関連カテゴリ: オーストラリア, サッカー, リモート取材, 取材者の視点, 国際大会, 夏季競技, 新着, 重度障害, 電動車いすサッカー — 公開: 2023年10月17日 at 7:30 PM — 更新: 2023年10月21日 at 9:36 PM

電動車椅子サッカーW杯 日本代表は豪州に引き分け 準決勝進出に望みをつなぐ

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オーストラリア・シドニーで開催中の電動車椅子サッカーW杯3日目、日本代表はオーストラリア代表と対戦。オーストラリアは前回大会準々決勝で1-2と逆転負けを喫した相手、両チームの気持ちがぶつかり合う、激しい闘いとなった。

10月15日、オーストラリア・シドニーで第4回電動車椅子サッカーW杯が開幕。大会3日目、日本代表は開催国オーストラリア代表と対戦した。予選リーグを勝ち上がるうえで、極めて重要な試合。
まずその前にこれまでの日本代表の試合を振り返っておきたい。
大会には10チームが参加、総当たりの予選リーグを戦い、上位4チームが準決勝へ進出、5位以下は順位決定戦にまわる。

10か国が参加した開会式   写真提供 日本電動車椅子サッカー協会

大会初日 第1戦 vs フランス

フランスは前回大会優勝国。日本はキャプテン内海恭平、三上勇輝、塩入新也、山田貴大でスタートした。
最初のシュートは山田。しかし、その後はフランスに押し込まれる展開が続く。フランスはGKがハーフウエイラインまで押し上げて8番(Weiss)が底に、10番(Ghelami 前回大会MVP)は相変わらずの細かなドリブル、12番(Beller)との自在なパス交換でゴールを狙う。
日本はゴールエリア内を守る内海、三上がなんとかゴールを死守していたが、フランスは前半7分、10番Ghelami のキープから逆サイドに折り返し、上がってきた8番Weissが前付きで押し込んで先制。その後も16分、17分、18分に加点。フランスはコートを大きく使うパスの展開、左右に揺さぶってのゴールを積み重ね、前半を4-0で折り返した。

後半に入ると、日本は大きなチャンスを迎える。前半19分に交代で入った宮川大輝の左サイドからのクロスに三上が飛び込む。ミートしていれば、決定的な場面だった。
しかしフランスはさらに3点を加え、7-0と日本を圧倒、強さを見せつけた。
尚、日本は中山環、平西一斗、池田恵助も出場し、全員が試合経験を積むことができた。

フランス戦を前に円陣を組む日本代表選手たち 写真提供 日本電動車椅子サッカー協会
日本にバックグラウンドを持つ子ども達のチアリーダーズ『シドニーさくらキッズチアリーダーズ』も応援に駆け付けた  写真提供 日本電動車椅子サッカー協会

 

2日目 第2戦 vs ウルグアイ

日本のスターティングメンバーは、GK池田恵助、平西一斗のPF2コンビがエリア内で守り、前線には塩入新也と宮川大輝。
序盤はなかなか押し込めない展開が続く。8分には塩入に代わり中山環が出場、積極的にシュートを放つ。しかしゴールをこじ開けることはできず、前半は両チームスコアレスでハーフタイムをむかえた。

後半スタートのメンバーは、キャプテン内海恭平、三上勇輝、山田貴大、塩入と、経験豊富な選手たちで固められた。じりじりとした展開が続くが、両チーム点が入らない。
そして後半16分、内海の右CKをニアの塩入がすらして、ファーで待つ三上がゴールに蹴り込み待望の先制点。今大会日本代表の初得点でもあった。

