関連カテゴリ: IWBF, IWBF世界選手権, 取材者の視点, 国際大会, 夏季競技, 大阪, 新着, 東京パラムーブメント, 観戦レポート, 車いすバスケットボール — 公開: 2024年4月21日 at 6:14 PM — 更新: 2024年5月2日 at 8:50 PM

女子車いすバスケットボール・パリ最終予選が閉幕、日本他4カ国がパリ行き切符を獲得!

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女子車いすバスケットのパリパラリンピック出場権を懸け、8カ国が参加した最終予選が4月20日に終幕。カナダ、ドイツ、スペイン、日本がパリへのチケットを手にした。

相手陣に切り込むキャプテン北田千尋(背番号18 4.5) 写真:薮功也

4日間にわたりAsueアリーナ大阪(大阪市)で開催された2024 IWBF女子車いすバスケットボール最終予選が4月20日最終日を迎え、「クロスオーバー戦」が行われた。
3日間のグループ戦の結果、グループAは ドイツ、オーストラリア、タイ、アルジェリアの順位、グループBはカナダ、スペイン、日本、フランスで、それぞれ組み違いの1位と4位、2位と3位が対戦して、4試合で4つのパリ行きのチケットを争った。

最初の3試合は上位チームがパリ行きを決める

第1試合から第3試合までは以下の通りで、それぞれグループリーグで勝ち越したチームがパリ行きの切符を手にした。

第1試合 カナダ(グループB 1位) 88-30 アルジェリア(グループA 4位)

この最終予選で最多得点101点を記録したカナダの カディー・ダンデノー(背番号13 4.5)写真:薮功也
キャプテンとしてアルジェリアを引っ張った、デジャミラ・ケンガニ(背番号9 4.0) 写真:薮功也

第2試合 スペイン(グループB2位)76-35 タイ(グループA3位)

この試合で14点、シュート成功率85.7%を叩き出したヴィクトリア・アロンソ・ヴィラリーニョ(背番号13 4.0)写真:薮功也
40分間コートを走りまわり、タイを引っ張ったワリサ・タムラーアイド(画面右 3.0) 写真:筆者撮影

第3試合 ドイツ(グループA1位)58-25 フランス(グループB 4位)

ドイツのキャプテン、マライケ・ミラー(背番号4 4.5)。彼女は大会中の4試合で100点を決めた。 写真:筆者撮影

フランスチームの最年長のアンジェリーク・ピチョン(右 4.5)写真:薮功也

日本は最後の席をかけてオーストラリア(グループA 2位)と激突

第1クォーター、リバウンドをとった網本麻里(4.5 カクテル)からのパスをキャプテンの北田千尋(4.5 カクテル)がうけ、そのまま相手を振り切り独走してシュート、ゲームの口火をきる。これまでの3試合ではあまりみれなかったロングパスからの速攻で先行する。岩野博ヘッドコーチが「3試合で自信を深めた」と語るディフェンスでは、チーム1の得点(3試合で55点)を決めたジョージア・モンロー・クック(4.5) をシュート1本2点に抑え、13-4でこのクォーターを終える。
続く、第2クォーターでもオーストラリアから24秒、8秒のファールをとるなどディフェンスが引き続き好調でオーストラリアの得点を3点に抑えて25-7で折り返す。

ここ3試合でなかなか打てなかったバスケット下でシュートを打つ網本(背番号15 4.5)写真:薮功也

第3クォーターではジャス・クロンジェ(4.0)、モンロー・クックがシュートを決め、盛り返すとかと思われるも、柳本あまね(2.5 カクテル)が3ポイント、2ポイント、網本がフリースローを合計4つさらに2ポイントを決め、36-13でリードを広げる。

シュートを打つ柳本 写真:薮功也

第4クォーターは北田が「このままのスコアではパラリンピックの本番で1勝もできない」との危機感から気合いを入れなおしたと振り返る。自らフリースロー2つ、残り24秒の最後のワンプレーで3Pを決めてゲームを締め括った。50-26でオーストラリアを破り北京以来の自力でのパリパラリンピック行きを決めた。

試合後のセレモニーでキャプテンの北田は「東京パラリンピックで男子が2位になって増えたファンを、次の世代に繋げていくという最低限の仕事ができた」と率直に安堵の気持ちを述べた。
岩野HCはサポーターを前に「パリではメダルをとります!」と力強く宣言した。岩野HCは、合宿を訪ねてくれたオリンピック男子バスケットボール日本代表ヘッドコーチのトム・ホーバスから「メダルの色を決めて進んでいくことが大切」とアドバイスをうけたと語り、「(目標に向けて)高い山は3つ、4つあるが登りきれない山ではない」と改めて強調した。

タイムアウトで指示をだす岩野博ヘッドコーチ 写真:薮功也

最終予選というシステムは「道半ば」

男女とも、パリパラリンピックを戦う、8つのチームが確定した。男子は、イギリス、スペイン、アメリカ、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、オランダと、ヨーロッパゾーンから5カ国、アメリカゾーンから2カ国、アジア・オセアニアから1カ国。
女子は、イギリス、オランダ、アメリカ、中国に、カナダ、スペイン、ドイツ、日本と、ヨーロッパからの出場が半数を占めることになった。 男女とも南半球からは1カ国も参加しない大会となることが確定した。

観客席の応援に向かって大きく手を振り謝意を伝える日本代表 写真:薮功也

リオ大会、東京とアフリカゾーンから出場していたアルジェリのアハメド・タグイーシェヘッドコーチは「今回の変更(出場枠が10から8へ削減)により、アフリカから出場することはできなくなった。次回にむけアフリカからの枠を確保するために、頑張らなくては」と語った。
また、パリパラリンピックのホスト国であるフランスも、母国大会に出場をもたらすことができなかった。フランスチームのヘッドコーチ、フレデリック・ギュヨーは、「パリにはそれに相応しい国がいくべきで、フランスチームはそうではなかった」と謙虚に語った。
IWBF(世界車いすバスケット連盟)のウルフ・メーレンス会長が「ベストのチームを選ぶためこのような選考方式とした」と表現した最終予選の結果、多様性という観点では今後の改良の余地があるシステムといえるかもしれない。

次は、パリ!

「地獄の40分間のその先に」と改めてパリに向けての決意を示す日本代表 写真:薮功也

さて、8月29日に開幕するパラリンピックでのトーナメントにむけて、日本代表の「地獄の練習(岩野HC談)」が続く。岩野HCが課題として再三あげたのがシュートの成功率。特に欧米選手との間の体格差があるため大切になるのがアウトサイドからのシュートだ。今大会を振り返ると、北田、網本、柳本のフィールドゴール成功率は30%台。他チームのエースと目される選手が軒並み50%を超えていた。残り4ヶ月で改善して本番をむかえる必要があるだろう。そうなった上で、ぜひ、男子の分も背負い、パリで新たな歴史の1ページを刻んで欲しいと願う。

(写真・薮功也 校正・佐々木延江、丸山裕理)

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