「ヒューリック・ダイハツ Japanパラバドミントン国際大会2023」が11月7日から12日までの6日間にわたり国立代々木競技場第一体育館(東京都渋谷区)で開かれた。36カ国・地域から197人が参加して19種目が行われた。10月に開催された杭州アジアパラで金2、銀1、銅2を獲得した日本代表選手らにとって、ホームで迎え打つ戦いとなった。総観客数は約1900人だった。
今大会はパリパラリンピックの出場条件となるポイントレースの大会となっている。出場権は、パリ2024パラリンピックポイントレース(2023年1月-2024年3月)の対象大会に最低3試合出場してポイントを獲得、かつ最大6試合のポイントの合計点での上位に与えられる。今大会以降に行われるポイントレース対象の12月ドバイ国際大会、2月の世界選手権(タイ)の前哨戦として選手の現在地を知る大会となった。
決勝戦はアジア勢が席巻
決勝進出国は、インド/インドネシア/タイ/台湾/中国/マレーシア/香港/日本/ベルギーの9カ国でほぼアジア勢が占めた。日本以外の国では、中国の男女車いすダブルス(WH1-WH2)や女子シングルス(SL4)/(SU5)、インドの男子ダブルス(SL3-SL4)や男子シングルス(SL3)は戦術で目を見張るものがあった。今大会の優勝でポイントを積み重ねたこれらの選手が来年のパリパラリンピックでも日本を脅かす存在となることは間違いない。
決勝に進出した日本代表
(文章内のパリパラリンピックランキング(以下パリパラランキング)は2023年11月14日現在のものを記載)
梶原大暉(男子WH2/日体大)
パリパラランキングで1位の梶原は、チャン・ホゥユェン(香港)との試合は69分にわたる長丁場だったが、21−15、21−15で勝利し優勝した。「長くなることは分かっていたのでストレートで勝ててよかった。アジアパラの時に最初に攻めすぎて疲れたりとかミスが出たりしたので、今日は攻め急がないというゲームプランにした。後ろに張り付かせて前に落とす作戦が試合後半にはできて良かった」
里見紗李奈(女子WH1/NTT都市開発)
パリパラランキング1位で今大会に臨んだ里見は、メン・ルー・イン(中国)に21−11、21−19で勝ち金メダルを獲得した。「昨日ダブルスで負けた相手だったので、絶対に勝ちたいという思いと連勝記録を伸ばしたいという気持ちが強かったので優勝できてほっとした。いつもよりしんどくなかったのが今回の試合の大きな収穫。ドロップショットで相手を前に出すことができたり、ボディー周りのスマッシュも効いたので、ダブルスの負けは無駄ではなかった」
藤野遼(女子SL4/GA technologies)
パリパラランキングでは2位の藤野だが、チェン・フーファン(中国)に5−21、12−21で敗れて銀メダル。アジアパラで負けた相手にリベンジはならなかった。チェンは出場機会が限られているからか世界ランキングでは9位だが他の選手とはレベルの違う強さのようだ。「アジアパラで対戦した時よりはやりやすかったが、自分のミスが多くて、苦しかった。ことごとく右側をねらわれ、相手のカットも鋭かった。他の人と球の質が違うので、上のレベルの人と練習して自分のレベルを上げていくしかない」
西村啓太・松本卓巳(男子ダブルスWH1-WH2)
パリパラランキング6位の西村啓汰(パシフィック)/松本卓巳(創政建設)ペアは4−21、15−21でマイ・ジアン・ペン/クー・ジー・モー(中国ペア)に敗れた。とはいえ、西村・松本ペアが決勝に進出し、東京パラ金メダルのペアと渡り合った経験は彼らのさらなる成長に繋がっていくだろう。「中国ペアはパワーがあるので、後ろを使っていく作戦だったが、押し負けると焦りが出てきてミスが多くなった。2ゲーム目に入って息が合うようになってからはクロスカットも出せるようになった。相手の間を抜くショットで相手がひるむこともあり良かった」
中国ペアを攻略して再び頂点を目指す里見・山崎悠麻ペア
アジアパラの時と同じ中国ペアに負け、決勝には進めなかった東京パラ金メダル里見・山崎ペアだったが、「アジアパラの時はすごく差があるように感じたが、今日はなくなったと思えた。試合での疲労度も少なかったし、やっていて楽しかった。とはいえ山崎に球が集まった時に里見が山崎と入れ替わるローテーションができず対応しきれなくなったところなど今後二人で擦り合わせていきたい。負けたのは悔しいが、アジアパラでの反省点を活かして試合ができたので、次に勝てる手応えは感じた」と現状を分析した。次に対戦する2月の世界選手権までの時間をしっかり対策に使って勝ちにいく。
統括
全試合の終了後に、今大会の日本勢について草井篤監督が総括した。 金2個、銀2個、銅4個のメダルを獲得したことについて、「里見と梶原のシングルス優勝というのは、狙い通りの部分ではあった。一つ残念だったのは、里見・山崎のダブルス。先月の杭州アジアパラと同じく中国ペアに敗れてしまった。中国が強いというよりはコンビネーションだったり簡単なエラーを出してしまうこちら側の問題。そこを反省して次に繋げたい。若手の西村・松本が決勝に進出し結果を出してくれたのは嬉しい。全体的にはしっかりパフォーマンスを出してくれたので良かった」と評価した。
パリパラリンピック出場枠120名をかけたポイントレースは今大会前に14大会実施されている。第1次選考枠となるダブルスで、男子車いすは日本の梶原・村山浩ペアが2位、女子車いすは里見・山崎ペアが1位で出場をほぼ確実にしている。立位混合は各国1ペアの限定条件があるので、今井大湧・伊藤則子ペアが10位、藤原大輔・杉野明子ペアが12位のいずれかが選ばれる可能性がある。今大会で活躍した中国選手は出場回数が少ないこともあり、車いす、立位ともに確定圏内まで来ていない。残り2大会でどこまで上がってくるか見守りたい。上記以外で出場確実な日本代表は立位の藤野・今井・藤原・杉野で合わせて10名弱である。
今後のポイントレースを制し、一人でも多くの選手が出場権を得て、パリで活躍することを願っている。
<参考>
パリパラリンピック出場条件
◎パリ2024パラリンピックポイントレース(2023年1月-2024年3月)の対象大会に最低3試合出場してポイントを獲得、かつ最大6試合のポイントの合計点での上位にいる。
その上で、以下の選考順で決定される。
(第1次選考)ダブルスのポイント上位6ペア
(第2次選考)ダブルス出場者を除くシングルス上位者
(第3次選考)バイパルタイト枠(開催国枠、大陸枠など)
(写真協力・佐山篤/BestSmile Japan 校正・久下真以子、地主光太郎、佐々木延江)