関連カテゴリ: Tokyo 2020, イベント, オンライン観戦会, コラム, トラック・フィールド, 取材者の視点, 周辺事情, 夏季競技, 東京, 義足アスリート, 陸上 — 公開: 2021年8月27日 at 8:42 AM — 更新: 2021年9月9日 at 2:13 PM

義足エンジニア・遠藤謙による「東京パラ注目の義足アスリートの見どころ!(男性編)」

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ーーーレースは壮大なストーリーの最終章でしかない。スタートラインにたどり着くまでに描かれたストーリーを知っていると、もっと最終章が楽しめるかもしれません。

パラ陸上競技の楽しみ方(T44,T63,T64)

義足の段距離競技の中で最も速い下腿義足および下腿部機能障害(T44,T64,T63)のクラス。一番見所はシンプルに速く走るかっこよさです。義足に目が行きがちですが、まずは足元ではなく、彼らの走る姿を見てください。オリンピック種目の100mと全く同じように、ただ走る中にもドラマがあります。

2017年にロンドンで開催された世界選手権で 写真・吉田直人

スタートから、加速、トップスピードを迎え、減速期に耐えながらフィニッシュを迎える。どのフェースでも失敗は絶対に許されない。緊張に胸が張り裂けそうになりながら、100mのスタートとゴールの点をどのようにつなげるのかは選手それぞれの戦略によります。私は、10秒ほどの短い時間にどれだけ走ることを追求できるかという美学が100mのおもしろさだと思っています。

そして、スポーツのおもしろさは何も当日のレースだけではありません。

例えば、日本選手たちの話。2012年にこのクラスで初めて日本人として出場した春田純選手がこの道を切り開きました。そして、2016年には佐藤圭太選手がアジア記録を更新し、4x100mでは他の選手たちと協力して銅メダルに輝きました。次の年には池田樹生選手がリレーメンバーに加わり、再び銅メダルを獲得しました。池田選手は若手として、今後記録を伸ばしていき、トップの座を奪うのではと期待されながら、いまだに伸び悩むことになります。その間に、2018年には井谷俊介選手が突如現れ、アジア記録を更新して、アジアパラを制しました。このまま井谷選手が2020年パラリンピック代表に選出されるのではと思われていた矢先に、1年間の延期が決定し、その間実力を伸ばし、アジア記録をさらに更新した大島健吾選手が今回代表として選出されました。

もう1年ずれていたら、他の選手がアジア記録を更新していたかもしれませんし、また新たな新星が現れてたかもしれません。みんなパラリンピックを本気で目指していましたし、出場権を逃した選手は悔しくてたまらないと思います。選ばれた大島選手の走りには彼ら全員の思いも込められているのです。

パラリンピックでは、各国から様々なドラマを演じ、勝ち抜いてきた選手たちが走ります。選手にとってパラリンピックのレースは壮大なストーリーの最終章でしかなく、このスタートラインに立つまでにすでに勝負は始まっていたのです。当日のレースはもちろんのこと、選手たちがどのような経緯でここまでたどり着いたのかを知るともっと楽しめるかもしれません。さらにいうと、もしかしたら今回のパラリンピックもこれから始まるもっと大きなストーリーの序説でしかないのかもしれません。パラリンピックのレースだけでなく、今後の選手たちの活躍にもぜひ注目していただきたいです。

そして、彼らの足元を見てみると、選手によって様々なブレードが使用されていることがわかります。近年では様々な種類のブレードが市場に出まわるようになり、走り方も多様になってきました。選手の走り方の戦略、そのためのブレードの選定などに思いを巡らせるとまた競技を違った目で楽しめるかと思います。

パラリンピックの義足短距離競技を楽しむために、個人的な注目選手の研究者かつエンジニア目線のマニアックな紹介をさせていただくことになりました。日本の選手は様々なメディアが取り上げていると思うので、ここでは他のメディアではあまり取り上げない海外選手を中心に紹介します。読者の方がよりパラスポーツを楽しめる一助となればと願っています。

| ジョニー・ピーコック | フェリックス ・ストレング | ヨハネス・フロアー | アラン・オリベイラ | シャーマン・グイティ | ミハイル・セイティス | ジャリッド・ウォレス |

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