電動車椅子サッカー2015全国大会を終えて 〜映画撮影の現場から〜

 10月3~4日、全国の電動車椅子サッカークラブチームが日本一を目指し戦う『マルハンカップ第21回日本電動椅子サッカー選手権大会』が開催された。会場はエコパアリーナ(静岡県袋井市)。日韓ワールドカップもおこなわれた、あの『エコパスタジアム』に隣接する体育館。Yokohama Crackersや日本代表の選手たちを追い、電動車椅子サッカーの撮影を続ける映画監督・中村和彦が今大会の感想を綴った。

Yokohama Crackers 写真・渡辺

Yokohama Crackers 写真・渡辺

サッカーファンには嬉しい会場だが・・
 そのエリアに行くのは、2002年日韓ワールドカップ準々決勝ブラジルVSイングランド観戦、2008年映画『アイ・コンタクト』撮影の一環として『ろう者サッカー女子日本代表』合宿の帰途、ジュビロ磐田レディースの試合を訪れて以来3度目になる(ジュビロ磐田レディースの試合には『ろう者サッカー女子日本代表』の選手が出場。さらに奥にある人工芝グラウンドで試合がおこなわれた)。
 何かイベントがない限り人がいないエリアで、大会を通じて“閉ざされた感”を感じることが多かった。観客席が5000席近くあったことも、逆にそういった印象を強めたのかもしれない。直接の関係者を除けば、観戦に訪れたのはほぼ関係者の知人や地元関係者だけだった。別にそれが悪いわけではないが、少し寂しく感じた。 

 こういう観客席の多い会場で試合が出来るなら、例えば、地元の小中学校などに呼びかけてルールや選手情報などのガイド付き観戦コースを設けたりできないものだろうか?。電動車椅子サッカーを初めて観ると、いろいろ疑問が湧いてくる。
 デフフットサル女子日本代表の選手が決勝を観に来てくれたが、やはり、何かと疑問が湧いてきたようだった。それには私が答えておいたが、大きな大会にはガイド付きの観戦コースがあると良いのになと思った。土日だと生徒たちが団体で来てくれるというふうにはなりにくいだろうか。例えば、地元中学・高校のサッカー部など、2日間の大会期間中に来れる時間帯もあるだろう。地元の運営スタッフやボランティアの方だけの手には負えることではないだろうし、各方面からの協力も必要となることである。

観客を楽しませる工夫が必要。そのための課題は?
 そうは言ったものの、今大会は初めて観戦に訪れた人が面白く感じる内容ではあまりなかったのではないか。得点が少なく、0−0の試合も多かった。

 例えば、昨年の決勝の再現となったレインボー・ソルジャーとNanchester United鹿児島の1回戦は0−0。PK戦でレインボーの勝利。FCクラッシャーズとYokohama Crackers の2回戦も0-0。PK戦でCrackersの勝利。
 延長もありの準決勝以降ではレインボーとRed Eagles兵庫が、延長まで戦って0-0。そしてPK戦でも決着がつかなかった。3.5mのPKを蹴り、4人1巡して決まらない場合、国内ルールでは2巡目から5mに距離がのばされる。そうすると2巡目か3巡目あたりまでにはおおよそ決着がつくのだが、なんとこの試合は3巡目まで終わっても全員成功で決着がつかない。このクラスの選手たちになると、キックの精度も高く成功率が極めて高いのだ。そして大会規定によりなんと抽選! レインボー・ソルジャーが決勝に進んだ。

ファンタスティックなゴールを見たい!
 0−0がつまらない試合というわけでは決してない。むしろとても高度な試合となる場合も多い。相手を研究し、まずは失点を許さない。隙あらばゴールを奪う。守備力も高く“読み”も鋭い両チームの対戦は、観る方としても一瞬たりとも目が離せない。今大会は全試合トーナメント制ということもあり、そういった傾向は強かったかもしれない。(なかには最後の精度の問題でゴールが奪えなかったシーンもあったが)。
 しかし第三者的目線で言えば、やはりゴールは見たいだろう。無責任な言い方をすればファンタスティックなゴールを見たいわけで・・・。

優勝はレインボー・ソルジャー、MVPは北沢洋平!

MVPをとなった、レインボー・ソルジャー北沢洋平。写真・渡辺

MVPをとなった、レインボー・ソルジャー北沢洋平。写真・渡辺

 そんななか、優勝したのはレインボー・ソルジャー。決勝の相手は奈良クラブビクトリーロードだった。中井皓寛、山田貴大が攻撃を組み立て、木下弘貴が最後尾を締める。若くて勢いに乗る奈良ビクトリーロードの挑戦を2-0とはねのけ、レインボーが連覇を果たした。レインボーの1点目は北沢洋平の精度の高いキックインのボールを吉沢祐輔が電動車椅子の横の“面“で流し込んだもの。吉沢はこういったプレーが惚れ惚れするほどうまい。
 2点目は北沢が奈良の選手の一瞬の隙をついて、キックインからニアに蹴り込んだもの。いずれの得点も北沢の高精度のキックから生まれた。MVPを受賞したのは、その北沢である。

6kmと10km
 今大会は、コートの大きさがルール上、最大の大きさでおこなわれた。縦30m、横18mである。キックインやコーナーキックなどは距離も遠くなり、より精度が求められただろう。通常はバスケットコートの標準的な大きさである縦28m、横15mで試合がおこなわれる場合が多いが、ことに横幅の3m差に途惑ったチームも多かったようだ。

 サイド、特にコーナー付近に通常よりもかなりスペースがあり、そのスペースをいかに有効に使えるかがキーになりそうであったが、制限速度6kmのルールの場合、スペースの有効利用がむずかしい。国際ルールでは、電動車椅子サッカーの制限速度は10kmでおこなわれ、日本代表選手たちも当然10kmでプレーしなくてはならない。今大会は国内ローカルルールの6kmでおこなわれた。スペースへパスを出しても、プレーヤーはなかなか追いつけない。

 今後6kmと10kmの二つのルールをどう使い分けていくのか、電動車椅子サッカー界でも大きなテーマになっていくだろう。より高みを目指す10kmと、間口を広く開け長く続けていくことが出来る6km、選手たちがどちらかを選べるようになると良い、つまりどちらかだけのルールに専念出来るようになった方が良いと個人的には思う。

5人制にしてはどうか?
 少々夢想じみた話になるが競技人数を5人にすると面白くなるのではないか?と思うことがある。もちろん、制限速度は10kmである。4人でプレーしているとどうしてもパスコースが限定され、相手選手にも次の展開が読みやすい。フットサル同様5人になれば格段に選択肢が増える。もちろんコートの大きさは現在よりも大きくする必要がある。体育館の問題などもあり実現は難しいとは思うが、同様の意見の選手もいたし、一度どこかで試してほしい。

 電動車椅子サッカー専用マシーンとでも呼ぶべき「ストライクフォース」の出現以来、ルールの方が追いついていない印象もある。選手にとっても、観客にとっても、より面白い競技になるために、世界中の電動車椅子サッカー関係者が考える余地はまだまだあると思う。もちろん戦術面や環境面においても。