アイススレッジホッケー, 冬季競技, 平昌 — 2017年9月28日 at 10:01 AM

平昌への切符掴めるか。パラアイスホッケー最終予選まもなく開幕

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9月25日、最終決戦に向けた記者会見で、左から日本代表チーム中北浩仁監督と須藤悟キャプテン

9月25日、最終決戦に向けた記者会見で、左から日本代表チーム中北浩仁監督と須藤悟キャプテン

素早いスピードと激しいボディアタック。「氷上の格闘技」と呼ばれる熱い戦いに魅了される、パラアイスホッケー(旧称:アイススレッジホッケー)。その日本代表チームが、いま、正念場を迎えている。

平昌パラリンピック出場最終予選が10月8日〜14日にエステルスンド(スウェーデン)で開催される。スウェーデン、ドイツ、チェコ、日本、スロバキアの5ヶ国が、残り3枠の出場権を懸けて争う。パラリンピック出場枠は8で、すでに出場が決まっているカナダ、アメリカ、韓国、ノルウェー、イタリアの5ヶ国に加え、この最終予選ですべての出場チームが決定する、大一番を迎える。

9月25日、最終予選を前に都内で記者会見が行われた。
中北浩仁日本代表監督は「非常にいい出来になってきている。(昨年12月・苫小牧の)世界選手権から新たな選手も迎え、チーム力が強化されているので、期待できる」と、現在のチームの状況を語った。

日本代表チーム・キャプテン須藤悟(46歳・北海道ベアーズ/DF・背番号24番・両下肢切断)は、「選手一同熱い思いを持ちながら、冷静に試合を運んでいきたい」と、意気込んだ。

未来のために戦う

やまびこスケートの森アイスアリーナでの須藤悟チームキャプテン(46歳・北海道ベアーズ/DF・両下肢離断)

やまびこスケートの森アイスアリーナでの須藤悟チームキャプテン(46歳・北海道ベアーズ/DF・両下肢離断)

バンクーバーパラリンピック(2010年)までは、日本代表は順調な道を歩んできた。初出場の長野大会(1998年)以降、ソレトレーク(2002年)、トリノ(2006年)、バンクーバーと4大会連続でパラリンピックに出場。バンクーバー大会では銀メダルを獲得する好成績を残した。しかし、その後は2部にあたるBプールに降格、前回ソチ大会の出場権を争う最終予選では、韓国とイタリアに僅差で敗れ、5大会連続の出場を逃してしまう。その後も再びBプールに降格、昨年末に苫小牧で行われた世界選手権でAプールに復帰したが、バンクーバー以降は苦しい8年間を過ごしてきた。

苦しかったのは試合結果だけではない。日本のパラアイスホッケーは、早朝・深夜の特殊な練習時間や、アイスリンク不足など厳しい環境、高額な海外遠征費などを理由に、競技人口もなかなか増えない。選手の高齢化が進み、現在チームの平均年齢は41.5歳となっている。世界ランクトップのカナダは20代が中心だ。

中北監督とともに、ソルトレークから3大会を戦ってきた、須藤キャプテンは、
「今回は自分のための戦いではない。平昌出場を決めて、日本チームはパラリンピックに出場できるチームなんだという体制を作っていかないといけない。未来のチームのことを考えると、負けるわけにはいかない」と、決意を語る。2大会ぶりのパラリンピック出場は、チームの将来を左右する悲願でもあるのだ。

最後の調整

9月22日から3日間の国内強化合宿が行われた。最終予選前最後の国内合宿となる

9月22日から3日間の国内強化合宿が行われた。最終予選前最後の国内合宿となる

大一番を前に、先日長野県・やまびこスケートの森アイスアリーナで最終予選前最後となる3日間の国内強化合宿が行われ、長野、北海道、東京から日本代表選手が集合した。

指導に加わった元女子日本代表監督の信田憲司コーチは「守備のフォーメーションは意識できるようになってきた。欧米の選手はリンクを広く使うので、そうさせないようタイトにする事が大切。一方でポジション取りのスピードはまだ甘い。選手には動き出しを速くするよう声を掛けた」と、チームの現状を分析した。信田コーチは、現役時代アイスホッケー日本代表のゴールキーパーを務めた経験も持つ。

平昌への最終戦に向けた、強化合宿で信田憲司コーチ。やまびこスケートの森アイスアリーナ

平昌への最終戦に向けた、強化合宿で信田憲司コーチ。やまびこスケートの森アイスアリーナ

アドバイスをもらうGKの望月和哉(36歳・長野サンダーバーズ/背番号30番・左大腿切断)は「意識が変わった。これまでは相手選手が数人で攻めてきた場合、パックを持つ選手にしか集中していなかった。信田コーチのアドバイスでより広い視野でポジション取りができるようになった」と、指導に信頼を寄せると同時に、「GKは経験がものを言うポジション。若い選手が長い時間をかけて経験を積んでいくのが大切」と、若手育成の重要性を語る。

そんな望月選手は、テレビでバンクーバー大会の決勝戦を目にしたことをきっかけに競技を始めた。日本代表の活躍を伝えることは、パラアイスホッケー競技人口の拡大に大きな追い風となる。

ゴールキーパー望月和哉(36歳・長野サンダーバーズ/左大腿切断)やまびこスケートの森アイスアリーナ

ゴールキーパー望月和哉(36歳・長野サンダーバーズ/左大腿切断)やまびこスケートの森アイスアリーナ

若手選手もチームの変化を感じていた。2014年から競技を始めた南雲啓佑(32歳・東京アイスバーンズ/FW・背番号79番・脊椎損傷)は「選手同士がコミュニケーションし合えるいい関係になってきた。ダメな点はお互い指摘し、補えるようになってきた」と話し、チームで良い信頼関係を築いていることが窺える。自身の強みについては「数少ない脊椎損傷プレーヤーとして、両足がある分、重さがあるので、当たり負けしない。僕たち若手がボトムアップでチームを盛り上げていきたい」と語り、チームでの活躍を誓った。

狙うは得点力アップ

パラアイスホッケーはGKを含め6人でプレーを行う。体力消耗が激しいことや、集中力のあるうちに交代するため、交代頻度が高いのが特徴だ。GK以外のFW3人、DF2人の計5人をひとつにして「セット」と呼ぶ。最終予選に向け、得点力アップを狙うために、FWセットのフォーメーションを強化してきた。


第1セットは、得点力のある上原大祐(35歳・東京アイスバーンズ/FW・背番号32・二分脊椎)を中心に先制点を狙う。上原は2010年バンクーバー大会で得点した立役者でもある。最終決戦に向け日本代表に復帰した。須藤キャプテンも「ゲーム感覚があり、ポテンシャルの高い選手」と、期待を寄せる。

第2セットは長野大会から出場する三澤英司(44歳・北海道ベアーズ/FW・背番号25・右股関節切断)や、チームを引っ張るDF須藤悟キャプテンなど、機動力あるベテランで構成されゲームメークする。

そして、第3セットは、児玉直(30歳・東京アイスバーンズ/FW・背番号70・右下肢切断)、南雲啓佑を中心とした若手戦力がチームを支えていく。選手の交代を通してどんな試合運びが展開されるかに注目したい。

南雲啓佑(32歳・東京アイスバーンズ/FW・脊椎損傷)

南雲啓佑(32歳・東京アイスバーンズ/FW・脊椎損傷)

日本代表チームは10月4日に日本を発ち、現地で最終調整を行ったあと、9日に行われるドイツ戦で初戦を迎える。はたして平昌への切符を掴めるか。日本パラアイスホッケーの運命を懸けた戦いが始まる。

(校正・佐々木延江)