2026年8月19日~20日(現地時間)、ドイツのAachen(アーヘン)にあるAllianz Parkで、2026年馬術世界選手権のパラ馬術競技が開幕し、個人競技(Grand Prix A)が実施された。

グレードIII – グランプリA個人
表彰台
1. Rixt Van der Holst (NED)、2. Tobias Jorning Joergensen (DEN)、3. Francesca Salvadè&Escari(ITA) 2026年Aachenパラ馬術世界選手権にて
© FEI/Leanjo de Koster
19日は、ライダーの障害の程度による5つの種目分類(グレード)のうち、20m×40mの馬場を使用するグレードI、II、IIIが実施された。続いて20日は、20m×60mの馬場を使用するグレードIV、Vが行われた。
この個人競技と、後日行われる団体競技(Grand Prix B)の個人スコアの合計で、各グレード上位8人馬がフリースタイル(自由演技)に進出する。
グレードIII、Rixt Van der Horstが世界選手権3大会連続個人金メダル
2番目にElsma’s Royal Fonq N.O.P(栗毛/11歳/牡)に騎乗して演技したオランダのRixt Van der Horstは、世界選手権で通算3つ目の個人金メダルを獲得した(2014 Caen、2018 Tryon、2026 Aachen)。

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「今日、あの印象的なアリーナに入っていくのは素晴らしい体験でした。会場の雰囲気にFonqが少し興奮し、周りを見ているのがわかりましたが、演技に入って落ち着いてくれたことをとても誇りに思います。彼は本当によくやってくれましたし、いつもベストを尽くしてくれます。結果がわかるまで長く待ったように感じましたが、待った甲斐がありました!」(Van der Horst)
まだコンビを組んで浅いFonqと世界選手権の大舞台でまずはひとつ大きな成果を上げることができた。
銀メダルは、11番手に出場した2020東京パラリンピック金メダリスト、デンマークのTobias Thorning Joergensen。今回は新たにBlue Hors Zackorado(青毛/10歳/牡)とコンビを組んだ。Van der Horstとは、これまでも何度も競い合ってきたライバル同士だ。

2026年Aachen馬術世界選手権・グランプリA グレードIII
© FEI
「彼はまだ大きなアリーナでの経験がそれほどありません。だから私の目標は、馬が幸せな状態で臨み、気持ちよく演技をさせてあげることでした。それはできたと思います。今日は彼が持っているものをすべて出してくれました。これまで何年もJolene Hillと選手権に出てきましたが、今回は新しい馬と来ています。今日またRixtと昔のように競い合えるのは、とてもエキサイティングです。私たちは良い友人なので、いつも競い合うのは楽しいです」(Thorning Joergensen)
銅メダルは最終演者、イタリアのFrancesca Salvadè&Escari(鹿毛/9歳/セン/ハノーバー)。74.767%の成績を収め、2024パリパラリンピック金メダルコンビ、アメリカのRebecca Hart&Floratina(鹿毛/18歳/牝/ハノーバー)を0.867ポイントという僅差で破った。

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Salvadèにとっては、2012年にパラリンピック、世界選手権レベルの大会に参加し始めて以来、念願の初メダル。
「この馬とはここ4年間組んできましたが、若いのに本当に素晴らしい馬です」(Salvadè)
さらに、団体競技を見据えてこう語った。
「チームのためにベストを尽くしたいと思います。2028年ロサンゼルスパラリンピックの出場権がかかっているので、私たちにとって本当に重要な競技会です」(Salvadè)
グレードII、稲葉、吉越が入賞。金メダルは地元ドイツのHeidemarie Dresing
このグレードには日本の2人馬も参戦。優勝したのは、ヨーロッパ選手権3連覇中のドイツのHeidemarie Dresing&Poesie 143(75.483%)。
演技の序盤で馬が驚くアクシデントがあったものの立て直し、前回2022年Herning世界選手権の7位から大きく順位を上げ、金メダルをつかんだ。

「馬は私のパートナーであり、友人でもあります。そして、私たちはお互いを完全に信頼しています。私たちの間にある信頼は、今まで取り組んできたすべてのことの集大成です。信頼、敬意、そして真のパートナーシップを通じて馬と調和すれば、偉大なことを成し遂げられるということを証明したかったのです」(Dresing)
銀メダルはデンマークのKatrine Kristensen&Goerklintgaards Quater(鹿毛/18歳/セン/DWB)(75.310%)。つい最近、第2子を出産したばかりとは思えない、自信に満ちた優雅な演技を披露した。

