「キープ・スマイリング、ノー・ラッシュ」。陣川学士、笑顔であせらず選手をサポート ~横浜パラトライアスロン大会~

オンライン応援インタビュー「わたしの横浜パラトライアスロン」⑤陣川学士(さとし。スイム・イグジット・アシスタント)
~横浜パラトライアスロン応援プロジェクト「パラトラトーク2021」~

COVID-19の厳しい感染防止対策の中、5月15日(土)・16日(日)に開催される「2021 ITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会/2021 ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会」の応援プロジェクト「パラトラトーク2021」。
その一環として、オンライン応援インタビュー「わたしの横浜パラトライアスロン」の収録が、5月7日に横浜市のさくらWORKS<関内>で行われた。
オンラインインタビュー5人目は、スイム・イグジット・アシスタントの陣川学士(神奈川県トライアスロン連合)。スイムからバイクに移行する選手をサポートするスタッフだ。メインパーソナリティの丸山裕理(パラフォト記者・フリーアナウンサー)が陣川に、具体的な業務の内容や、スイム・イグジット・アシスタントの魅力などを聞いた。

 ――今回は、「わたしの横浜パラトライアスロン」ということで、選手だけではなくスタッフや審判の方にもお話をうかがおうと思っています。陣川さんは「スイム・イグジット・アシスタント」として、サポートされているのですよね? どういったことをなさるのか、教えていただけますか?

スイム・イグジット・アシスタントは、パラの選手がスイムが終わったあとに、次にバイクに移り変わるんですが、選手が海から上がる時にサポートする役目です。

――大会の練習などでもよく見る、選手たちを支えていると言うか、運んでいる役割になるのですよね。

そうですね。パラの選手をサポートする人としては、大きく2種類ありまして、ずっと選手に寄り添う形、選手一人一人についていくのがパーソナルハンドラーという方です。その方は、選手おひとりに対して、おひとりがずっと付くんです。
(それに対して、)私(わたくし)どもスイム・イグジット・アシスタントは、大会側が用意する要員で、ある特定の選手をサポートするのではなく、上がってくる選手を全員平等にサポートするのが役目になっています。

 ――なるほど。スイム、バイク、ラン、3つの種目。それプラス競技から競技へ移行するトランジッションという所でご活躍されるイメージですよね?

えっとですね。私どもがサポートするのは、海から上がる所だけなんですね。おっしゃる通り、選手がスイムからバイクに乗る所の。それから、バイクからランというふうに乗り移るんですけど、その時はですね、ほとんどの選手が特にサポートなく、自らの力で移動していくことが多いですね。

 ――なるほど、陣川さんはいつから、スイム・イグジット・アシスタントに携わっていらっしゃるのですか?

私が初めてスイム・イグジット・アシスタントをやったのは、2014年になりますね。

 ――今から7年前。結構、前ですね。初めての時はいかがでしたか?

初めての時はまだ選手も少なくてですね、サポートするタイミングも少なかったんですね。で、その時はあっという間に終わってしまって、運んでたり、サポートしている感覚っていうのがちょっと薄かったんです。
その翌年、2015年になるとスイム・イグジット・アシスタントの人数も多く対応するようになりまして、その時、私はリーダーを務めさせていただきました。その時ぐらいからですね、チームとしてサポートするという感覚が出てきたと思います。

 ―そもそも、スイム・イグジット・アシスタントってなかなか聞きなれないというか、あまりふれられない役割だと思うのですが、陣川さんがきっかけとなったことが、何かあったのですか?

2017年、横浜大会エイジグループパラトライアスロンにて 写真・佐々木延江

志願したのではなく。その年のアサインと言いますか。我々審判員は、だいたいどこのポジションをやるかっていう役割分担が分かれるんですけども、その時のリーダーの方から「陣川さん、スイム・イグジット・アシスタントをやってもらえないか?」というようなお話をいただいて、やりました。ひょっとしたら、私は身長180ちょっとあって、体重もそこそこ。まあ、体格は比較的大きいほうなので、そういうところも買われたのかな、というふうに思ってます。

 ――なるほど。では審判員ではあったけれども、専門家ではなかったというところで、最初は難しいところもあったのではないですか?

