
2024国際親善女子車いすバスケットボール大阪大会がAsueアリーナ大阪(大阪市港区)にて2月16日から18日まで、イギリス、オーストラリア、タイ、日本の4カ国が参加して開催された。16日と17日には予選リーグが総当たり戦で行われ、最終日18日に予選1位、2位チームが優勝を、予選3位、4位チームが3位の座をかけて競い合った。

この大会は、2003年から男子代表の親善試合としてはじまり、2007年からは女子代表の親善試合として今年で20回目を数える(21年、22年は新型コロナウイルス感染症のため中止)。障害ある人のスポーツの普及・発展、国際交流に資すること、地域住民と選手団の交流や、スポーツの体験を通して国際親善と障害のある人への理解を深めることを目的としている。大阪市、(一社)日本車いすバスケットボール連盟、(社福)大阪市障害者福祉・スポーツ協会が主催する。この三者で協議し、交渉を経て招待国が決まる。今年はオーストラリア、カナダ、イギリスと日本が出場予定であった。しかし開催1ヶ月前になってカナダから出場辞退の連絡があり、急遽、12月に参加希望の打診のあったタイを招待することとなった。
2月16日、17日に開催された予選リーグでは、イギリスが3戦全勝、以下日本が2勝1敗、タイが1勝2敗、オーストラリアが3敗。優勝決定戦をイギリスと日本が、3位決定戦をタイとオーストラリアが争うことになった。

3位決定戦 タイ対オーストラリア/58対37
先月タイで開催されたアジアオセアニアチャンピオンシップス大会でも同じく3位決定戦を戦った両チーム(その時は47-41でオーストラリア勝利)。予選リーグでの対戦はオーストラリアが37対35と第3ピリオド終了時点までリードしていたが、第4ピリオドで逆転を許し、51-43でタイの勝利。この3位決定戦では、全てのピリオドでタイがオーストラリアを上回り58-37で勝利した。オーストラリアのキャンベルヘッドコーチは「今回のメンバーは4月(世界最終予選)に向けた過程のチームで、結果自体は気にしてない。4月にはベストメンバーで戦う」と大会を振り返った。

優勝決定戦 イギリス対日本/71-46
すでにパリ行きが確定しているイギリス。予選リーグでは、日本が16-15と第1ピリオドでリードを奪うも、第2ピリオド終了時点で22-35と逆転され、結局42-80と大差で敗れた。リベンジマッチとなる優勝決定戦は、主にディフェンスを修正し、第3ピリオドでは12-10とリードする場面もあった。しかし、それ以外のピリオドではイギリスが日本を得点で上回る。結局、71-46でイギリスは7回目の参加で初めての優勝を勝ちとった。試合後、岩野博女子日本代表ヘッドコーチは「得点が60点に届かなかったが、自分たちのやりたいバスケットをしっかりできた部分が多い、収穫の多い優勝決定戦だった」と振り返った。その他、北田千尋キャプテン、網本麻里、柳本あまね各選手がそれぞれディフェンスについての収穫を個々に語った。シュート、特にアウトサイドのシュート確率、ランニングしている味方へのパスの精度などを課題としてあげていた。

会場には盛り上げる様々な取り組みが

スポンサー各社の集客、SNSでの呼びかけ、小中学校でのビラ配り、大阪市障害者福祉・スポーツ協会などによる様々な活動を通して最終日は1600名の観客が足を運びゲームを楽しんだ。その他、事前に参加代表チームを2つの班にわけ、8つの大阪市内の小学校を訪れる選手との交流会も実施された。フレンドリーマッチということで、日本だけを応援するのではなく、イギリスがボールを握っている時は「GB、GB」と音声をながして声援を促していた。ハーフタイムでは地元のキッズチアチームが応援ダンスを踊るなど、初めての観戦で心を掴む様々な工夫を凝らされていた。

日本が参加しない3位決定戦でも、「レッツゴータイランド」、「オージー、オージー」と観客が応援した。オーストラリアに声援を送っている小学生4人組に話を聞くと、「学校でチラシをみて、無料なのでやってきた。負けているので、オーストラリアを応援する!」と話していた。初日の16日には小学校から高校生まで約2200人が来場してゲームを盛り上げた。実行委員会 の事務局次長 山口一朗氏によると、「観客数には波があり、一様に増えているとは言えない。ただ、学校関係の団体客を増やすよう心がけている」そうだ。
次は、同じ会場で開催される世界最終予選
今年8月にパリで開催されるパラリンピック女子車いすバスケットボールに出場できるのは、8カ国。アメリカ、ヨーロッパ、アジアオセアニア各ゾーンの大会を通じて4カ国(アメリカ、オランダ、イギリス、中国)が既にパリ行きの切符を掴んでいる。残りの4つの座をめぐってドイツ、アルジェリア、オーストラリア、タイ、スペイン、フランス、カナダ、日本の8カ国が競う「IWBF女子世界最終予選」が、大阪カップと同じAsueアリーナ大阪で、2ヶ月後の4月17日より4月20日に開催される。日本は、プールBでスペイン、フランス、カナダと予選リーグを戦う。最終日4月20日、プールA1位とプールB4位、同A2位とB3位、A3位とB2位、A4位とB1位のクロスオーバー戦が実施され、その勝者がパリ行きの切符を獲得する。

日本は、世界的に見ても成功しているこの大阪カップの実績を基に、最終予選会場に立候補し開催権を獲得した。開催国の特権として、どちらのプールに入るかA・Bそれぞれ3カ国が確定した後で決めることができた。岩野博ヘッドコーチは、「オーストラリアと別プールになることを確認した上で、クロスオーバー戦で勝てる可能性が高いプールを選んだ」という。世界最終予選の全ての試合はインターネットライブ中継が予定されている。パラリンピック東京大会で銀メダルを獲得した男子は、1月のアジアオセアニアチャンピオンシップス大会で4位となり連続12回出場してきたパラリンピックの出場権を逃した。「女子が(ロンドン、リオと)出れない時に男子が頑張ってくれた、今度は我々ががんばる番だ」と北田千尋キャプテンは語った。ぜひ、会場に足を運び、女子日本代表がパリ行きの切符を掴み取るよう後押ししよう。
大会結果:
2月16日
GAME1 日本(72-28)オーストラリア
GAME2 タイ(16-107)イギリス
2月17日
GAME3 イギリス(80-42)日本
GAME4 タイ(51-43)オーストラリア
GAME5 日本(67-50)タイ
GAME6 オーストラリア(18-87)イギリス
2月18日
3位決定戦 タイ(58-37)オーストラリア
優勝決定戦 イギリス(71-46)日本
ベスト5
フレンドシップ賞
ルーシー・ロビンソン(イギリス)
MVP
ジョイ・ヘイゼルデン(イギリス)
(校正・丸山裕理、佐々木延江)