関連カテゴリ: サッカー, ブラインドサッカー, ブラインドスポーツ, 国内大会, 夏季競技, 新着, 東京 — 公開: 2023年11月23日 at 10:26 AM — 更新: 2023年11月28日 at 1:46 PM

ブラサカ日本選手権開幕。まず6チームが準決勝ラウンドに進出

知り・知らせるポイントを100文字で

ブラインドサッカーの日本選手権が史上最多24チームの参加で始まった。そのうちの15チームによる予選ラウンドが八王子会場で開催。シードされたmejirodai、たま、品川に加え、北海道、大阪、新潟が準決勝ラウンドに駒を進めた。

参加15チームによる記念撮影 写真提供:鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会

 11月18日(土)、第21回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権が東京フットボールセンター八王子富士森競技場(東京都八王子市)で開幕した。大会史上最多の24チームが参加する。11月18日(土)、19日(日)に八王子会場で、その翌週の11月25日(土)、26日(日)に名古屋会場で予選ラウンドが行われる。この予選ラウンドでは、24チームが5つのグループに分かれてトーナメント形式で戦う。各グループ上位2チーム計10チームが12月3日(日)浜松会場で行われる準決勝ラウンドに進む。決勝に挑む2チームと、3位決定戦に進む2チームが残り、2024年3月9日(土)に町田会場で開催されるFinalラウンドで雌雄を決する。

 八王子会場では以下の15チームが3つのグループに分かれて対戦した。
グループA:free bird mejirodai、FCコレチーボ静岡、オガルリーブレ山梨、大阪ダイバンズ、ラッキーストライカーズ福岡
グループB:たまハッサーズ、松本山雅B.F.C.、琉球Agachi、ナマーラ北海道、ファンタス千葉SSC 松戸ウォーリアーズ
グループC:パペレシアル品川、乃木坂ナイツ、スフィーダ世田谷BFC、新潟フェニックスファイヤーズ、A-pfeile広島BFC

各グループのトーナメント結果

 優勝経験のあるfree bird mejirodai、たまハッサーズ、パペレシアル品川が順当に準決勝ラウンドに駒を進めた。また大阪ダイバンズ、ナマーラ北海道、新潟フェニックスファイヤーズがこの予選/準決勝/Finalの運営形式になって初めて、準決勝ラウンド進出を決めた。

初戦、勝利を決めるゴールを沈めた北海道の戸谷隆之介(背番号9/黄色ユニ)筆者撮影

 前回大会までは、3、4チームが総当たりで予選ラウンドを戦っていた。今回チームが増えたこともありトーナメント制となった。組み合わせによっては初戦で準決勝ラウンド進出が決まる。シードされたチームも初戦で負けるとそこで終了だ。準決勝ラウンド行きが決まる試合の中でも筆者が興味をもった2試合を今回はレポートする。一つがグループBのたまハッサーズと松本山雅B.F.Cの対戦だ。前回大会では共に準決勝ラウンドに進んだチームだが、今回は予選にてどちらかが敗退する。もう一つは日本代表GKを加えた新潟フェニックスファイヤーズと、同じく日本代表FWを擁するA-pfeile広島BFCが準決勝行きをかけて対戦するグループCの試合だ。

◾️たまハッサーズ 対 松本山雅B.F.C

 日本代表強化指定の黒田智成、田中章仁、日向賢、GK佐藤大介を擁し4度の優勝を誇るたまに対して、高校生の日本代表のエースストライカー平林太一が率いる松本が準決勝ラウンド進出を目指して激突した。たまはシードでこれが1試合目。松本は1回戦を勝ち上がっての2試合目だ。この試合に向けて松本の落合啓士監督は1ヶ月前から新しいフォーメーションを練習していた。22年アジア選手権の準決勝でタイが日本に対して用いPK勝ちを収めた陣形だ。フィールドプレーヤー4人がコンパクトに台形型のフォーメーションを作り、自陣で構えて相手の攻撃に耐える。相手が前がかりになった隙を、「たまの選手はついてこれない(平林)太一の(高速)ドリブルでゴールをねらう」というものだ。この作戦がズバリハマる。黒田らの攻撃を耐え凌いだ第1ピリオド7分、落合監督の読み通り空いたスペースにボールを奪った平林がドリブルで持ち込み、ゴール左隅にシュートして先制。たまの佐藤はボールを持ちすぎて連携ミスが生じたと振り返る。1−0と松本がリードして第1ピリオドを終える。

ゴールの祝福をうける平林太一(背番号9)写真提供:鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会

「このハーフタイムが鍵だった」と落合監督は語る。ブラサカのフェンスが倒れるくらいの強風と寒さが選手の体力と柔軟性を奪う。「初戦の琉球Agachi戦も第1ピリオドで2点をとり、後半は太一を温存させたい」と考えていたが、「実際には1点目をとれたのが第1ピリオド終了間際の15分」であったことも監督のプランを狂わせた。平林に「もう少しボールをキープして時間稼ぎができないか」と提案するが、平林から「ちょっときついです」との返事。一方たまの佐藤は「連携ミスで失点したが、(相手も)後半体力も落ちてくるしチャンスはある」と感じていた。
 第2ピリオド開始早々の2分、たまの黒田が松本の隙をつき、左からカットインしてゴール右にシュートを決めて同点。落合監督曰く「みんなも体力が奪われてボールウォッチャーになってしまった」中での失点だった。「ラインをあげよう」と落合監督は再三声かけするも、体力と「1点取られたことによる恐怖」で選手は前に出れない。そして8分、黒田は「(守備に)間隔があると感じ」て強引に右からゴール前にカットイン、相手選手2名につかれながらも左足でファーサイドに押し込みゴール。2-1と試合をひっくり返す。その後、たまは阿部良平、日向がゴールを奪い4-1で準決勝ラウンド行きを決めた。「体力がきつく押されている時に勇気をもって前にでる」ことが次の課題だと落合監督は試合を総括した。