そうですね。最初は、先ほどご紹介した2015年ですね、あの時20何名かで対応したんですけど、やっぱり運び方というか、サポートの仕方みたいなのもあまり慣れてなくて、選手を落としてしまったりとか、そんなこともありました。やっぱり運び方だとか、どういうふうにしたらいいかだとかいうのは、やりながらレベルアップしていった感じですね。

 ――具体的には、どんなところを工夫されているのですか? すごく難しそうだと思うのですが。

技術的に言うと、たとえば選手を抱え上げる時に、選手とできるだけ体を近づけて、できるだけ密着させて持ち上げるといいとか。でも、もうちょっと大事なことがあって、あせらない、ということかな、と思います。
選手はレース中なので、だいぶ急かすんですよね。急かされると、やっぱり気も焦ってですね、走ったりとかしちゃうんです。そうすると、運ぶ形も安定しないので、そこはゆっくりいきましょう、と。じゃあどうやったら、落ち着いてできるかな、ということも考えたんですけど、緊張してたらだめだよね、ということで、「笑顔でやりましょう」という心がけはしたんですよね。
で、「笑顔で、急がない」っていうのを、スローガン的に「キープ・スマイリング、ノー・ラッシュ」って僕たち言ってるんですけども、「笑顔で急がずに」というのが、基本的な一番大事な心がけだと思います。

 ――選手もいかにタイムを縮めるかっていうのを思ってしまうのですが、基本的なマインドの部分が大事になってくるのですね。

はい。今おっしゃった通り、選手は一分一秒というのを当然争ってますので、選手はそこのタイムを縮めたいと思っています。ただ我々がサポートするのも、平等である、というのが一番大事なんです。
当然、選手を落下させてはいけませんし、それは基本的なところなんですが、たとえばある選手は走って対応したけれども、ある選手は歩いて対応した、これだとダメなんですよね。どの選手も、歩いて同じペースでサポートすると、平等なんですよ。なので、選手は急かすんですけど、「我々は平等に対応してます」ということで、同じペースで歩く、という対応をするようにしています。

 ――できそうで、(でも)なかなか難しそうですね。

そうですね、はい。急かされるので。

2019年の横浜大会で 提供写真

 ――スイム・イグジット・アシスタントというと、本当にいろいろな障害の選手が登場するかと思うのですが、障害のクラスによって工夫していることは違ってきますか?

そうですね。障害のクラスはいろいろありまして、PTWCという両足が不自由なクラスの方、それからPTS2からPTS5という障害の重さによってクラスが分かれているのと、あとは視覚障害の方、と大きく3つに分かれます。
たとえば両足が不自由な選手は、両脇から2名で抱え上げるというようなサポートをします。その時に、抱え上げるための補助具、シート状の補助具を使うんですが、骨盤と言うか、腿(もも)の裏と言うんですか、その選手のどこが一番重心が安定するかというところを探って、抱え上げるというのが大事になります。
あと、両足が不自由でなくても片足が不自由な選手であれば、どっち側に立ってサポートするのがいいのかだとか、肩を貸してあげればいいのかだとかを、選手が泳いできてすぐ対応する時に、選手と「あうん」の呼吸を合わせるというか、どうサポートしてほしいかというのを察してサポートするのが難しいところかな、と思います。

 ――そういうのは、事前に訓練をされるのですか? それとも経験で積み重ねていくものなのですか?

基本的な動作と言うんですか、先ほど言いましたように、補助具を使って2名でサポートするとか、片足が不自由な選手をどうサポートするかとかは、どこかの会議室などで練習することもあります。また、ラポール横浜さんのプールで練習させていただいたこともあります。
基本的な練習方法はそういった所で行うんですけども、実際の現場でどうなるかというところは、前日に選手の試泳、練習の時間帯がありまして、その時に現場の様子を見て。試泳のサポートとう名目もあるんですけど、そこで直前にひと通り練習して、本番に臨む、という流れですね。

 ――それでは、試泳の時に、いかに本番の感覚をつかむかというのが大事になってきそうですね。

そうですね。スイムから上がってくる所がスロープになってますので、スロープの先がどこまであるか、意外と水中は見えなかったりするので、あまり奥まで行き過ぎるとSEA(スイム・イグジット・アシスタント)が沈んでしまいますので、どこまで行けるかな、と。あと、そこは潮の満ち引きがありますので、どういった位置になるかというのも少し見たりする、というのもありますね。

 ――選手のことだけではなく、潮の満ち引きとか、その時の環境もすごく大事になってきそうですね。

そうですね、はい。

2017年、横浜大会エイジグループパラトライアスロンにて 写真・佐々木延江

 ――横浜パラトライアスロンとの関わりについてもうかがいたいのですが、陣川さんはいつから携わっていらっしゃるのですか?

横浜大会は2009年ぐらいから。大会としては。私が審判員として参加したのは、2012年からになりますね。2012年に参加した時は、まだパラトライアスロンという業務ではなく、(トライアスロンの)バイクコースの審判員をしていました。そのあと、2014年にパラトライアスロンのSEAということで参加させていただいた、という流れになります。

 ――では本当に始まりの頃から。横浜パラトライアスロンは、どんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?

まず一つは、季節がいいですよね。5月というのが天候にも恵まれて、街中の新緑もきれいで、とても天候がいいし、気候も一番安定している時なので、そういったところは横浜大会のいいところかな、と。
あと、横浜大会のコースですよね。コースが横浜の桜木町から山下公園、ほんとに観光名所を回るコースなんですよね。なので、エリートの選手からも「横浜大会はすごくきれいな場所で行われるので、横浜大会が好きだ」というふうに言ってもらえることが多くて、とてもうれしいですよね。

 --陣川さんも、毎年参加されるのが楽しみですか?

