関連カテゴリ: コラム, ブラインドスポーツ, ブラインドラグビー, 取材者の視点, 夏季競技, 新着 — 公開: 2022年4月2日 at 8:21 PM — 更新: 2022年4月6日 at 3:32 PM

ブラインドラグビーがパラスポーツの第一歩。初の全国大会が日本で開催!アプローズ(合同チーム)が初優勝

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ブラインドラグビーの記念すべき第1回国内大会が開催され、アプローズ(合同チーム)が優勝しました! 2015年発祥の新しいパラスポーツ(パラフォトも今回初掲載)の魅力満載です。

2022年3月27日、第1回ブラインドラグビー国内大会が駒沢オリンピック公園第二球技場で開催された。
熱戦の末、アプローズ(合同チーム)が初優勝を飾り、東京が準優勝となった。

ブラインドラグビーは、視覚障害者(主に弱視)がプレーするラグビー。2015年にイングランドで考案され、日本には2018年に紹介された新しいスポーツである。世界ではイングランド・ウェールズ・フランス・イタリア・ニュージーランドの5ヶ国、日本国内では現在5チームが活動している。
日本での活動は元々東京中心だったが、チーム数を増やすべく、2021年度からTOTOから助成金を受け全国5ヶ所(新潟、宮城、大阪、愛知、福岡)で実技教室を実施。その結果、全国にチームができ、今回の全国大会開催に至った。国内でブラインドラグビー全国大会を行ったのは日本のみで、世界初の試みでもあった。コロナ感染拡大に伴い参加者は少数だったが、これから第2回、第3回と回数を重ねるにつれ、参加人数を多くしていく予定だ。ブラインドラグビー協会の橋本利之会長は、「ブラインドラグビーは、主に視覚障がい者がプレーするラグビーではあるが、老若男女問わずできるスポーツでもある。本大会のような大会を年2回行い、試合をする回数を増やし、試合を見てもらいながら面白いなぁと気づいてもらって地域でも広がっていって欲しい」と語る。

試合終了後の参加者集合写真

ブラインドラグビーのルール

ブラインドラグビーのルールを簡単に説明していく。1チームあたり7人で、そのうち5人以上が視覚障害者でなければならない。全盲の選手がプレーする場合は、その選手をサポートするガイド選手1名の配置が認められている。

全盲の選手(左)に拍手で進行方向を教えるガイド(右)

試合時間は前後半各10分ずつで、ハーフタイムは3分。1トライごとに5点で、トライ後のコンバージョンキックが成功するとさらに2点を追加できる。タックルは通常のラグビーのようなぶつかり合いではなく、両手で相手の肩からヒザの間に触ることで成立する。さらにタックルにいく選手は「ター、ター、ター」という声を掛ける必要がある。ボールを保持しているチームは、相手チームに6度タックルされるまで攻撃を続けることができる。

ボールを持つ相手にタックルをする様子

今大会では、世界で初めて、ボールの中に5個の鈴を入れたラグビーボールが公式球として採用されている。選手達が聞き取りやすいのとともに、芝生の上でも見易い視認性も兼ね備えている。

国内大会で採用された世界初鈴入りラグビーボール

※詳しくはブラインドラグビー公式ルール(国内)を参照のこと

優勝決定戦:アプローズ(合同チーム)vs 東京AB

1回戦は、アプローズ(新潟+愛知;大阪の合同チーム)、東京それぞれが2チームに分かれて対戦し、アプローズ1vs東京Bが17−0、アプローズ2vs東京Aが10−0の結果となった。本来トーナメント戦で行われる予定だった決勝戦だったが、当日試合内での怪我やコロナ禍での参加人数不足によりチームを分割しての試合続行が困難となったため、アプローズ(合同チーム)vs 東京ABという形で優勝決定戦が行われた。
前半開始早々、アプローズの原久志がトライを決め、平康裕のコンバージョンキックで先制7−0とリード。前半はこのまま7−0で終了した。後半に入り、東京の原聡がトライ、神谷考柄がコンバージョンキックを決めて7−7にしたものの、その直後にアプローズが素早いパスとランで相手陣内に持ち込み原久志がトライ、近藤正徳のコンバージョンキックで14−7とした。さらにアプローズは原久志が3つめのトライを決め19−7と突き放す。終盤、東京の神谷がトライを決め19−12と迫ったものの試合終了となった。コートを広く使って戦術的に動き回る様子は視覚障害者と感じさせない素晴らしい動きだと感じた試合だった。

アプローズがトライを決めた瞬間
コンバージョンキックを蹴る様子(視覚障がい者のみ蹴ることができる)
スクラムからボールを取り出し相手に味方にパスする様子
パスする相手を探しながら駆け上がる選手たち

ブラインドラグビー初の全国大会は、19−12でアプローズが勝利し優勝を飾った。

決勝の試合結果

優勝 アプローズ(合同チーム)
準優勝 東京

新しいブラインドラグビーへ一歩前進した大会 神谷考柄(東京)

