関連カテゴリ: PHOTO, インタビュー, デイレポート, ブラインドスポーツ, ブラインドラグビー, 取材者の視点, 知り知らせる, 観戦レポート — 公開: 2023年4月9日 at 11:07 AM — 更新: 2023年4月19日 at 9:14 AM

BALs大阪が初優勝!KCT杯第2回全国ブラインドラグビー大会

知り・知らせるポイントを100文字で

ブラインドラグビーの第2回国内大会が開催され、東京・新潟・神奈川・愛知・大阪から5チームが参加しBALs大阪が初優勝を飾った。今年11月にはイギリスでの国際試合も開催が決定している。

桜が満開の3月26日、KCT杯第2回全国ブラインドラグビー大会が稲城市総合グラウンドで開催された。

5チーム(アルコバレーノ東京/新潟フェニックスファイターズ/かながわLucy’s/BALs大阪/サンラビッツ愛知)が参加し、強い雨にもかかわらず熱戦が行われ、BALs大阪初優勝を飾った。

ブラインドラグビーは、視覚障がい者(主に弱視)がプレーするラグビー。2015年にイングランドで考案され、日本には2018年に紹介された新しいスポーツである。世界ではイングランド・ウェールズ・フランス・イタリア・アイルランド・スコットランド・ニュージーランドの8ヶ国、日本国内では現在5チームが活動しており、新たに宮城・岡山・千葉にチームができる予定だ。全国各地で体験会を開催するだけでなく、指導の方針を伝えるマニュアルを用いた指導活動も併せて行い、仲間を増やしている。

試合終了後のBALs大阪メンバー、協会および来賓の方々との集合写真

ブラインドラグビーのルール

ブラインドラグビーのルールを簡単に説明していく。1チームあたり7人でそのうち5人以上が視覚障がい者でなければならない。全盲の選手がプレイする場合は、同選手をサポートするガイド選手1名の配置が認められている。

ボールを持った全盲のアルコバレーノ東京 小岩井亜樹選手(右)をサポートするビブスを着たガイド(右)

試合時間は前半後半各10分ずつとし、ハーフタイムを3分とする。点数は、1トライ毎に、5点を得て、トライ後のコンバージョンキックが成功するとさらに2点を追加することができる。晴眼者はトライとコンバージョンキックをすることはできない。タックルは通常のラグビーのようなぶつかり合いではなく、両手で相手の肩から膝の間に触ることで成立する。さらにタックルにいく選手は「ター、ター、ター」という声を掛ける必要がある。攻撃はボールを保持しているチームは、相手方のチームに6度タックルされるまで攻撃を続けることができる。

ボールを持つBALs大阪 市岡 智浩 選手(中央)にタックルをする様子

※詳しくはブラインドラグビー公式ルール(国内)を参照

決勝戦 BALs大阪 12−5 サンラビッツ愛知

BALs大阪の出崎琢巳がトライを決め5−0と先制。お互いのディフェンスが上手く機能し、点が入りづらい展開で前半は5−0で終了。後半になってBALs大阪キャプテン平康裕がトライし、上田晟也のコンバージョンキックも決まって、12−0とリード。サンラビッツ愛知もトライを1つ決めたが反撃もここまで、12−5で試合終了となり、BALs大阪が優勝した。

BALs大阪 出崎琢巳がトライを決めた瞬間(視覚障害者のみトライができる)
ステップで相手をかわして前に進もうとするBALs大阪今村隆政(晴眼選手)(中央)
決勝戦でトライを決めたBALs大阪キャプテン平康裕(視覚障害者のみトライができる)
コンバージョンキックを蹴るBALs大阪上田晟也(視覚障害者のみ蹴ることができる)

BALs大阪の原田丈士監督は、試合後のインタビューで「チームができたのが2、3ヶ月前。試合がちゃんとできるか不安だった。しかし最後の練習を積み重ねていく中でチームがぎゅっと急速に一つにまとまり今日の試合で体現することができ、嬉しい結果となり良かった。タグラグビーの経験者(健常者)2名がチームに入り視覚障害者メンバーへのアドバイスをしっかりやってくれたのが功を奏した。チームメンバーはそれぞれ個性があるが、難しく考えずに明るく楽しくを一番に考えているところが良い。こういうチームをみるのは嬉しいし楽しい。これから潜在能力のある選手がもっと出てくると思うので、チームの裾野を広げて全体的なレベルアップを図り、是非2連覇を達成したい」と語った。

試合結果

第1試合(7分ハーフ) 新潟フェニックスファイターズ 12−10 アルコバレーノ東京
第2試合(7分ハーフ) BALs大阪 29−10 かながわLucy’s
第3試合(7分ハーフ) サンラビッツ愛知 22−0 新潟フェニックスファイターズ
敗者戦(7分ハーフ) アルコバレーノ東京 12−0 かながわLucy’s
決勝戦(10分ハーフ) BALs大阪 12−5 サンラビッツ愛知

