関連カテゴリ: BEIJING 2022, PHOTO, クロスカントリースキー, コラム, ブラインドスポーツ, 冬季競技, 取材者の視点, 国際大会, 知り知らせる, 競技の前後左右, 障害 — 公開: 2022年3月12日 at 4:00 AM — 更新: 2022年5月25日 at 10:50 AM

地球温暖化とパラリンピック~カナダのレジェンド、ブライアン・マッキーバーが語るトレーニングの現状

知り・知らせるポイントを100文字で

自然を相手に戦うアスリート。カナダ代表ブライアン・マッキーバーからの提言。カナダ在住でマッキーバーを追いかけたMantoの翻訳と写真とともに。

北京パラリンピックのクロスカントリーは3月9日、スプリント種目が行われ、視覚障害のクラスではブライアン・マッキーバー(カナダ)が3分19秒5で優勝。これで通算メダル数は19個になった。

メダルの記録について取材陣に聞かれるとマッキーバーは、「数や色のことを考えるのは本当に意味がない。チームとして練習してきたことの方が重要」と、プロセスの大切さを何度も強調した。

スプリントでも金メダルをとったブライアン・マッキーバー(手前) 写真・中村Manto真人

このところの中国は暖かい。北京中心部では予想最高気温が20度になったり、山間部の会場でも15度を超える日が続いた。「パラリンピックの時期に雪解けが進むのは、今にはじまったことではない。特にソチくらいからそうだった」とアルペンスキー日本代表の小池岳太は話したが、2月の北京五輪中では夜にマイナス20度ほどまで下がる冷え込みだったため(まつ毛やマスクの中が凍ると聞いた)、わずか1ヶ月間のギャップに驚いた関係者も多いだろう。

半袖で仕事をするアメリカ人カメラマン(左) 写真・中村Manto真人

雪が柔らかくなると、スキーの足取りは重くなる。また、クロスカントリーは持久競技のため、レース中に帽子を脱いだり、レース後も半袖で過ごしている選手が多く見受けられた。

7日の20キロクラシカル、暑さでレース途中に帽子を脱いだ金メダルの川除大輝(日立ソリューションズ) 写真・中村Manto真人

この暖かさについてマッキーバーは、「北京大会1つを取っても、これだけ温度差がありすぎると、オリンピックとパラリンピックが全く別の大会に思えるよ。でもみんな条件は同じなので、気候の変化も含めて4年間の集大成として楽しんでいる」と話した。

ノルディックスキーの会場。コース以外に雪はない。奥に見えるのは五輪で使われたジャンプ台 写真・中村Manto真人

ただ、夏のオリンピック・パラリンピックでの猛暑、冬の雪解け……「地球温暖化」というワードが、会場にいると改めて実感としてわいてくる。マッキーバーの地元・カナダのアルバータ州では、4~5年前から強風が吹き荒れるなど気候が変わり、雪質の変化にトレーニング方法を合わせざるを得なかったそうだ。

さらに、アルバータ州やブリティッシュコロンビア州などカナダ西部では数年前から森林火災が起きており、高地トレーニングをするアスリートにとっては死活問題となる。「空気のきれいな場所を求めて移動をしなくてはいけない。ただ、いろんな場所で練習できることはいいことでもあるし、人との出会いもあるんだ。環境の変化に合わせて、選手も進化することが求められているのかもしれないね」。

表彰式でガイドと喜び合うマッキーバー 写真・中村Manto真人

自然を相手に戦うアスリート。マッキーバーの話を聞いて、その難しさを考えさせられた。

(編集校正・佐々木延江)

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