公開: 2026年5月17日 at 16時00分 — 更新: 2026年5月18日 at 11時51分

セルビアのブラインド・ペアが優勝。世界最高峰が激突した横浜で、日本の木村・宇田、保田が表彰台に!〜横浜パラトライアスロン〜

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晴天に恵まれた横浜に、世界トップレベルのパラトライアスリートたちが集結した。
スイム、バイク、ランの3種目で速さを競い合う究極のレース。2026ワールドトライアスロンパラシリーズ横浜は、“絶対王者”たちの強さ、日本勢の意地、そして国境や立場を越えて交差するアスリートたちの姿を映し出した。

2026年5月16日(土)、ワールドトライアスロン・パラトライアスロンシリーズ横浜大会が開催され、セルビアのLazar Filipovic(ラザル・フィリポヴィッチ/PTVI B1/全盲)とガイドのStrahinja Trakicが視覚障害クラス(PTVI)で優勝した。自転車競技出身の36歳は、セルビアでただ一人のパラトライアスリートだ。

セルビアの男子PTVI Lazar Filipovicが最高のパフォーマンスで優勝

PTVIクラスで優勝した、全盲のセルビアのLazar Filipovic(右)とガイドのStrahinja Trakic(左)のランパート。 写真・秋冨哲生

男子PTVIクラスは、セルビアのペアがリードするハイスピードレースとなった。ラザルは、スイムでは……遅れをとるが、バイクで圧倒的な強さを見せて首位を奪ったあと、ランでは弱みを見せない粘りのレースを展開した。終盤、オーストラリアのSam Harding(B2) に猛追されたが、冷静にバイクで蓄えたリードを守り切り、20秒差の接戦を制して55分41秒で優勝した。

スイムを11分台で終え、バイクへ向かうLazar Filipovic(左/全盲)と、ガイドのStrahinja Trakic(右) 写真・山下元気
セルビアのLazar Filipovic(後ろ)とガイドのStrahinja Trakic(前)のバイクパート。 写真・秋冨哲生

「(スイム・バイク・ランの)すべてにおいて良かった。大会運営も素晴らしく、これまでのベストの走りができた」と話すラザルは、2006年に自転車競技からトライアスロンに転向した。2歳年下のStrahinjaは2人目のガイドで同じ自転車出身、10年以上組んでいるという。東京2020パラリンピック(2021年開催)は交通事故により出場できず、パリ2024では10位、パラリンピックでのメダルはまだないが、初めての横浜は、ロサンゼルス2028の表彰台が見えた一戦となった。次のレースは6月・スペインで開催されるヨーロッパ選手権に出場するという。

男子PTVI表彰式。1位、Lazar Filipovic B1、2位、Sam Harding B2、3位、Maxime Gayet B2 写真・山下元気

晴天に恵まれた横浜・山下公園周辺特設コースは、水温20.2度、気温20.8度というコンディションのもと、エリートパラには世界から約80名のトップアスリートが集結し、スプリントディスタンス(スイム750m/バイク20km/ラン5.0km、計25.75km)で競い合った。

今大会では、“絶対王者”の圧倒的な強さ、新世代の台頭、そして日本勢の粘り強い表彰台獲得など、多くのドラマが生まれた。

男子PTWC 木村潤平、日本勢の価値ある銅メダル

男子PTWC(車いす)クラスでは、オーストリアの Thomas Fruehwirthが圧巻のレースを披露した。
55分09秒というタイムで2位に3分以上の大差をつける独走優勝。スイムから主導権を握り、バイク、ランでも後続との差を拡大し続けた。

男子PTWC表彰式。1位、Thomas Fruehwirth H1(AUT)、2位、Louis Noel H2(FRA)、3位、木村潤平H1  写真・秋冨哲生

その中で、日本の 木村潤平は、世界トップのハイペースに呑み込まれることなく、自身のレースを冷静に組み立てた。59分03秒の好タイムで3位に入り、自身を育んだ横浜の大舞台で価値ある銅メダルを獲得した。

表彰式で声援に応える木村潤平 写真・秋冨哲生

世界のビッグネームが揃うシリーズ戦での表彰台は、日本パラトライアスロン界にとっても大きな意味を持つ結果となった。

男子PTS4 “絶対王者”アレクシ・アンカンカンの支配

男子PTS4では、パラリンピック王者 Alexis Hanquinquant(FRA) が、まさに“絶対王者”と呼ぶにふさわしい圧倒的なレースを見せた。

2位に2分44秒差でフィニッシュした、Alexis Hanquinquant(FRA) 写真・山下元気

スイムから先頭に立つと、その後も差を広げ続け、54分30秒でフィニッシュ。2位の Antoine Lamarche Poulain(FRA)に2分44秒差、3位の 宇田秀生 には5分以上の差をつける独走劇だった。