新しいブラインドラグビーに一歩前進した大会 インタビューを受ける神谷考柄

Q.4年目での初の国内試合どうだったか?
A.選手たちも日頃練習しているので、普通の人がラグビーをやるのとはまた違って、当事者視覚障がい者に教えるってすごく難しくて。ただ普通の人にラグビー教えるだけでも難しいんですけど、当事者の人が見えない部分でどうやって取るのかとかそういうところから今まで積み上げてきたので、まぁやっぱり選手たちがこういう良い環境で日頃やってきたことを試合で試してチャレンジしてという環境ができてよかったのかなって思ってます。

Q.チームでは選手兼コーチ、教えたりするのも?
A.東京だと選手兼コーチ、もちろんコーチも別に置いてますが、一応当事者の方の目線というところでコーチもしながらです。

Q.ご自身が中高やっていた時は見えていた感じですか?
A.今と一緒位です。右目は光を感じるくらい。左が上の視野がなくて視力的には0.02とかで人の顔も目の前でくらいしか見えないくらい。なので全然見えていないです。

Q.どういう工夫をしていたのか?
A.中学の時は体がデカかったので、ボール持って突っ込めばトライを取れていたんです。でも高校とかになってくると強豪校とかも多くなってくるので、そう簡単にはいかなかった。前でぶつかるポジションだったので、その中でもパスを投げたりするんじゃなくて、ボールを持ってトライを取るためのアシストをするようなことをやっていましたね。ブラインドラグビーを始める前でも呼んで、胸に当てたり、ブラインドラグビーの基礎ですね、そう言ったのを工夫して中高ではやっていて、周りはもう全員一般の人なんでまぁ一緒に声かけとかしてもらいながらやってきましたね。結構その時の、自分が目が見えている人から声をかけてもらっていたというのもあるんで。ブラインドラグビーを立ち上げたときに、みんなに教える時はその時の経験がすごく役に立ちました。

Q.大学は筑波技大ですよね?そこでブラインドラグビーがあったらやっていたか?
A.ブラインドラグビーを作ろうっていう話をしていたので。でも視覚障害でぶつかるラグビーって危ないなぁっていう話をして、視覚障害者ラグビーってあんのかな?出来んのかなぁっていう話をしていて。社会人になったら、本当に話があって、日本でという話になりました。

Q.国際試合をしてみて国内試合の重要性も感じていましたか?
A.世界と戦っていくのも、その時は駆け足で10ヶ月くらいで日本代表を作って、イングランドと初のテストマッチところまでだったんで、その時よりは今は時間もあるので、こういう国内大会とか、今後各地にあるんで、どこかで練習とか交流試合とかとかそういう経験を積んでスキルアップしたところで世界にというのがすごくいいのかなぁと思います。

Q.今はチーム練習が主ですか?
A.月3回で、日曜日とかに練習しています。練習しているところは天然芝です。たまたま借りられたところがあるので使わせてもらっている。

Q.晴眼の人もいるのか?
A.何とか、6対6とか、ミニゲームとかするくらいは練習に来られるので、そういう時は晴眼者も混ぜながらやっています。

Q.弱視も全盲も晴眼者もみんなできるのがいいですよね。
A.今日はないんですが視覚障害者用ゴーグルというのがあって、あれを東京も持っているので、うちのチームの晴眼者にはみんなつけてもらって練習させたり、試合させたりして、同じ目線から見えてくるものもあると思うので、というコーチングのコーチングをしたりしています。

Q.神谷さん自身が上達したところは?
A.周りを動かしながらトライを取りにいく所、今は安定してできるのかなと。

Q.コミュニケーションはどうですか?
A.パスするだけのコミュニケーションじゃなくて、その人自身を知るコミュニケーション、いろんなコミュニケーションってあると思うので、そういうところからコミュニケーションをとっていけと教えていて、自分もたわいもない会話から、プレイだってみていても、こここうして欲しいとかあるの?とか、そういう細かく普通のことに関しても。行き帰りの道とかでも話して。しゃべる癖をつけろと。すごいコミュニケーションてこのスポーツで一番必要なプレーかな。ボール持って取って走ってっていうのって、いっちゃえば誰でもできるのかなと。この中でも、こんな楕円のボールを普段使わないじゃないですか。それを初心者の子たちが入ってくれて、まぁ今から覚えていきますとかいう中で、普通のボールでのないのを目が見えない人が投げて取ることをやらされるって、もう意味わからないかないですか。やらなくていいことじゃないですか。それをやるためのコミュニケーションっていろんな方面でいるので、そういうのは大事にしますね。

Q.今日の国内試合、率直にいかがでしたか?
A.全国のメンバーを集めて、こういういい場所を貸してくださったというのに感謝しています。こうやってわざわざ広げるために全国にいる人間で試合をしたというのは、これから次の年度、新しいブラインドラグビーの進み方、進むべき方向に一歩踏み出せたのかなぁという大会だと思いました。