第1試合 新潟フェニックスファイターズが攻め上がる様子
第2試合 タックルを交わして前に進もうとするかながわLucy’s
第3試合 足の速さを活かし、トライを決めようとするサンラビッツ愛知原久志
敗者戦 アルコバレーノ東京 神谷考柄がスクラムからボールをパスする様子

最終順位

優勝 BALs大阪
準優勝 サンラビッツ愛知
第3位 新潟フェニックスファイターズ
第4位 アルコバレーノ東京
第5位 かながわLucy’s

BALs大阪 キャプテン 平康裕・MVP 出崎琢巳へのインタビュー

BALs大阪 キャプテン平康裕(左)・MVP 出崎琢巳(右)

ーー優勝した率直な気持ちを教えてください。

(平)嬉しいです。関西のチームは単独で出場するのを目標にこの1年頑張ってきたから。キャプテンとしてはこのチームを優勝させてあげたかったので喜んでいるメンバーの姿をみられて良かった。
(出)しっかり練習し始めたのが去年の秋。怪我人も出て大会に望むのが厳しい時期もあったが、しっかりコミュニケーションしてチームワークも取れて優勝もできた。来年は2連覇したい。

ーーチームのこれまでの経緯を教えてください。

(平)4年前にこのチームができて関西での活動が始まった。僕一人しかいない状況が3年位続いていた。普及のための体験会活動はしていたが、この1年間でようやく選手が集まった。ブラインドサッカーやゴールボールの選手から関西でもブラインドラグビーのことが伝わり輪が広がっていった。初めての出場で優勝までできて嬉しい。

ーーブラインドラグビーの目指すところは?

(平)パラリンピックの競技にしたい。まずは地域に一つ、それから都道府県に一つ。ブラインドラグビーをしたくても場所がないとかいうのをなくしていきたい。

ーーブラインドラグビーの魅力は?

(平)健常者でも視覚障害者でも一緒にプレーすることができるところが一番の魅力。視覚障害者と健常者がボールを繋いでトライを目指し、一緒に大会に出られるというのは他の競技でもあまりない。
(出)ブラインドラグビーを去年の秋から始めた。ラクビーといえばコンタクトプレイの激しいイメージが強いが、怖がらずにタッチで止まってくれるので安心してできる。子どもも中高生も一緒にやってくれて女性もできるのでもっと広まってほしい。

ーーMVP取った感想は?

(出)すごく嬉しいです。選手としてもらえることはとても光栄。

ーーディフェンスとオフェンスどちらが好きですか?

(出)目立ちたいし自分が決めたいので、オフェンスが良いです。チームのポイントゲッターとして僕が取らないと勝てないといつも思ってます。足が速いのと、ステップで置いて行くのが持ち味なので、そういうところでチームに貢献していきたい。

オフェンスでの活躍を目指す出崎琢巳、第2試合でのトライ

イギリスでの国際大会開催決定

11月の終わり頃に、イギリス・ロンドンで国際大会が開催されることが決定した。ウェールズ・イングランド・フランス・イタリア・アイルランド・日本の6ヶ国が参加する予定だ。今回の大会は日本代表候補のセレクションを兼ねており、橋本利輝ヘッドコーチが中心になって取り組んでいる(監督の人選はこれから)。選考にあたってはチーム見学も行い、スキルだけではなく人間性も加味する。選考後は、7月(駒沢)、11月頭(場所未定)で強化合宿を行う予定。

ブラインドラグビー協会の橋本利之会長は「海外の選手は体格がいいので、日本の選手は飛ばされてしまう。また手足が長いので普段なら抜けるところもできない場面が出てくる。このような国内大会では体験できないことを選手に知ってもらいたいと考えている。とはいえ2019年に行われたイングランドとの国際テストマッチは3戦いずれも圧倒されて負けてしまったので、今回の大会で勝ちたいという思いはとても強い。そのため合宿は相当厳しいものになるだろう」と答えた。

日本代表についての想いについて、平は「4年前の試合では副キャプテンを務めた。イングランドへのリベンジの思いはある。日本代表を目指して頑張りたい」、出崎は「(国内大会で)優勝するのもそうだが日本代表になるのを目指してブラインドラグビーを始めたので、海外の選手と渡り合えるように引っ張っていく選手になりたい」と力強く抱負を語ってくれた。

今年は本家ラグビーのワールドカップイヤー。ブラインドラグビーも世界の強豪と戦い、勝って存在感を見せて欲しい。

(編集校正・久下真以子)

この記事にコメントする

記事の訂正はこちら(メールソフトが開きます)