関連カテゴリ: Tokyo 2020, 取材者の視点, 周辺事情, 地域, 東京パラムーブメント, 横浜 — 公開: 2017年10月19日 at 9:30 AM — 更新: 2017年10月19日 at 7:27 PM

パラリンピックの価値とは。教育現場で挑戦始まる 〜PARA-SPORTS ACADEMY 東京都×WOWOW in 日体大〜

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授業でWOWOWの映像を観る学生たち
授業でWOWOWの映像を観る学生たち

東京オリンピック・パラリンピックを3年後に控え、教育現場でパラスポーツやパラアスリートの魅力を発信する取り組みが始まっている。10月10日、日本体育大学世田谷キャンパス(横浜市青葉区)で、東京都と放送局のWOWOWが連携し、大学生を対象にした「PARA-SPORTS ACADEMY」が行われた。このプロジェクトは、東京都の「2020年に向けた実行プラン」の一貫で、WOWOWが制作するパラアスリートのドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」を活用し、パラアスリートの姿を通じて、パラスポーツや障害に対する理解を深めるとともに、共生社会の実現に向けた、自らの関わりを考える講義を首都圏の大学で展開している。今年5月にスタートし、早稲田大学、立教大学で実施、今回が3校目の開催となる。

「パラ競技を見たことがある」=1.3%
講義ではまず、東京オリンピック・パラリンピック準備局パラリンピック部事業推進担当課長の安達紀子氏が、パラリンピックや障害者のスポーツを取り巻く現状について語った。
東京都の調査では、過去1年で競技会場でパラスポーツを見たことがある人は、わずか1.3%。パラリンピック成功のためには会場を満席にすることが課題となっている。
日体大生に「3年後の東京大会になんらかの形で携わりたい?」と質問すると大勢の手が挙がった。「実際に試合を見たことがある?」との質問には、数人の手が挙がったのみだった。
あと3年に迫るなか、安達氏は「知ることが会場に足を運ぶきっかけになる」と考え、パラ競技やアスリートの魅力を伝える活動をしている。

世界のトップアスリートに密着取材

パラスポーツの魅力を知るために最有力とも言えるのが、WOWOWがIPC(国際パラリンピック委員会)と共同制作するドキュメンタリー・シリーズ「WHO I AM」である。授業ではダイジェスト版が上映された。

映像には、元陸軍兵で3度の世界女王に輝いたトライアスロンのメリッサ・ストックウェル(アメリカ)や、平昌大会を控えるアルペンスキーの世界王者、森井大輝(日本)などメダリスト8人が登場した。
世界最高峰の舞台で活躍する選手の姿に、学生からは「かっこいい。競技を見てみたくなった!」という声があがった。

制作プロデューサーの太田慎也氏は、「個性的な選手たちはみな自信に満ち溢れていて、輝いて見えた」「障害のある人との接し方を知らない自分の側に障害がある」と、取材でアスリートと接した感想を語る。また、選手が放つ「人生が輝くかどうかは自分次第 」というメッセージには、スポーツだけではない普遍性があることを学生たちに伝えた。

パラリンピックは、多様性の追求
では「パラリンピックの魅力」とは一体何か。ここで、改めてオリンピック・パラリンピックが持つそれぞれの価値を考えたい。公益財団法人日本障がい者スポーツ協会によれば、オリンピックは卓越性の追求、パラリンピックは多様性の追求という価値に大別できるとしている。

出典:公益財団法人日本障がい者スポーツ協会「新版 障がい者スポーツ指導教本 初級・中級」
出典:公益財団法人日本障がい者スポーツ協会「新版 障がい者スポーツ指導教本 初級・中級」

図の縦軸はパフォーマンスの高さ、横軸は身体機能を示している。オリンピックは身体機能とパフォーマンスの高さの限界に挑戦する=「卓越性の追求」であり、パラリンピックはパフォーマンスの高さを目指す一方で、様々な身体状況でもスポーツに参加できる可能性=「多様性を追求」する。
パラリンピックに様々な障害の選手が登場し、ハイパフォーマンスを示してくれる。それにより、スポーツだけでなくあらゆる社会生活を楽める、全ての人々の行動範囲が多様に広がっていく。
これが「パラリンピック開催による多様性の醸成」で、パラリンピックの魅力であり、成熟した国際都市・東京に求められるものではないだろうか。

授業を終えた学生たちは「パラスポーツは障害のある可哀想な人が頑張っているところだと思っていたが、障害のない人と変わらなかった。むしろ障害のない人以上に前向きな姿勢をすごく感じた。考えが変わった(渡辺早紀さん)」と、感想を話した。

また、将来、障害者スポーツ指導員になることが夢だという中村寛之さんは「誰にでもチャンスはあるという事を学んだ。障害のある方と接する場で活かしたい」と目を輝かせた。

「PARA-SPORTS ACADEMY」は今後も首都圏の大学で展開される。東京は、3年後のその先に何を残せるか。パラスポーツの挑戦が始まっている。

授業を終えた講師陣と感想のインタビューに応じてくれた体育学部社会体育学科・野村一路教授と学生たち
授業を終えた講師陣と感想のインタビューに応じてくれた体育学部社会体育学科・野村一路教授と学生たち

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(校正・佐々木延江)

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