男子PTS4表彰式。1位、Alexis Hanquinquant(FRA)、2位、Antoine Lamarche Poulain(FRA)、3位、宇田秀生 写真・秋冨哲生

一方、宇田は粘り強いレース運びで3位表彰台を確保。世界王者級の選手たちが集まる中で、日本勢として存在感を示した。

表彰式での宇田秀生 写真・秋冨哲生

女子PTWC ローレン・パーカーの“男子トップ級”のスピード

女子PTWC(車いす)では、オーストラリアの Lauren Parker が驚異的な強さを見せた。

ハンドバイクを漕ぐLauren Parker  写真・秋冨哲生

59分39秒というタイムは、女子選手で唯一の1時間切り。男子トップ層にも迫るハイレベルな記録であり、2位の Emelia Perry に1分45秒差をつけて優勝した。

女子PTWCの表彰式。1位、Lauren Parker H1(AUS)、2位、Emelia Perry H1(USA)、3位、Jessica Ferreira H1(BRA)。冬のミラノでも対決したライバルのKendall Gretschはふるわず4位だった。 写真・秋冨哲生

特にバイクとランでの推進力は際立っており、今大会に出場した全パラアスリートの中でも屈指のインパクトを残した。

女子PTS3 戦時下の選手たちが競演 中立選手Plotnikovaが頂点、パーキンソン病と向き合うイスラエルのNevoが銅メダル

PTS3の表彰式。1位、Anna Plotnikova(AIN)、2位、Serena Banzato(ITA)、3位、Atalia Nevo(ISR) 写真・秋冨哲生

女子PTS3では、中立選手(AIN)として出場したロシア出身の Anna Plotnikova が1時間13分17秒で優勝した。

2位にはイタリアの Serena Banzato、3位にはイスラエルの Atalia Nevo が入った。

イスラエルの Atalia Nevoはパーキンソン病と戦う51歳。 写真・秋冨哲生

51歳のネボは、パーキンソン病と向き合いながら競技を続ける選手でもある。横浜では粘り強いレースを展開し、本シリーズ銅メダルを獲得した。

表彰式では、戦時下にあるイスラエルの選手と、中立資格で出場するロシア出身選手がハグを交わし、互いを称え合う姿も見られた。分断が続く世界の中で、スポーツが国境や障害を越えて交わる瞬間を感じさせる表彰台となった。

その他の主な結果

男子PTS2
1位 Mark Barr(USA)
2位 Wim De Paepe(BEL)
3位 Mohamed Lahna(USA)

日本の 中山賢史朗 は5位(1:16:15)。

男子PTS5
1位 Bence Mocsari(HUN)
2位 Jack Howell (AUS)
3位 Martin Schulz (GER)

1位から3位まで30秒以内という大接戦となった。

去る3月、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック、ノルディック競技に出場したばかりの佐藤圭一は完走。 写真・山下元気

日本勢は安藤匠海 が9位、 佐藤圭一 が10位だった。

女子PTS2

女子PT2表彰式。1位、Hailey Danz(USA)、2位、Anu Francis(AUS)、3位、保田明日美 写真・秋冨哲生

1位 Hailey Danz(USA)
2位 Anu Francis(AUS)
3位 保田明日美(JPN)

日本の 保田明日美 が3位で表彰台を獲得。 秦由加子 が4位で続いた。

バイクパートを走る、秦由加子 写真・秋冨哲生

女子PTVI
1位 McClain Hermes(USA)
2位 Maggie Sandles(AUS)
3位 Taylor Talbot(USA)

日本の 竹内真子 (ガイド:巌淵知乃)は6位だった。

今回の横浜大会は、 Alexis Hanquinquant(FRA) や Lauren Parker(AUS) といった“絶対王者”たちの圧倒的な強さをあらためて印象づけるレースとなった。
同時に、 Lazar Filipovic(SRB) が、蓄えた実力を発揮し、着実に結果を残す新たな存在感も際立った。
そして、日本の木村潤平や宇田秀生、保田明日美が世界トップと渡り合い、表彰台を獲得。2028年ロサンゼルスに向け、日本チームにとっても大きな手応えを残す大会となった。

(写真・秋冨哲生、山下元気 校正・そうとめよしえ、川村翼)

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