そうですね。毎年5月になると、この横浜大会の準備を。まあ5月に大会があるので、年明けぐらいから横浜大会に向けた準備をやって、実際のレースに臨む、というのが毎年の恒例行事になってますね。

 ――今回、コロナ禍での開催ということで、特別何か気をつけていることや、気にかけていらっしゃることは、スイム・イグジット・アシスタントの役割の中でありますか?

コロナ対策というのは、目に見えないので、どう対策していいのかというのが、なかなかわからない。それに前例もあまりありませんので、ほんと手探りで、どういった対策が打てるかということを直前まで考えて、やっています。
たとえば、当然選手と密になる業務ですので、お互い感染しないような対策、マスクをどうしたらいいかだとか、目の粘膜から感染することもあるらしくて、ではゴーグルをした方がいいのではないかとか。あとマスクも、我々は水際で業務に携わりますので、マスクが濡れると呼吸がしづらいんですが、呼吸の隙間を作る器具があるらしいので、そういう物を活用したらいいんじゃないかとか。担当の方からも助言をいただいて、検討しているような状況です。

 ――万全を期しているということですが、スイム・イグジット・アシスタントの魅力やおもしろさとは、どのようなところですか?

審判員という業務が基にはなるんですけども、レースに一緒に参加するんですよ、要は。
審判員とSEAというのは立場が違うので全然別なんですけども、SEAって選手の一部なんですよね。選手と同じ目線でレースに出られる。あと、一瞬のコミュニケーションと言うんですか、横浜大会、エリートの選手も結構明るい選手が多くて、抱えて上がっていくタイミングで、(両手をサムズアップして)「うわぁー」みたいな感じで上がってきたりとか。そういう、一瞬のコミュニケーションなんだけれども、一体感が得られてレースに参加できる。参加できるって言ったら変ですけど、選手と同じ目線というか、同じ方向を向いて参加できるのが、SEAのおもしろいところかな、と思いますね。

 ――では、陣川さんは、気分はアスリート枠で?

そうですね、はい。細かい話をすると、私はどちらかと言うと指示を出す役で、SEAで選手を抱え上げる時に、「次にこういう選手が来るから、サポート二人入ってね」とか、「次は障害の軽い選手なので、一人で入れるよね」だとか、水際で指示を出す役なんです。
なので、どちらかと言うと、選手と一緒にレースをやってるっていうのは、一緒にやっているメンバーの方が、肌を接して、肩を並べて選手とレースしている感じかな、というふうには思いますね。

 ――では、SEAの監督みたいな。「チームSEA」の監督っていう感じで。

そうですね、はい(笑)。

2019年の横浜大会で 提供写真

 ――今回の大会でも、映像を通して観る方も多いと思うのですが、「こんな場面にぜひ注目してほしい」など、ポイントみたいなところはありますか?

パラの選手はですね、バイクで移動したりだとか、車いすで移動したりだとか、彼らにとってはすごく日常のことを突き詰めているんですけども、突き詰め方の迫力といったものを感じていただけるかな、と。
本来であれば、「現地で」って言いたいんですけど、こういうご時勢ですから、放送を見て声援をお願いしたいです。来年、再来年、ちょっといつになるかわからないですけど、コロナの騒ぎが落ち着いたら、ぜひ現地で見ていただきたいんです。けれども落ち着くまでは、そういったものを映像で見ていただければと思いますね。

 ――映像を通して選手の勢いとか、迫力を感じられたらいいですね。

そうですね、はい。

 ――最後に、横浜パラトライアスロンに向けて、ぜひ意気込みをお願いします。

最近、コロナという問題があります。その中での開催ということで、気をつけることだとか、制約事項だとかが、どうしても多くなってます。ただ、そういった対策を十分講じた上で、安全なレースができれば、というふうに思っています。
先ほどもお話しました通り、パラトライアスロンは、とても魅力的なレース展開が予想されます。迫力のあるレースが展開されると思います。なので、今年は現地で応援ということはできないんですけども、ぜひ映像でその迫力を見ていただければ、と思います。
その時に、選手を支えるSEAという役割が一瞬映ると思いますので、「ああ、そういうことをしている人なんだな」というふうに見ていただければ、と思います。

 ――ありがとうございます。陣川さんのご活躍も見守っておりますので、頑張ってください。

はい、ありがとうございます。

パラトラトーク2021共催のさくらワークス<館内>にて収録。記念撮影 写真・山下元気

(PARAPHOTO 2020 Tokyo:企画・メインパーソナリティ 丸山裕理、動画・スチール撮影 山下元気、構成・文 望月芳子)

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