たまの黒田(紺ユニ)が倒れながらも逆転ゴールを決めた 筆者撮影

◾️A-pfeile広島BFC 対 新潟フェニックスファイヤーズ

 広島は第19回4位、第20回は準決勝ラウンド進出。今年の地域リーグでは山口大会、広島大会で優勝と力のあるチーム。日本代表強化指定の後藤将起、日本女子代表強化指定の田中一華、ユーストレセンの森島 爽平、林 健太(同じユーストレセンの矢次 祐汰は欠場)を擁する。一方の新潟は第17回以来の参加だ。今回はGLAUBEN FREUND TOKYOから日本代表GKの神山 昌士を含む5名の選手を加えての参加となる。以前からの交流に加え、選手層の薄い新潟と視覚障害者の数が少ないGLAUBENが補完関係(新潟 淺間光一監督談)にあることから生まれた。10月1日に開催された地域リーグでもこのメンバーが新潟に参加していた。
 新潟は相手ゴール前にブラインドラグビー日本代表でもあった神谷考柄を配置、残りの3人が自陣に引いて広島の攻撃を受けるというフォーメーション。GK神山がゴールスローを前線の神谷へダイレクトに送りゴールを狙うという攻撃を執拗に繰り返す。広島のフィクソ森島が対応するが振り切られることも度々あった。第1ピリオド10分にGK神山からのボールを受けた神谷がゴール正面から放った低い弾道のシュートがゴール右ポストに当たってそのままゴール。新潟が1点を先制する。広島の木村陽一監督は「ある程度この攻撃は想定できたが、対応が遅れた。早めにタイムアウトをとって対策を打てればよかった」と試合後に悔やんだ。

2点目を決める新潟の神谷(背番号10/画面左)写真提供:鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会

 第2ピリオド3分にも同じ形で神山からのフィードを神谷がゴール左で受け、ファーサイドに蹴り込み得点を重ねる。守っては広島の後藤や林のドリブルからの攻めにはシュートコースをしっかり切り、第1ピリオド、第2ピリオドとも決定機を与えなかった。第2ピリオドからの左サイドのアタッキングサードで構える田中へのGK山本崚也からフィードによる広島の攻撃にもしっかり対応し2-0で新潟が勝利。初の準決勝ラウンド進出を決めた。初戦で準決勝ラウンド進出が断たれた広島の木村監督は「選手たちはよく頑張った、チームとして機能しなかったのは私の采配だ」と目を赤くしながら試合後に語った。

広島の後藤(背番号22/右)を止める田村修也(左)と山田弥毅(中央) 筆者撮影

◾️総括

 予選ラウンド八王子会場の最終結果は以下の通り。各グループ2位までが準決勝ラウンドに進出。

グループA
1 位 free bird mejirodai
2 位 大阪ダイバンズ
3 位 ラッキーストライカーズ福岡
4 位 FC コレチーボ静岡
5 位 オガルリーブレ山梨

グループB
1 位 たまハッサーズ
2 位 ナマーラ北海道
3 位 松本山雅 B.F.C.
4 位 ファンタス千葉 SSC 松戸ウォーリアーズ
5 位 琉球 Agachi

グループC
1 位 パペレシアル品川
2 位 新潟フェニックスファイヤーズ
3 位 乃木坂ナイツ
4 位 A-pfeile 広島 BFC
5 位 スフィーダ世田谷 BFC
 
得点ランキングは以下の通り。
5点 鳥居健人(free bird mejirodai)
4点 黒田智成(たまハッサーズ)
4点 川村怜 (パペレシアル品川)
4点 林健太 (A-pfeile広島BFC)

福岡戦で4点を決めた鳥居健人(中央オレンジユニ) 写真提供:鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会

 この八王子会場での観客は18日が71名、19日が128名と去年の成田会場の41名、43名に比べてグッと増えた。

 次の予選ラウンドは11月25日(土)、26日(日)に名古屋経済大学高蔵高等学校(愛知県名古屋市)にて開催。以下のチームが参加する。

・グループD:埼玉T.Wings、島根オロチビート浜田*、ツエーゲン金沢BFC*、ソイエ葛飾、Mix Sense名古屋*
・<グループE:兵庫サムライスターズ、Avanzareつくば*、LEO STYLE北九州*、buen cambio yokohama [caption id="attachment_38333" align="aligncenter" width="700"] 予選ラウンド 名古屋会場トーナメント[/caption]

*のチームは去年参加していないチームである。女子代表のエースストライカー菊島宙(埼玉)、キャプテンの竹内真子(兵庫)も参加する。バーミンガムの世界選手権で一歩のところ優勝を逃した彼女たちがどういったプレーをするのかも楽しみだ。入場は無料である。お近くの方は是非足を運んで欲しい。

なお、11月23日未明チリのサンチアゴで開催されているパラパンアメリカン大会の試合結果を受けて日本代表のパリパラリンピック行きが確定した。2004年アテネからのパラリンピックへの取り組みで日本代表が初めて予選を突破して出場権を獲得した。選手、スタッフ、関係者、サポーターの皆様、おめでとうございます!

(写真協力・鰐部春雄/日本ブラインドサッカー協会 校正・中村和彦、そうとめよしえ、佐々木延江)

この記事にコメントする

記事の訂正はこちら(メールソフトが開きます)