ミラノ・コルティナ2026パラリンピックの車いすカーリング混合ダブルスは11日(日本時間22時30分)、大会最終日の決勝戦を迎えた。頂点を争ったのは、予選ラウンドを6連勝で突破した中国のWang Meng/Yang Jinqiao組と、攻撃力と勝負強さが光る韓国のBaek Hye-jin/Lee Yong-suk組。アジア勢同士の対戦となった決勝は、氷上のわずかなズレが勝敗を左右するハイレベルな一戦となった。

中国は経験と若さが融合したペア
Wang Mengは平昌2018パラリンピック混合チームの金メダリストで、ドローショットの精度と試合運びの巧さが光る。一方、パートナーのYang Jinqiaoは24歳の若手選手で力強いテイクアウトと落ち着いた判断が持ち味。予選6連勝の原動力となった。
韓国は経験豊富なBaekと旗手のLee
Baek Hye-jinは北京2022パラリンピックにも出場した経験者で、攻撃的なショットが武器。一方のLee Yong-sukは開会式で韓国選手団の旗手を務めた存在感のある選手で、国内大会で実績を積んできたカーリングのスペシャリストだ。また、Baekの夫であるNam Bong Kwang 選手が混合チームで出場しており、夫婦で別種目に挑む姿も注目を集めた。

激闘の決勝戦
■ 第1エンド:
中国はWangとYangが正確なテイクアウトを連発。韓国のラストショットがわずかに外れ、中国が3点を先取して主導権を握った。
■ 第2エンド:
韓国は丁寧にドローを重ねるが、Yangのダブルテイクアウトが韓国の布陣を崩す。韓国は1点止まりで3–1。
■ 第3エンド:
韓国はLeeがダブルテイクを狙うも単発に終わる。中国はWangの芸術的なカラームショットが光る場面も。カラームショットとは、自分のストーンを別のストーンに当て、その反動で狙ったストーンを動かすショットのこと。中国が自国のストーンを押して、中心に近い4フットへ。2点を追加し、5–1。
■ 第4エンド:
Baekが8フットにドローを決めて1点を返す。前半終了で5–2に。
■ 第5エンド:
Leeのドローがボタン付近に決まりYangは、ガードに当てるミス。韓国が1点スチールし5–3。

パワープレーが試合を動かす
試合の終盤、金メダルを懸け、中国・韓国はパラープレーで応酬。パワープレーとは“流れを変える切り札”。ストーンの初期位置がサイドに移るため、攻めやすくなり複数得点を狙える。
■ 第6エンド:
互いにテイクアウトを応酬する中、最後に残ったのは中国の石。中国がパワープレーで7–3と突き放す。
■ 第7エンド:
韓国もパワープレーを選択。中国が珍しくテイクアウトを外し、韓国が3点を奪って7–6。1点差に縮める。
■ 第8エンド:
Leeがボタン付近に完璧なドロー。Yangがガードに当てるミスもあり、韓国が執念の1点を奪って7–7の同点に。

勝負を決めた最後の一投
延長は韓国先攻。互いに正確なショットで応酬する中、Leeのラストショットは中国の石を完全には弾き出せず、1つ残る。そしてBaekのラストショットがわずかに外れ、その石が勝負を決めた。9−7で試合終了。優勝が決まった瞬間、Wangは感激のあまり涙した。中国が混合ダブルス初代の金メダリストに輝き、韓国はこの種目で初の銀メダルを獲得した。

ラトビアが延長戦を制す
ラトビアとアメリカの3位決定戦も延長戦までもつれ、11–10の大接戦となった。最後はラトビアが勝ち切り、初の銅メダルを手にした。

中国ペア「ようやく表彰台に立てた」
優勝した中国ペアが試合後、満面の笑みで喜びを語った。「この4年間、ずっと努力してきました。優勝できて本当に誇らしいし、支えてくれた皆さんに心から感謝しています。たくさんの方に助けられ、ようやくこの表彰台に立つことができました」と胸を張った。
決勝で激突した韓国チームについては「とても強い相手でした。後半は私たちより良いパフォーマンスをしていたと思います。回復力も忍耐力もあって、本当に素晴らしいチームでした」とライバルを称賛。ペアの関係を問われると、Yangが「完璧です」、Wangも「とても成熟していて安定していました」と互いを認め合い、強さの秘密をのぞかせた。
ラトビアペア、日本戦では「落ち着いていた」
銅メダルを獲得したラトビア(Poļina RožkovaとAgris Lasmansペア)は、同国初の冬季パラリンピックでのメダルという快挙。Agrisは「誇りに思います。ラトビア出身であることも誇りです」と力強く語った。 Rožkovaは「順位には満足していませんが…」と悔しさをにじませたが、インタビューアーから「誇りに思うべきですよ。素晴らしいパフォーマンスでした」と声をかけられると、「ありがとうございます」と笑顔を見せた。
準決勝進出をかけた日本戦については、Rožkova「私たちは落ち着いていて冷静でした。自分たちのショットを決め、日本チームは決められなかった。その結果、良い試合をお見せできたと思います」と振り返り、「トップ4に入りたかったので、もう負けるわけにはいきませんでした」と勝負への執念を明かした。
2人の強みについては「Agrisは冷静で、私は感情的。でもそのバランスがチームとしての強さにつながっています。さらに、2人とも両方のポジションをこなせるので、必要に応じて交代できますし、良いコーチにも恵まれています」と胸を張った。
ミラノ・コルティナ2026パラリンピック 車いすカーリング 最終順位
1位 中国
2位 韓国
3位 ラトビア
4位 アメリカ
5位 イギリス
6位 日本
7位 エストニア
8位 イタリア
<初めて読む人のためのカーリング用語ミニ解説>
ハウス:得点エリア。4つの円が重なった的のような場所。
ボタン:ハウスの中心点。最も価値が高い場所。
8フット・4フット:ハウスの円の大きさを示す言葉。
o8フット=外側から2番目の円
o4フット=最もボタンに近い円 →「4フットに置く」は“中心に近い良い位置に止める”という意味。
ドローショット:狙った場所に石を止めるショット。
テイクアウト:相手の石を弾き出すショット。
スチール:後攻が有利な競技で、先攻が得点すること。
カラームショット:自分のストーンを別のストーンに当て、その反動で狙ったストーンを動かすショット。主に相手のストーンを弾き出したり、自分のストーンを有利な位置に押し込むために使われ、正確な方向性と力加減が求められる高度な技術。
パワープレー:混合ダブルス特有の攻撃的戦術。ストーンの初期配置をサイドにずらし、複数得点を狙いやすくする。
これらを知ると、試合の駆け引きが一気に面白くなる。
(編集・校正 丸山裕理)