しかしその直後の17分、ウルグアイにFKから同点に追いつかれる。三上がクリアしたこぼれ球を7番Medinaに押しこまれた。ここで日本はエリア内に宮川が下がり、GKユニフォームの内海が上がり点を奪いに行く。
だが試合終了間際の後半20分、ウルグアイの右サイドキックインからつないだシュートがポストに当たり、こぼれ球を9番Wildに押し込まれ、日本は逆転を許してしまう。
残された時間はアディショナルタイムのみ。
そして迎えた右CKのチャンス。内海の強烈なキックがウルグアイのオウンゴールを誘い、日本は土壇場で同点に追いつき、なんとか2-2の引き分けに持ち込んだ。

第3戦 vs アイルランド

日本は、キャプテン内海恭平、三上勇輝、塩入新也、宮川大輝が先発。ウルグアイ戦終了時と同じメンバーである。
宮川がエリア内に構え、GKユニフォームの内海が上がり(いわゆるセンタービブ、中盤の底センターの選手がGKを兼ねる)、日本は立ち上がりからアイルランド陣内に押し込み先制点を狙いにいく。
日本は意図的にCKやキックインを狙い、セットプレーからの得点を目論むがゴールが遠く、勝負は後半に持ち越される。

後半に入っても日本が押しこみ、4分には三上からのパスを内海がシュート、わずかにゴール右に外れる。14分には内海の左CKをニアで塩入が合わせるがゴールならず。
日本は終始押し込みながらもスコアレス、0-0の引き分けに終わった。

オーストラリア戦入場前の両チームの選手達  写真提供 日本電動車椅子サッカー協会

3日目 第4戦 vs オーストラリア  第5戦 vs アメリカ

そして迎えた大会第3日目。オーストラリア戦のスターティングメンバーは、GK池田恵助、平西一斗がエリア内で守り、前線には塩入新也と中山環。近藤監督の「ボールを動かし、展開のスピードをあげていきたい。得点を狙える可能性も高い」という意図で選ばれたメンバーだった。
宮川大輝と山田貴大は体調不良のためベンチ入りできず、塩入、中山はフル出場を余儀なくされた。(4人はPF1。PF1の選手は2人以上が出場していなくてはならないというルールがある)
塩入は前回大会準々決勝オーストラリア戦を前に負傷、出場時間も短く敗れ去り悔しい思いを抱き続けてきた。その塩入は「日本らしいサッカー、スペースを使ったサッカーを体現しようと、気持ち的にもみんな気合が入り」試合に入った。

一方のオーストラリアは前回大会と同じメンバー、足で電動車椅子を操作する7番Karim、以前はアフロがトレードマークだった5番Dimitri Liolio-Davisはドレッドヘアで登場。

競り合うGK池田恵助と オーストラリアのDimitri Liolio-Davis  写真提供 日本電動車椅子サッカー協会

序盤は一進一退の攻防が続くが、先制したのは日本! センターライン付近のFKを池田が蹴り、塩入がつないで中山が回転シュート。6番Joshua Merkasが弾きだすが2番Petersに当たってオウンゴールとなった。
「思うようなボールのつながりが生まれた」「ボールを動かそうと選手同士で取り組んできた」「練習でやってきたことをしっかりやれたからこそ、皆でイメージして取り組んだ結果」と池田、塩入、近藤監督は先制点を振り返った。

日本はさらに追加点を奪おうとGK池田が積極的な攻撃参加、縦パスを入れ塩入のシュートに結びつける。池田が上がった後の、オーストラリアの速攻には平西が対応する。池田と平西は愛知県のDKFBCディスカバリーのチームメイト。「こちらがこう動いても後ろにいるだろうという阿吽の呼吸はあるので、その信頼感はありました」と池田は振り返る。 
追いつきたいオーストラリアは、CKやFKからシュートを放つが、池田と平西がゴールを許さない。
中山はシュートの意識が高くゴールに向かう姿勢を見せ、選手たちは日本の目指すサッカーを体現していく。

19分、レフリーから2度の注意を受けイエローカードを心配された平西に代えて三上が入る。
いい流れの日本だったが、前半アディショナルタイム、オーストラリアは左CKからファーで待ち構える6番Merkasが蹴り込んで、日本は同点に追いつかれてしまう。

