関連カテゴリ: トラック・フィールド, 陸上, 香川 — 公開: 2021年4月25日 at 11:53 AM — 更新: 2021年5月29日 at 11:23 AM

花形の100メートルで白熱のレース。急成長の大学生・大島健吾がアジア記録!~2021ジャパンパラ陸上競技大会~

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「2021ジャパンパラ陸上競技大会」が4月24日、屋島レクザムフィールド(香川県高松市)で開幕した。ジャパンパラは国内最高峰の大会の1つで、東京パラリンピック前の最後の大きな大会。日本代表の選考に大きく関わる重要な位置づけとなっている。

21歳の新星・大島健吾、エース・井谷俊介と直接対決!

大島と井谷の切磋琢磨するライバルの対決
大島健吾(左)と井谷俊介(右)。切磋琢磨するライバルの存在が、アジア記録を生んだ 写真・小川和行

注目のレースは、男子100m・T64(下腿義足クラス)。このクラスでトップを走ってきたのは井谷俊介(SMBC日興証券)で、2018年のアジアパラ競技大会で樹立したアジア記録を2年以上守ってきた。この種目で急成長している存在が、競技歴4年目の大島健吾(名古屋学院大学)だ。
「勝った方が東京パラリンピックに近づく」と言われる中の、直接対決。
向かい風1.2メートルの不利な状況の中、大島が11秒37でアジア記録を更新。夢の舞台を大きく引き寄せた。
敗れた井谷は2着で11秒66。0秒29引き離しての圧勝だった。

レース後の大島
レース後の大島。向かい風でのアジア記録に、どよめきが起こった 写真・久下真以子

レース後の大島は、ほっとした表情だった。

「記録更新よりも1位を取ることが重要なレースだった。緊張して、”負けたらどうしよう”という気持ちにもなったが、スタートラインに立った時に”今日は調子がいいな”と自分を取り戻せた。東京パラリンピックでは決勝の舞台に立つのが目標なので、この記録に満足しないようにしっかり狙っていきたい」と大島。

アジア記録の取材を受ける大島
取材を受ける大島。「負けず嫌いなので、前に走られるのは嫌なんです」 写真・久下真以子
インタビューを受ける井谷
2着に終わり、悔しさをにじませる井谷俊介 写真・久下真以子

対する井谷は、「今大会にピークを合わせられたのに、ベストを尽くしても届かなかった。今の自分の実力を痛感させられた。まだ2日目に200mが残っているので、100mより可能性は高くないが、何とか希望をつなぎたい」と悔しさをにじませた。

1つ前のレースで走り終えた男子100m・T63(大腿義足クラス)のベテラン、山本篤(新日本住設)も、ゴール付近でこのレースを見ており、記録に声を上げて驚いた。
「すごいな!速いな!向かい風でこれだけ速いなら、10秒台いけるんじゃないか!?」と山本に声をかけられたことについて大島は、「そんなに甘い世界じゃないことはわかっているが、10秒台は自分の中でも目標です」とはにかんだ。

高校時代はラグビーに打ち込んでいた大島。戦うフィールドを変えても、夢に向かってひたむきに走り続けていく。

辻沙絵、笑顔のガッツポーズ!「長いトンネルを抜けたような気持ち」

辻の横顔。レース前
レース前の辻。「後半に脚がたれないように、ストライドの大きい走りを心がけた」 写真・久下真以子

フィニッシュ後、笑顔とガッツポーズが飛び出た。女子400m・T47(上肢障害クラス)では、リオパラリンピック銅メダリストの辻沙絵(日本体育大学)が58秒45をマーク。自身の日本記録(58秒96)を大幅に更新し、東京パラリンピック内定に前進した。

好調の要因の1つが、義手。右ヒジの欠損である辻は、これまではバランスを保つために義手をつけてレースに出場していた。しかし、3月から義手を外し、リストバンド型の重りをつけて走るようになったのだ。

「義手があると腕を振り切れなかったり、空気抵抗を感じていたが、体のバランスを考えて装着していた。でも今は、しっかり振れるようになった」。思い切った決断が功を奏し、2年ぶりの自己ベストにつながった。

「今振り返ると、不調の要因は気持ちの部分だったと思う。何をやってもうまくいかないと、少し諦めかけていた部分がありました。でもコーチが”沙絵はやればできる”と声をかけてくれていたのが支えになった。長いトンネルを抜けたような気持ちです」と、笑顔をほころばせた。

すでに内定した選手をのぞくと、パラ陸上は、2021年4月1日時点でのランキング上位6位まが東京パラリンピック出場権を獲得でき、5月にランキングが確定する予定。辻は現在6位で、圏内だ。

「メダルを狙えるタイムが出せたので、もう一度メダル争いがしたい。やっぱり、メダル欲しいですよね」と、走る喜びを再認識した辻。長いトンネルの先に「内定」の知らせが来るのか、あとは結果を待つばかりだ。

笑顔の辻
レース後、笑顔がはじける辻 写真・久下真以子

「2021ジャパンパラ陸上競技大会」は25日までの2日間で開催される。2日目はどんな記録が飛び出るのか、注目だ。

(取材・久下真以子 構成=佐々木延江 写真協力・小川和行)

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