Q.試合内容についてはどうでしたか?
A.東京引っ張ってきて全部負けたんでちょっとなぁと思ってますけど。日本代表キャプテンがいるチームが負けるってちょっとなぁって思ってますけど、自身としては悔しい試合にはなりましたかね。チームを勝たせる方向にコントロール出来てなかったかと思います。選手たちが浮き足立っているのが目に浮かんだんで、そういうメンタル強化をしていかなければならないですね。

Q.全盲と弱視の方に教えることの違いは?
A.弱視に教える方が難しいかもしれない。全盲は完全に見えていないので教え方が一択なんですけど、弱視って人によって見え方がバラバラなんで、全盲の方だと自分の欲しいとこどこというと胸の前、じゃこう叩いたらそこに飛んでくるから当ててキャッチしなさいと教えられるんですけど、それが弱視だと視野に入ったら取れるとか違つ視野から飛んでくると取れないとかそれを一定の教え方で教えることができない。全盲にはここにくるよとか教えるし、体で覚えるので吸収が早い。見えているからこそ弱視の方が難しいのかも。

Q.この大会はセレクションの位置付けですが、来年以降のモチベーションはどんな感じですか?
A.19年にイングランドに負けているので、代表に入って借りは返しにいかないといけない。その間にも世界にチームができてきたので、今のうちにちゃんとした大会でも世界一になったらいいかなと。

Q.ブラインドラグビーを広めるために世界一を届けるってことですか?
A.国内もそうですけど、日本代表としてやっていくのは戦って勝ちたいというのもあるんですけど、今日本でも世界でも小さい頃から目が悪い子って多いと思うんですよね。その子たちに他の競技だと何か体につけないといけないんだけど、アイマスクだったり。でもブラインドラグビーはつけないんで。見え方が色々あっても、将来自分の体だけで、すごいグラウンド走って投げるっていう可能性があるんだよというのを証明してあげたくて、それをその子たちのやりたいスポーツの道筋にできたらなぁと思っています。

全盲プレーヤー 小岩井亜樹(東京)

インタビューを受ける小岩井亜樹

Q.自身のうまく行ったところは?
A.試合で今まで練習したことがそれなりには出せたと思うが、試合の感覚を感じられたことは良かったかなぁと思います。

Q.試合ならではの難しさは?
A.試合になると全員練習とは違った緊張感があって、声かけなどのコミュニケーションが練習ではできていたところができないとかということがあるので、試合間は経験しないと分からないことだなぁと思いました。

Q.ガイドの方とのコミュニケーションは?
A.1試合目はガイドをつけずにチームメイトにサポートしてもらったのですが、そこのコミュニケーションはうまく行った方ではないかと思います。

Q.全盲の方がやる難しさは?
A.全盲プレイヤーが少ないので、見えているのを基準としているので、その中でどう動くかというのが、攻撃を重ねていくとボールについていけなかったりとか、自分がどこにいるのか分からなくなったりとかというところがまだあるので、そういうところは難しいところだなぁと思います。

Q.やっていて楽しいところは?
A.ボールを持って前に進めて、最終的にトライを取れたら楽しいですし、後はパスがつながる瞬間も楽しい瞬間だと思います。

Q.ブラインドラグビーとの出会いは?
A.2年前、スタッフの紹介で教えて頂いた。もともとブラインドラグビーに興味があって、たまたま共通の知り合いがいてその方に紹介して頂いた。今は月に3回くらい練習しています。

Q.一番うまくなったところは?
A.ボールを持ってあたりに行くというところは、ここしばらくで成長できたところかなぁと思っています。

エキシビジョンマッチ(体験会)開催

試合の合間にエキシビジョンマッチとして体験会が行われた。まずはブラインドラグビー独特のルール説明が行われた後、弱視擬似体験用のアイパッチを身につけて実際のコートで制限時間5分の試合を行った。

ブラインドラグビーの指導を受けるエキシビジョンマッチ参加者

筆者も実際にアイパッチをつけて試合に参戦した。私がつけたアイパッチは右目が右端、左目が下端しか見えないものであるため、コートに立つと敵味方がどこからやってくるのか、ましてやボールがどこにあるのかすら分からないことに怖さを感じて動けなかった。

弱視擬似体験用のアイパッチをつけた筆者

そのためガイドの方が「そうとめ さん、カニさん歩きで右」、「手がなっている方に来て」、「ボールは左!」などと声で教えてくれた結果、1回だけボールを受けてパスすることに成功した。やってみると自身の頭の中にコートの様子がイメージできていないと動くことが難しいことが分かった。5分だけでもものすごい集中力が必要で普段では味わえない頭の疲れを感じた。今後も全国で体験会が行われるそうなので、近くで行われる時には、男女年齢問わず体験してみて欲しい。

(編集校正=久下真以子、佐々木延江)

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