得点を決めたオーストラリアのMerkasと平西一斗  写真提供 日本電動車椅子サッカー協会

後半のスタートは試合開始時と同じメンバー。オーストラリアは攻勢を強め、開始早々に日本ゴールを脅かす。
オーストラリアは交代出場の女子選手呼吸器を背負った3番エバンスがパスの起点となりチャンスを作り出す。

オーストラリアの怒涛の攻めを、池田、平西が守り我慢の時間帯が続く。
日本はなかなか押し上げることができず、なかなかチャンスも作り出せない。
「日本のやりたいことをオーストラリアにやられ始めてしまった。中盤まで持ち上がれば落ち着けるが、ずっとゴール前でボール回しをされているような状況で必死」に池田は守り抜く。

オーストラリアは7番Karimが戻り、さらに攻勢を増していく。
選手交代で流れを変えたい日本だが、この試合ベンチ入りしているPF1の選手は2人しかおらず、枠の関係で交代できない。
日本はオーストラリアの猛攻を何とかしのぎきり、1-1と引き分けた。
池田は「回し始めた時のオーストラリアは脅威で、ボール回しも単純ではなく裏の裏をついてくるので1点で抑えられたのはよかった。悔しさはもちろんありますが…」と試合を振り返った。
本来であれば4位を争う直接の相手であるオーストラリアには勝っておきたい日本だったが、負けずに相手に勝ち点3を渡さなかったことで、4位争いになんとか踏みとどまった。

競り合うオーストラリアの女子選手Rebecca Evansと塩入新也  写真提供 日本電動車椅子サッカー協会

続くアメリカ戦は、自力に勝るアメリカが日本を2-0と下し、日本は3日間5試合を3分け2敗、10チーム中8位の成績で終えた。
フランス、アメリカ、イングランドは頭一つ抜けているが、勝ち点9で4位のデンマーク、勝点6で5位のウルグアイは上位チームとの対戦を多数残しており、4位争いはまだ混沌としている。日本にもまだまだチャンスはある。

 

大会のこれから

「(初戦に)負けてから引き分け続きですけど無駄にはなっていない」「最初リズムを掴みづらかったが、だんだん日本らしいサッカーも出来てきている」と選手たちはこの大会での手応えを感じている。

予選リーグはあと残り2日、4試合。
「流れを引き寄せるために、1-0というきわどい拮抗した試合ではなく、これが日本だという点数の取り方をしてそこからつなげていきたい」と池田が、「選手一丸となって、日本らしいスペースを使ったサッカーをしっかりやっていけば、おのずと結果はついてくる。仲間を信じて全試合勝ちにいきたい」と塩入が、力強く語った。

3日目を終えての戦績
1位 フランス    勝ち点15 得失点差+26
2位 アメリカ    勝ち点12 得失点差+10
3位 イングランド  勝ち点12 得失点差+9
4位 デンマーク   勝ち点9 得失点差-1
5位 ウルグアイ   勝ち点6 得失点差+-0
6位 オーストラリア 勝ち点5 得失点差-9
7位 アルゼンチン  勝ち点4 得失点差-5
8位 日本      勝ち点3 得失点差-9
9位 北アイルランド 勝ち点2 得失点差-12
10位 アイルランド  勝ち点1 得失点差-9

予選リーグ残りの日程
10月18日(水)
8:00〜 日本 vs 北アイルランド
12:30〜 アルゼンチン vs 日本
10月19日(木)
9:30〜 イングランド vs 日本
14:00〜 日本 vs デンマーク

18日の北アイルランド戦のみこちらで配信
https://www.youtube.com/@FIPFAPowerchairWorldCup2023
それ以外の試合はこちらから配信
https://www.youtube.com/@OfficialFIPFA

(写真協力・日本電動車椅子サッカー協会 校正・佐々木延江、そうとめよしえ)

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