ドルフィン) 男子50mバタフライS5
田中映伍(神奈川県・個人) 男子50mバタフライS5

<参考>
YouTubeライブ 
2023 ジャパンパラ 水泳競技大会 1日目
2023 ジャパンパラ 水泳競技大会 2日目
2023 ジャパンパラ 水泳競技大会 3日目

大会公式ページ/知って楽しいジャパラガイド
https://www.parasports.or.jp/japanpara/swimming/guide.html

(校正・地主光太郎)

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