2026年Aachen馬術世界選手権・グランプリA グレードIII
© FEI Leanjo de Koster[/caption]
「グレードIIは今、とても強力な人馬ばかりなので、接戦になることはわかっていました。でも、私には長年ともに歩んできた馬に乗っていて、彼の動きをよくわかっているという強みがあります。
今日はトレーナーのCathrine Laudrup-Dufourが一緒にいてくれて、とてもよい準備運動ができました。彼女から馬場に入る前に、『今感じた最高の感覚を忘れずに積み上げて』と、とてもよいアドバイスをもらいました。私はその通りに心がけ、それに応えるように馬は完璧な演技をしてくれました」(Kristensen)
銅メダルはイギリスのJemima Green&Fantabulous(栗毛/8歳/セン/オルデンブルグ)(75.241%)
グレードIIは、同じイギリスの王者Sir Lee Pearsonが過去に何度も金メダルを獲得している種目だけにプレッシャーも大きい。今回Pearsonは控えの人馬に選出され、出場機会はなかった。
世界選手権初出場で、金メダルとわずか0.242ポイント差という結果を収めたGreenとFantabulous。残る2種目の行方にも期待がかかる。

1. Heidemarie Dresing (GER), 2. Katrine Kristensen (DEN), 3. Jemima Green (GBR)
Prize of StädteRegion Aachen
© FEI/Leanjo de Koster
「この馬はまだ若いですし、今日あの場に入って演技をして、会場の雰囲気にも対応できたというのは素晴らしいことです。本当は速歩をするところで常歩が続いてしまったという、ちょっとした意思疎通の行き違いがありました。でも、これから学んでいけばいいと思います。それ以外の演技は本当にスムーズに感じました。馬も大きな会場の中ですごくリラックスしていましたし、ここからさらに良くなっていけると思います」(Green)
日本の人馬も健闘、稲葉は7位、吉越は8位
一方、日本から稲葉将(グリーンフィールドET)は2018年、2022年に続く3度目の世界選手権出場。今回はDallas(鹿毛/13歳/セン/オルデンブルグ)とともに参戦し、65.414%を記録。個人競技で3大会のうち最高となる7位入賞を果たした。

Aachen馬術世界選手権Grand Prix A © FEI/Leanjo de Koster
一方、吉越奏詞(岡本ライティングクラブJAPAN)も3度目の世界選手権。今回は今年になってパートナーを組んだVior(鹿毛/6歳/牝/ハノーバー)と挑戦した。
高校3年生だった2018年大会の個人競技7位に続き、今回は8位入賞。まだ経験の浅い馬と、今後に向け手応えのある結果を得た。

FEI Para Dressage World Championship
Grand Prix A Grade II
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グレードI、金メダルは急成長中のアメリカ、Marie Vonderheyden
グレードIは、最も障害の程度が重い選手たちのグレードで、演技は常歩のみで行われる。
優勝したのはアメリカのMarie Vonderheyden&Fan Tastico H(青毛/9歳/セン/オルデンブルグ)(76.709%)。
この馬は同じアメリカのRoxanne Trunnellが騎乗し、2024年パリパラリンピックで同競技銀メダル(78.000%)を獲得した実績を持つ。

「今回が私にとって初めての世界選手権なので、今はいろんな気持ちがあふれて、チャンピオンになって何を言うべきなのか、まだまとまりません。今日は馬場に魔法がかかったような雰囲気で、最高の演技ができました」(Vonderheyden)
銀メダルはイギリスのMari Durward-Akhurst&Athene Lindebjerg(青毛/19歳/牝/DWB)(74.542%)。Atheneは2016年以降、3人の選手が乗り継ぎ、選手権レベルの大会に出場してきたが、世界選手権は今回が初めて。

