関連カテゴリ: PYEONGCHANG 2018, 取材者の視点, 周辺事情, 車いすカーリング — 公開: 2018年3月17日 at 2:54 AM — 更新: 2018年3月17日 at 8:13 AM

ソウル市長や選手村村長も応援!パラでもカーリングブーム。国や自治体でパラスポーツを支える。

知り・知らせるポイントを100文字で

投稿はこちら(メールソフトが開きます)

江陵ホッケーセンターで行われている試合。韓国は明日カナダと3位決定戦に臨む(写真・矢野信夫)
江陵ホッケーセンターで行われている試合。韓国は明日カナダと3位決定戦に臨む(写真・矢野信夫)

いま韓国は空前のカーリングブームだ。「めがね先輩」でおなじみのカーリング韓国代表主将の金恩貞(キム・ウンジョン)選手など、オリンピックではカーリング選手たちの活躍に注目が集まった。
また、街中ではオリンピックを契機にグッズやカーリングゲームの売上が伸びるなど、一躍人気スポーツのひとつとなっている。

そうした中、現在開催中の平昌パラリンピックでは、車椅子を使用した「車椅子カーリング」の試合が開催されている。今大会では日本チームの出場はないが、開催地・韓国では一次リーグトップで準決勝進出を決めるなど、代表選手たちの活躍に沸いている。

車椅子カーリングは、下肢に障害のある車椅子使用者が対象で、男女混合の1チーム4名体制で行われる。1試合は8エンドまであり、1エンドにつき各選手2個ずつストーンが与えられ、交互でハウスと呼ばれる円に向かってストーンを滑らせる。健常者のカーリングと基本的なルールは同様だが、健常者のカーリングではブラシでこすりながらストーンの速さや角度を調整する一方、車椅子カーリングの場合はブラシでこすることが禁止されている。投げた後の調整ができないぶん、投球の技術や戦略が必要なスポーツだ。

3月14日には韓国対スウェーデンの試合が行われ、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長夫妻や選手村の朴殷秀(パク・ウンス)村長も応援に駆けつけた。この日の試合は第1エンドで韓国が2点を先制。第3エンド、第4エンドでスウェーデンに点を取られるも、その後、再び点を取り返し、試合は4ー2で終了。ここまで6勝中の韓国は、勢いそのままに7勝を飾った。
試合を観戦したソウル市長は「選手たちの活躍が素晴らしい。楽しく観戦した」と声を弾ませた。

韓国・スウェーデン戦に訪れた、朴元淳ソウル市長と選手村の朴殷秀村長
韓国・スウェーデン戦に訪れた、朴元淳ソウル市長と選手村の朴殷秀村長

韓国チーム活躍の背景にあるのは、積極的な競技環境の整備だ。韓国では2016年、ソウル市内にカーリング実業団のチームが結成され、選手の生活や競技を支える体制を整えた。現在の韓国代表選手のうち3名はこの実業団の出身である。

また、昨年1月には韓国北西部の京畿道利川市(キョンギド インチョンシ)に車椅子カーリング専用のカーリングホールを開館。試合やトレーニングの様子を分析できる遠隔操作カメラやパラリンピックの競技場と同じ氷質に仕上げたレーンを設けるなど、選手たちの実力向上に大きく貢献した。
選手村の朴村長は「国だけでなく、自治体によるサポートも広がっている。ソウルではカーリング、平昌のある江原道ではホッケー、といったように街ごとに盛り上げている競技がある」と語った。

パラスポーツへの支援は今に始まった事ではない。大きなきっかけは、1988年のソウルパラリンピックの開催だ。
朴村長によれば、韓国ではソウル大会以降、パラスポーツへの関心が高まり、国民の期待と共に、障害者スポーツ界が支援を訴える運動や声を挙げてきたという。
そして、2003年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権以降、障害者スポーツ協会が健常者のスポーツ協会と同様の支援が受けられるようになったり、オリンピックとパラリンピックのメダリストが同額の賞金を与えられるようになったりと、予算や地位の向上が進んだ。韓国ではこの30年でパラスポーツを支える土壌が着実につくられていた。

専用のカーリングレーンで練習を積んだ韓国代表チームの選手たち(写真・矢野信夫)
専用のカーリングレーンで練習を積んだ韓国代表チームの選手たち(写真・矢野信夫)

現在のカーリングブームについて朴村長は、「いま国民全体が熱くなっている。車椅子カーリングにも関心が高まっていて嬉しい」とした上で、ブームだけで終わらない未来を見据えた。「今回の平昌パラリンピックでは文在寅(ムン・ジェイン)大統領が現職の大統領としてはじめて選手団壮行会に出席し、選手たちに声を掛けた。また、大統領が開会式と閉会式のどちらにも出席するのは極めて異例なこと。それだけ障害者スポーツに興味を持ってくれることで、今後はパラスポーツ全体がもっと発展していくだろう」と期待を寄せる。

ソウルパラリンピックから30年。韓国国内ではパラスポーツを取り巻く環境が大きく変化した。2018年の平昌パラリンピックは未来に何を花開かせるのか。大会後の歩みにこそ真価が問われている。

(校正・佐々木延江)

この記事にコメントする

記事の訂正はこちら(メールソフトが開きます)