
3月9日、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会、パラアイスホッケー予選リーグ第2戦。日本代表は世界ランキング2位の強豪カナダに0-14という完封負けを喫した。しかし、試合後のミックスゾーンに現れた中北浩仁監督の口から、悲観の言葉は出なかった。この圧倒的な「ブローアウト(大敗)」を、むしろ日本チームがさらなる高みへ上るための「ベース作り」として、前向きに受け止めていた。

突きつけられた、世界との「実力差」
「チームの組織力や意識は格段に向上しています。守備も重視して臨みましたが、相手の動きが巧みで、どうしても引きずり出されてしまう場面がありました」
中北監督はそう試合を振り返る。カナダの洗練された個人スキルと組織的なプレーを前に、日本は終始後手に回り、相手のペースに飲み込まれた。
「10点差以上の大差で負けることを『ブローアウト』と言いますが、今日まさにそれを経験しました」
世界のトップとの間にある、日々の練習レベルや意識の決定的な差を、監督は改めて痛感したという。

「恥ずかしい思いをして、大きくなってほしい」
現在チームには、16歳の若きエース候補・河原優星ら新しい力が台頭している。中北監督は、若い選手たちがこの大舞台で味わった挫折こそが、未来のメダル獲得への最大のカンフル剤になると確信している。
「トップレベルと自分たちとの実力差をきちんと受け止めて、これからどう努力していくか。日々の練習レベルが違うということを、まず思い知ったはずです」

初めてのパラリンピックで厳しい現実を突きつけられた選手たちへ、監督はこんな言葉を贈った。
「次の3〜4年で彼らを追い込んで、メダルに手が届くことを目標にしたい。だからこそ、この負けは負けとして受け入れながら、プラスに捉えたいんです。初めてのパラリンピックで、痛い思いも辛い思いも、どちらかというと『恥ずかしい思い』も経験しながら——やっぱり大きくなっていってほしい」
パラアイスホッケー定着へ、そして次世代へのバトン
16年前、中北監督は日本代表を率いて2010年バンクーバーパラリンピックの準決勝でカナダを撃破し、銀メダルを獲得した。その実績から、カナダにとって日本はリスペクトの対象であり続けており、今大会もベストメンバーで全力をぶつけてきた。
監督が見据えるのは、目の前の勝利だけではない。日本におけるパラアイスホッケーの定着と発展という、長期的なビジョンだ。

「アメリカやカナダの監督・選手たちから、『日本がパラリンピックに戻ってきてくれて本当に良かった』と温かい言葉をもらいました。アジアから出場する立場として、韓国などとも連携しながら、パラアイスホッケーが日本に根付き、文化になっていけるようにしたい」
そして最後に、次世代へとバトンを渡す思いを静かに口にした。
「私の役目はミラノで一つの区切りとなりますが、次の新体制がどこまでやってくれるか——期待を込めて見守りたいと思っています」

0-14というスコアは、日本とカナダの現在地を残酷なまでに映し出した。しかし同時に、それは日本パラアイスホッケーの新たな挑戦の起点でもある。世界との距離を肌で刻んだ若き選手たちが、この「ブローアウト」をどう消化し、どのように這い上がっていくのか。その答えは、3〜4年後のフィールドで示される。
日本は予選リーグ第3戦を(10日20時35分/現地時間)スロバキアと対戦する。その後、5位から8位順位決定戦に進み5位を目指す。
(校正・そうとめよしえ)