「今日、すべてが一つになって、彼女は頑張るという気迫にあふれていました。彼女と一緒にアーヘンに来られたことは、本当に特別です。もう19歳なので、これから先どうなるかはわかりません。
これまでどこへ行っても大きなプレッシャーがありました。誰かほかの人が期待している以上、結果を出さなければならなかったからです。でも、これは私たち自身の物語です。彼女は本当に唯一無二の素晴らしい牝馬ですし、これまでの数々の実績に加えて、今や彼女が世界選手権でメダルを獲得した馬になったことを、とても嬉しく思います」(Durward-Akhurst)
銅メダルは1番手に出場したイタリアのベテラン、Sara Morganti&Bond Girl 18(鹿毛/7歳/牝/ハノーバー)(74.459%)。最初から高得点を叩き出し、メダル獲得で若い相棒の初めての世界選手権に花を添えた。

「彼女と組んだのは今年の4月からで、まだまだ短いパートナーシップです。特にグレードIは、お互いの言葉を理解し合って、ともに演技ができるようになるまで、通常もっと長い時間がかかります。
この馬にとって今回が初めての選手権で、しかもまだ3戦目だったことを考えれば、あのアリーナで本当に、本当に素晴らしい演技をしてくれたと思います。今、成し遂げたことを考えると、本当に信じられないほどです」(Morganti)
日本の大川、初めての世界選手権で入賞
若いころから馬術経験が豊富な大川順一郎(蒜山ホースパーク)は、病気のために弱くなった筋力と向き合いながら、世界選手権出場を目指してきた。
パラ馬術に挑戦し始めた当初は、より軽度の障害をもつ選手が集まるグレードだったが、進行性の病気のため、身体能力等をもとに決まるグレードが徐々に変更され、現在は最も障害の程度が重いグレードIに出場している。
今回は2023年にドイツで出会ったRH’s Totally Joker(栗毛/14歳/セン/ハノーバー)とともに練習を積み、参戦した。
Jokerの父は、馬場馬術の世界で有名なTotilas(青毛/牡/KWPN/2000年生-2020年没)。
2009年、ロンドン国際馬術大会でEdward Gal(オランダ)が騎乗し、グランプリフリースタイルで驚異の92.300%を叩き出したことでも知られる。翌2010年の馬術世界選手権では、このコンビが馬場馬術のすべての金メダル(個人、自由演技、団体)を獲得するという圧巻の成績を収めている。
その血を引くJokerに騎乗した大川。馬の特性をうまく引き出し、70.750%、20人馬中8位の成績を収めた。
Pepo Puch、グレードIIからIへ
今回もう一点目につくのが、過去の世界選手権で4つの個人銀メダル、パラリンピックで金2、銀3、銅1の輝かしい実績を持つPepo Puch(オーストリア)が、グレードIIからIに移っていることだ。
Puchは2026年6月に行われた国際大会で、健康上の理由から再度クラス分け審査を受けたいと申請し、その場で審査が行われた。
クラス分けは、理学療法士等が身体の状況を規定に沿って確認して行う。その結果、事故による脊髄損傷、対麻痺のあるPuchはグレードIIからIに変更となった。
6月の大会ですでにグレードIの経路を踏んでいたものの、経験はまだ浅い。今後また練習を積み重ねながら、トップへの返り咲きを目指す。
グレードIV、アメリカのKate Shoemakerが念願の金
強豪アメリカの勢いは止まらない。
金メダルはKate Shoemaker&Vianne(芦毛/10歳/牝/ハノーバー)。同じアーヘンで行われた国際大会で自身が樹立したグレードIV個人競技の世界記録をさらに上回る78.889%を記録し、何度も挑戦してきた中で獲得していなかった念願の金メダルを手にした。
「演技全体がとても調和していてほしい。それが私が一番望んでいたことでした。点数や得点、メダルのことは考えていませんでした。『今日は、この特別な馬の素晴らしさを世界に見せるために全力で演技をしたい。それにはどうしたらいいか』を考えていました。
完全に人馬一体になっていました。とても嬉しくて、最後の停止をする前から涙が出ていました。パリのときから成長して、今年はすごくパートナーシップがかみ合ってきました。お互いの心がわかるようになってきていて、私のためにすべてを捧げてくれる最高の馬です」(Shoemaker)
銀メダルはドイツのAnna-Lena Niehues&Vive l’Amour(栗毛/9歳/牝/ウェストファーレン)(74.639%)。
「演技はすべてとても良かったですし、馬とのパートナーシップには本当に満足しています。最終的にメダルを獲得できたことは、正直なところ、おまけのようなものです。大切なのは、私たちがベストを尽くせたと感じられることです。そして今日は、彼女が本当にその通り頑張ってくれました。今年になってから組んだばかりなのに、そう感じられないような演技ができました」(Niehues)
銅メダルはイギリスのNicola Naylor&Humberto L(鹿毛/14歳/セン/KWPN)。
層の厚いイギリスから世界選手権初出場を果たしたNaylorは視覚障害のある選手で、馬の世話を担当するグルームのJulie Richesが、声で馬場のアルファベットマーカーの位置を知らせる「コーラー」を務める。この二人の信頼関係も、よい演技をするための大切な要素だ。
今回は直前に、予定していたMoulin Rouge(栗毛/9歳/牝/KWPN)からHumberto Lに乗り替えて演技した。選考会でHumbertoのスコアのほうがよかったことと、Moulinがまだ9歳と若いことを考慮しての判断だった。
「最高でした! 初めての世界選手権で、1番手の出場だったので緊張しました。でも、馬場に入ったらすごく馬とのパートナーシップを感じて、私を本当に信頼してくれているというのが伝わってきました。
とくに駈歩が楽しかったです。とても勢いのある動きで、馬自身も特別に楽しんでいるような気がしました」(Naylor)
グレードV、イギリスのベテランSophie Wellsが世界選手権3つ目の金。城も競争の激しい中、健闘
優勝したのはイギリスのベテラン、Sophie Wells&MSJ Gold Standard(栗毛/10歳/牝/オルデンブルグ)。
この馬とは昨年12月にパートナーを組んだばかり。それを感じさせることなく、74.949%の個人ベストを記録し、2018年以来の金メダルを獲得した。
「このメダルは亡き父に捧げます。きっとどこかのパブで大声で自慢していることでしょう。今、私はとても感情的で、めったにこんなことはないのですが、なんと表現したらいいかわかりません。宙に舞い上がるような気持ちです。すごく特別な感じがします」(Wells)
銀メダルはオランダのBritney de Jong&Caramba N.O.P(鹿毛/19歳/セン/KWPN)(73.154%)。高齢のため、今回をもって選手権大会から退くCarambaの引退に花を添えた。
2021年の怪我をきっかけにパラ馬術へ転向したde Jongにとって、今回は初めての世界選手権だった。
「馬場に入ったとき、とても感情が込み上げてきました。馬場の外周を速歩で回っているときに、ああ、これがCarambaの最後の選手権なんだなと実感しました。
この馬は競技をとても楽しんでくれています。だからこそ、最高の状態のまま引退して、余生を過ごしてほしいと思っています」(de Jong)
銅メダルはドイツのRegine Mispelkamp&Highlander Delight(栗毛/14歳/セン/KWPN)(72.974%)。
パリパラリンピック銀メダリストとして期待を背負って登場。直前の中足骨骨折を乗り越え、見事な演技を見せた。
「2006年のアーヘン世界馬術選手権をテレビで見て、いつかここで競技に出ることを目標にしようと思いました。今日、その夢が実現して本当に嬉しいです」(Mispelkamp)
最も障害の程度が軽い選手たちが集まるグレードVは、技術的にも高いレベルが要求される。一般の馬場馬術競技にも参加する選手が大勢いるトップクラスの人馬と競う中、日本の城寿文(福岡県馬術連盟)は、2024年パリパラリンピックのリザーブをともに務めたElmero(鹿毛/17歳/牡/KWPN)に騎乗し、世界選手権デビューを果たした。
緊張しつつも64.744%、20人馬中8位の成績で入賞を成し遂げた。
次は団体戦
3日目、4日目は団体競技Grand Prix Bが開催される。
この競技のスコアには二つの意味がある。
一つ目は個人競技。Grand Prix AとGrand Prix Bのスコアを合算し、各グレード上位8人馬が最終競技のフリースタイルに進出する。
二つ目は団体競技。3人馬以上が出場する国が団体メダルの対象となり、Grand Prix Bの結果を合算した点数で順位が決まる。4人馬が出場する場合は、上位3人馬のスコアが採用される。
さらに、開催国枠を持つアメリカを除く上位7カ国には、2028年ロサンゼルスパラリンピックの団体出場権(4人馬)が付与される。
レベルの高い戦いが続くパラ馬術。世界のトップ人馬の競演と、その中で挑む日本勢の戦いに、今後も注目していきたい。
(校正・佐々木延江)






